【感想】小説伊勢物語 業平

髙樹のぶ子 / 日本経済新聞出版
(29件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • サユリ

    サユリ

    古典でもよく聞く伊勢物語と在原業平。腰据えて読んでみようと、まずは現代語訳ではなく小説を選択。面白かった。
    読みながら、業平にツッコミ入れること数えきれず。なんと危ない男か…。

    家系図があるから、読みながら理解しやすい。
    桓武天皇、安殿の平城帝、伊予の君の嵯峨帝、出てこないけれど空海の時代とかすっている。過去に読んだ本で得た知識の点が、この業平を読むことで線として繋がっていく面白さもある。

    もどかしさを感じたり、しつこさを感じたり。
    詩ではなく歌。
    出てくる歌を、より情感豊かに受け入れてみたい。
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    投稿日:2024.04.06

  • koochann

    koochann

    伊勢物語の現代訳版ともいうべき艶やかな内容。在原業平の恬子(やすこ)内親王(伊勢神宮の斎王)、藤原高子(基経の妹・後の清和皇后)、在原行平の娘との男女の睦合…、その後の後朝の歌交換。雅文が情緒豊かに男女の営みを幻想的かつ官能的に描き出し読み応えがあり、一方で、紀有常の娘・和琴の方も登場するが、和琴の演奏が「かたことと音が尖り、清らかな流れと申せません」と拙かったことに現れているように非常に冷淡に終始し、当時の情緒ない女性との場面を象徴するかのよう。恬子斎王は月の妖精のような高貴な存在としての描写が幻想的。そして溌溂とした若いアイドルのような高子姫。恬子斎王の仕え人だった伊勢との間だけは、男女関係を明確に否定し、業平の良き秘書になったことが書かれているが、この人は実在なのか?どこまでが著者の創作かは不明。そして、業平の有名な歌やその序文などの背景も多く出てくるが、正に歌物語のようで、今でいうミュージカルを思い出され、親しみやすかった。
    「名にしおはばいざ言とはむみやこ鳥 わが思ふ人はありやなしやと」
    「ちはやぶる神代も聞かず竜田川 唐紅に水くくるとは」
    「月やあらぬは春や昔の春ならぬ わが身ひとつはもとの身にして」
    そして辞世「つひに行く道とはかねて聞きしかど 昨日今日とは思はざりしを」
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    投稿日:2024.03.26

  • べそかきアルルカン

    べそかきアルルカン

    1000年以上も前の物語が、
    なぜいまも読み継がれているのか、
    この小説によってわかったような気がします。
    平安時代の雅さはもとより、
    この時代に生きた人々の
    恋愛に関する自由奔放さに
    憧れるからではないでしょうか。
    道徳観や倫理観は、
    時代によって異なりますが、
    このころは感情の赴くままに行動することが
    許された時代なんですね。
    もちろんそれだけではありません。
    現代を生きるわたしたちにも通じる
    感情の機微が描かれているのでしょう。

    人間に定められた苦しみを
    生老病死などと言いますが、
    その中でも生を受けること、
    老いることが、
    最も苦しいことのように思われます。
    物語の中には「飽かず哀し」という言葉が
    幾度も出てきます。
    満たされることなく
    不完全なままこの世を去ることもまた、
    人の定めなのですね。
    在原業平ほどの人物でさえ
    そうだったのですから。



    べそかきアルルカンの詩的日常
    http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/
    べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え”
    http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a
    べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ”
    http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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    投稿日:2024.01.02

  • mofu

    mofu

    このレビューはネタバレを含みます

    容姿端麗、自由奔放。和歌に生き、恋に生きた男・在原業平。かの光源氏のモデルの一人と称されるくらい、とにかく世の女性にモテまくった、という。
    そんな男の生き様を、彼の創った和歌を織り交ぜながら綴られた一代記・伊勢物語。

    以前からなんとなくは知っていたけれど…。それが許された時代とはいえ、ここまで恋に自由だったとは…少し呆れてしまった。
    憂さを晴らすため女性に走ったかと思いきや、知り合いから頼まれて好奇心により女性の元を訪れたり、見目麗しいとの噂から高貴な女性に恋い焦がれたり。そのシチュエーションは様々で、どれだけ年が離れていようが結婚していようが全くお構いなし。
    もしかして恋の駆け引きをしたいがために恋をしているのか、とさえ思えてきた。
    恋に酔い、恋に溺れ、恋により追い詰められ。
    こんなにも華麗な女性歴だから人の心を打つ和歌もたくさん生まれ、幾つの時代を超えた今尚詠い継がれる。
    そういう私も、学生時代に暗記した和歌がたくさん出てきてとても懐かしかった。

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    投稿日:2023.08.26

  • idms0404

    idms0404

    文体がとっても雅な感じです。読み進むにつれて、平安の雰囲気ってこんな感じかな~って気になりました。在原業平については伊勢物語の主人公、伊勢の斎宮に手を出した、とか、藤原高子と駆け落ちしたとか、そのくらいのエピソードしか知らず。その二つのエピソードが主でしたが、旅の場面なども面白かったです。でも、業平って素敵…とはなりませんでした。恋愛に関して価値観が違いすぎる~。ただ、晩年については、ジーンとしました。続きを読む

    投稿日:2023.07.17

  • のりさん

    のりさん

    このレビューはネタバレを含みます

    装丁に惹かれて購入。爽やかな若草色の和紙風潮にデザインに達筆な業平の文字。シンプルながら非常に目を引くデザインだと思います。
    本書は古典伊勢物語を筆者なりの解釈で時系列を整え、和歌になぞらえながら描かれた在原業平の物語。
    語り口調は特徴的であるけれど、これが絶妙に平安の雅さを醸し出して良い雰囲気を作っている。

    さて主人公の業平ですが非常に恋多き人物。物語の大半は彼の色恋話となっている。
    ただしこの業平、己の色欲に歯止めが掛けられない人物な様で、好みとあればどれ程高貴な人物であれモーションを掛けていきます。
    流石に政界随一の権力者の妹で次期天皇の后候補の姫に手を出すとか、後先考えないにも程があります。
    結局彼の暴走は止まらず、最終的にこの高子姫を駆落ち同然で連れ出すという暴挙にまで出ます。結局未遂に終わり高子姫は連れ戻され、業平は怒りを買って京へ戻れなくなるのだけれど、高子を卑怯にも奪われたみたいな感じで非難し全く反省の色がありません。
    京へ帰れない業平は共を引き連れて東国へと下って行くのですが、その道中で仲間と共に京を懐かしみ悲嘆に暮れるのだけれど共の者たちは完全に業平のせいだということをもう少し非難してもいいと思うな。
    それから一年程で何事も無かった様に京へ戻れたのもびっくりですが、さすがの業平もしばらくは大人しくしております。
    しかしその平穏も長くは続かず帝のお役目で伊勢の斎王の元に行く命が業平へ下ります。
    斎王は彼女が幼い頃業平が妹の様に可愛がった女性。ぃまは伊勢神宮で帝に代わって天照大神へ仕える巫女として立派な務めを果たしています。
    いやいや、まさか妹の様に思う女性、しかも神に仕える尊き巫女に手を出すような事は……と思いつつ、読者は嫌な予感しかしません。
    そして紆余曲折の後まんまと斎王と共寝(今でいうアレですね)してしまう業平。この時斎王の母親は加減が悪く、京にも不穏な気配があったのですが、これを斎王に知らせてしまうと己の不浄な行為が神の怒りを買うことを恐れ逢瀬をやめてしまうことを危惧した業平はこの事実を隠します。何という自己中心的な考え、さすがにここはイラっとしました。
    しかも一度共寝したことをいいことに、明日もあって欲しいと無茶な催促。本当に未練がましい男です。

    結局その後斎王の母親は亡くなり京にも大きな政争か起きこの段になって、ようやくあの不浄な行為を斎王が悔いているのではと心配する業平。心配する資格ないと思うけどな。
    しかも斎王はあの一夜で見事業平の子を身篭るというオマケつき。当然公然と育てられないので子供は人知れず引き取られることに……斎王は不憫だしなんと罰当たりなんでしょう。
    その後も自分の腹違い兄の娘に手を出し孕ませてしまうどういうこれまた有り得ない行為もしでかすけど、もはや前科が凄すぎて驚きません。

    ただこれだけ欲望のままに生きても、関わった女性達は業平に対して好意的なんですよね。今とは物の価値観も違うでしょうがそれだけ業平がその女性へ真剣に向き合い思いを伝えてきたということなのでしょうか。
    晩年の描写何よりそれを現しているのかなと思いました。

    色々書きましたが業平という人物はやはり魅力的で、平安の雅な雰囲気を存分に味あわせて頂いた筆者へ感謝をしたい。

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    投稿日:2022.01.23

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