【感想】小澤征爾さんと、音楽について話をする(新潮文庫)

小澤征爾, 村上春樹 / 新潮文庫
(55件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
21
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9
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ブクログレビュー

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  • ろこ

    ろこ

    音楽の知識がゼロでも読み物としてなぜか楽しめてしまう一冊。わたしはピアノも弾けないし、学生時代の音楽鑑賞会で寝てしまうような音楽好きからしたら怒られるような存在です。そんな自分でもボリューミーな本書を楽しむことができました。それはおそらく、村上春樹さんならではの読ませるテンポのおかげかもと思っています。村上さんは本書の中で、文章も音楽も素晴らしいものには魅せるテンポなど共通点があるようなことを話されています。そして、わたしは本書を小澤征爾さんが指揮されるオーケストラを聴きながら読みましたが、不思議なことに、全く眠くなりませんでした。わたしが大人になったのか、素晴らしいものは眠くならないのか。
    とにかく、クラシック音楽に造詣がある方が読んだらもっと楽しめるんだろうなと思います。

    ■一体どういう曲なのだろうと興味が湧く
    クラシック音楽の知識がゼロです。そんな自分でも、どういう曲なのか読んでいるうちに興味が湧き、youtubeで探しました。特にページ数をかけて語られていた、マーラーについては明日からも聞いていきたいと思わされました。

    ■楽しむ音楽のジャンルが違うだけかもしれない
    村上春樹さんは、いつの公演といつの公演がどうとか、同じ曲を違う指揮者が振るとどうとかそういうレベルのお話をされます。そしてその曲ができた背景や時代も考察して音楽を楽しまれており、クラシック音楽をハイレベルで楽しめる方の感覚に圧倒されます。
    ところで、わたしはクラシックの知識はありませんが、似たような感覚を思い出しました。薄っぺらい話ですが、アイドルの公演の比較です。確かに、あの時の公演の歌はとか、同じ曲でも違うメンバーとかカバーだとどうとか比較して見がちなんですよね。バンドとか歌手でもそういう感想ってあると思います。音楽の楽しみ方の根本って意外と共通しているのかもしれません。

    ■本書を読む前に
    特にクラシックファンではない方は、
    ボクの音楽武者修行/小澤征爾 は必読です。
    わたしは事前に読んでいたので、少し前提知識があったので本書を読みきれたかもしれません。こちらは音楽談義よりも、小澤征爾さんの26歳くらいまでの人生を振り返ったエッセイという感じです。

    感想:https://booklog.jp/users/rocobooks/archives/1/4101228019
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    投稿日:2024.04.05

  • sekitp

    sekitp

    これホント面白いわ。内訳話みたいで。カラヤンとバーンスタインとか世間で語られるとおりなんだなぁとか。グールド記載できないくらい変とか。笑
    カラヤンとバーンスタインのグールドのピアノコンチェルト3番ベートーヴェン聴き比べた。カラヤンはどこまでいってもカラヤンだね。バーンスタインは迷いがある?YouTubeで聞いたけど便利な時代といっていいのだろうか。続きを読む

    投稿日:2024.02.21

  • ゆん

    ゆん

    このレビューはネタバレを含みます

    小澤征爾訃報を聞き、ああいよいよこの日が来たか…と思った。生で演奏を聞いたことがない(とてつもなく後悔している)し、人柄やキャリアという面でも特に知らないでいたのだけど、ニュースを一連見ている中で興味がわき、調べてみたら本人の著作や対談本などたくさん出ていることを知った。その中でまずは対談本を、ということで村上春樹、武満徹、大江健三郎との本を借りてきたので、源氏の傍ら読むつもりである。

    この本はとにもかくにも面白かった!!に尽きる。二人の会話も面白いし、もちろん小澤征爾の(意味もなくフルネームで呼びたくなる)出てくる逸話にうなり、紹介されている録音を聞きながら読んではああだこうだと感情が湧き上がり面白かった…。もっと早く読めばよかった!
    すごい人だったんだな…松本にも行けばよかった…

    ベートーヴェン・ピアノ協奏曲第3番
    グールドの録音、初めて聞いたのだけど、これは面白い演奏すぎてわくわくしてしまった。グールドこんなのも(?)あったんだ!っていう新鮮な驚き。それからバーンスタインの言い訳というかイントロも笑笑笑っていう感じで。

    マーラー
    「だからベルリオーズの場合、我々演奏家にとっての自由はうんと多いんです。マーラーの場合は、それに比べると自由は少ないんだけど、でも最後の微妙なところに来ると、今あなたが言ったような、ユニヴァーサルな余地って、たしかにあると思います。日本人、東洋人には、独自の哀しみの感情があります。それはユダヤ人の哀しみとも、ヨーロッパ人の哀しみとも、少し成り立ちの違うものです。そういう心のあり方を深いところできちんと把握し、理解すれば、そしてそういう地点に立ってしっかり選択をおこなっていけば、そこには自ずから道が開けると思います。東洋人が西洋人の書いた音楽を演奏する独自の意味も出てくる、ということです。そういうことを試みるだけの価値はあると、僕は考えています」「…東洋人にしか演奏できない、西洋音楽のあり方っていうのがあるかもしれません。僕はそういう可能性を信じてやっていきたいんです」(p.288、小澤征爾の言葉)

    意識的にも無意識的にも、クラシックはやはり欧州で育った、欧州のオケでなければ聞く価値はないと思っていた(日本はもちろん、アメリカもダメ。聞かずにいると禁断症状が出るので日本にいる間はもちろんN響を聞くのですが笑)自分は明確にいて、それを真正面からそうじゃない可能性を信じてみようじゃないか、と熱く語りかけられた気がした。そこで猛烈に、ああこの人の作る音楽を、この人が夢見ているものの一部を、生で見てみたかったと強く思った。
    R.I.P.小澤征爾さん、この本は間違いなく一生モノの本になり、私のクラシックとの関わり方はこの先の人生変わるでしょう。クラシック音楽を愛する者として、この先も音楽を通じて今更ながらではあるかもしれないけれど、出会えたこと、出会い続けられることに感謝します。

    村上春樹もすごい知識量で改めて敬服。もっともっとこういう本が出ればいいのに!

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    投稿日:2024.02.16

  • 鈴木翼

    鈴木翼

    村上春樹さんの音楽の知識はすごいのだけれど、小澤征爾さんとの会話が本当に楽しい。それは日常が垣間見れるからではないかと思う。そう感じたのは、村上さんの家に小澤さんが遊びに来るシーンだ。村上さんが冷蔵庫から冷えたビールを何種類か出す。小澤さんはその中から懐かしいなあと言って一番安い外国製のビールを選ぶ。
    「これこれ、これがうまいんだよ。貧乏をした時によく飲んだなあ」と言いながらグビグビと飲むその姿が目の前に見えてなんだかとても美味しそうに思えた。

    音楽祭で若手の音楽家へのお二人の会話もクラシック音楽は素人に近い私でも音楽が聞こえてくるようで楽しかった。
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    投稿日:2024.01.04

  • まる

    まる

    当たり障りのない対談かなと思って読み始めたら、とんでもない。ご本人も「これは残すべき」と思われたと言うくらい、貴重な会話でした。
    若き日のマエストロの師匠、レニー氏やカラヤン先生の思い出や、コンツェルトでの指揮者とソリストの力関係などクスっと笑える話、音楽の解釈や良き音楽ができる過程など、本当に面白いです。

    ブラームスの交響曲で、ホルンの息継ぎを消す消さないの問題があったり、一方で、スイスの合宿では弦楽器は「不幸にして」息継ぎがないのでブレスを意識して演奏しなければならない、と指導があったり。音楽の解釈は一つではなく、幾通りものやり方があって、その中から信じるものを選び、構築していく。大変な作業のようです。
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    投稿日:2023.11.03

  • 和歌山のよっしー

    和歌山のよっしー

    文体に村上春樹さを感じ、クラシックを聴くきっかけになった本。
    オーケストラと文章のリズムは似ている。作文が上手くなりたい。

    投稿日:2023.06.24

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