【感想】カメレオンの影

ミネット・ウォルターズ, 成川裕子 / 創元推理文庫
(15件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • sinoazumi

    sinoazumi

    この作家の文は、たぶん初めてだ。
    硬質な感じの文だが、著者は女性。

    主人公が魅力的。英国軍の中尉なのだけれど、イラクで爆撃され、頭、顔に傷を負う。我慢強くストイックに見えるのに、ときに突然暴力を振るう。
    孤独な彼を心配する者は、寄り添おうとするが、手痛く拒否される者も多い。特に女性は。
    同情からも身を引き、触れられる事を嫌う彼。

    同時に、ロンドンでの撲殺事件が語られ始め、主人公との関係があるのか、ないのか。どんどん気がかりな方向に話がすすむ。
    事件は続いて起こり、常に主人公の影がチラつく。
    警察にも尋問されるが、核心に至ることはつかめず、彼も多くを語ろうとしない。

    事件との関わりがあるのか?
    けれど、謎が解決されずに時が過ぎる間に、彼を孤独に立ち回らせるに至る出来事も、次第に明らかになる。
    家庭環境、戦争、そして女性との関係。


    何より主人公が追い詰められていく過程が、テンポ良く、どんどん読める。
    主人公が口を閉ざす部分を、彼にかかわった精神科医、医師、後には警察官が、こうであろうという診断や代弁、推測、憶測で語り、彼の本当の気持ちはどうなの?と、もどかしい。
    事件に関しては、特別な捜査があるわけではなく、偶然にわかってきた事柄を重ね合わせて解決に至り、なんかスッキリしない感もある。
    が、事件にかかわったことで、主人公は少しずつ自分の事を語る事が出来たのではなかっただろうか。

    親切にしてくれた人、親身になってくれた人、寄り添ってくれた人とも、最後には別れて出ていくが、これからの彼は、大丈夫という気がする。

    もうひとつ、戦争、路上生活者、ジェンダーフリー、家庭問題など、さまざまな社会現象が絡んでくるのも、気になるところではある。
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    投稿日:2023.08.21

  • pandp95

    pandp95

    このレビューはネタバレを含みます

    興味深い始まりからどんどん失速してしまい、ジャクソンが出てきたあたりから急に面白くなくなり読むのがしんどかった。犯人も早い段階でわかってしまったし。期待しすぎた。

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    投稿日:2023.08.09

  • 家計法廷

    家計法廷

    このレビューはネタバレを含みます

    ブクログ100冊記念に、一番好きな海外作家ミネット・ウォルターズの作品を。
    相変わらず内容は重く辛いのに読みやすい。
    かなり甘めだけど、意外に爽やかな読後で星5(かなり星4寄りの星5)。

    今作の中心はイラク戦争で負傷した青年。負傷したことによるものか、いつもは物静かだが、時折暴力的な側面を見せるように。
    一方、従軍歴を持つ者が撲殺される事件が相次ぐ。負傷し、暴力を振るうようになった青年の犯行なのかどうか。

    ウォルターズ特有の、ある事実がわかった途端、登場人物や事件の見え方が180°変わる点は顕在。相変わらず誰が味方かわからない笑。特に今作は題名のとおり、中心となる負傷した青年の見え方がカメレオンの様に非常に良く変わり、最後の最後までどう転ぶかわからなかった。
    他の作品にあるロマンス成分も徹底的に排してあり、珍しく青年が犯人なのかどうか、そこだけに集中する作品だった。

    もう少し未訳があるので、翻訳を続けて欲しい。。。

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    投稿日:2023.04.30

  • marumaruchan

    marumaruchan

    ミネット・ウォルターズ、深いなぁ…。かなりまで主人公(?)のアクランドに感情移入できなくてこりゃ困ったなと思っていたのに真相が明らかになっていくと腑に落ちるところが多々ありました。彼に関わるお医者さんたちがみんな優しい。
    作中ユマ・サーマンのくだりが何度も出てくるのですが、「ガタカ」は観たし、イーサン・ホークとかジュード・ロウ(かっこよかった♡)は覚えてるのにユマ・サーマンのことは何一つ覚えていなかった私が哀しかった。
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    投稿日:2022.11.07

  • としこし

    としこし

    このレビューはネタバレを含みます

    長いけど、あまり長さを気にせずに最後まで読めた。
    犯人と真相がわかると前半の元婚約者に対する中尉の反応とか、元婚約者の行動が腑に落ちて、こんな心理状況だったのかなってのが理解できる。それがわかるまではどういうことなのか考えながら読み進めていくのでそれも楽しい。
    途中で出てくるホームレスの少年も嘘つきまくりでどこまでが真実なのか、刑事と一緒に混乱させられた。
    この作者らしく、登場人物の行動から内面や心理状態を想像させてくれて読み応えあり。

    どなたかも感想で書いていたけど、最初と後半の中尉の性格?行動?が少し一致しなかったように思った。一致しないと言うか変化が急激だった感。そこの変化を少しわかりやすく書いてもらえればよかった。

    途中から中尉の世話をやいてくれるレズのお医者さん、すごいいいキャラ!洞察力あって、自分があって、絶対正しいことをしてくれる安心感があるキャラだけど、そんな人も中尉の人間性を見誤ってたかもと不安になったり、そういう描写があってリアル。だから強烈に個性的なキャラだけど現実味があるのかなって思う。

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    投稿日:2022.01.25

  • fukayanegi

    fukayanegi

    このレビューはネタバレを含みます

    戦地での事故により、2人の部下と顔の半分を失ったアクランド中尉。
    一命を取り留めたものの、事故後ときにかっと暴力的になり、特に女性に対する嫌悪を強く示すような性格の変容が。
    その暴力性が仇となり、市中をにぎわせロンドン警視庁の重要案件となっていた元軍人の連続殴打殺人への容疑者となってしまう。

    怪我を理由に退役を余儀なくされたアクランドの社会復帰を支えようとするレズビアン医師のジャクソンの関わりによって心が開かれ、云われない嫌疑が晴れる方向に向かうのかと思いきや、話が進めば進むほど事件との関係が色濃く見え始め、むしろ怪しさの増すアクランド。

    運命的な偶然、共時性では片づけられないほどの証拠の重なり、少なくとも何か知っているか、思うところはあるはずだが、一向にまともに口を利こうとしない。
    一方、ときに聡明さ発揮し、悪人らしからぬ言動をする。

    アクランドの人柄に魅力を感じ、もっと素直になれよと応援しながらも、どこか疑いが拭いきれない。
    心理サスペンスの名手ウォルターズによる秀作容疑者ミステリ。

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    投稿日:2021.07.25

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