【感想】地雷を踏むな―大人のための危機突破術―(新潮新書)

田中優介 / 新潮新書
(3件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
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ブクログレビュー

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  • touxia

    touxia

     地雷を踏んでるなぁとこの間を振り返っていたら、この本があった。さっそく読んだ。この本は、リスクヘッジの実績と経験の上に書かれているので、たくさんの気づきがあり、とても参考になった。確かに、SNSのない時代は、地雷は固定されたところにあったが、今は地雷は至る所にあり、地雷が変化しているという指摘は確かだ。被害者と思っていたら、知らない間に加害者になっているということが、世論によって巻き起こってしまう。怖い世の中なのだ。
     著者の指摘は、人間関係のデザインがいるということを主張している。会社の上司と部下、友人関係、先輩と後輩、家庭の中でのポジション、人間関係の濃淡のなかで、どのような人間関係デザインを想定するのか。そして、行為によって、その関係が変化する。多様な修正と価値観が生まれることで、衝突する場面が増大している。簡単にラインやSNSで連絡することによって、人間関係が希薄となり、勘違いや誤解が生まれやすくなってきている。
     5章に分かれていて、1章、人間関係という地雷。2章、人間関係構築に必要な5つの能力。3章、エリートはいかにして危機を回避しているか。4章、警察と弁護士は使いよう。第5章、謝罪という名の救急病院。うまい、構成だ。
     第1章では、人間関係で,①モード(雰囲気)の違いというギャップ、②パーソナリティによるギャップ、③「岸」(立場)による見え方のギャップ、④世代間のギャップを上げている。
    「言っていることは間違っていない」「このやり方でずっとやってきた」「知らなかった」「眠らずに一生懸命やっている」「私は悪いことをしていない」「ブレーキが壊れていたのだ」と当事者の意識がズレていることで、炎上してしまう。
     結局、ギブアンドテイクの関係が崩れた時に、どうデザインを変えるのかだ。お金を貸して、と言われて貸した時には、人間関係デザインは変化している。返せと言った時に「俺が苦しいのをわかっていて、なんで催促するんだ」と言われることで、逆恨みされる。そいう時は、貸した方が悪いと思って攻撃してしまう事例が多いようだ。
     第2章では、人間関係に必要な5つの能力。①開始能力。キーマンをきちんと見つける。有効な手土産はお金ではなく、情報。②デザイン能力。③維持能力。④修復能力。バランス感覚。相手のダメージを理解し、相手の痛みをよく理解して、修復する。災い転じて福となす。⑤収束能力。きちんとした手打ちをする。ある意味では、一番重要なことで、燻り続けて、突然爆破されることもある。香川照之の場合は、示談が済んだと思い込んでいたが、それが爆発した時に、当初はノーコメントで逃げちゃったことで燎原の火のように炎上した。とても好きな役者さんだったので残念であるが、これを芸の肥やしにして、再び再復活してほしいと願う。
     人間関係の劣化は、自分自身の劣化。相手の劣化。必要性の劣化があり、劣化に伴ってデザインを変えていく必要がある。
     要注意人物は①言うことに一貫性がない。②違和感のある言動が多い。③他者の尊厳を重んじない。④相手に何かしてあげてときに、きちんとお礼を言ってこない。⑤向上心を失っている。ありゃ。オレだ。困ったもんだ。
     第3章は、トラブル社会では、根回しが必要なのよ。そして、知らず知らずに相手を巻き込むのだ。
    有利な立ち位置は、①太陽を背にする。(正義、大義名分)②風上に立つ。ふーむ。小泉首相のうまさはこの二つを駆使してことだったんだ。
     重要なのは、追い詰めるばかりでなく、相手に逃げ道を作ってやることだ。
     第4章、警察と弁護士は使いよう。たくさんの弁護士に関わってきてことで、弁護士は万能じゃないなぁと思った。専門があるのだ。会社法をあまり知らない人に会社の件を頼んでも負けるのは明らかだ。
     第5章、謝罪。うーん。これが一番難しいなぁ。サンドイッチマンの漫才にも謝罪を面白おかしく言っていたが、謝り方で、かなり違う。土下座すれば、謝罪になるかといえば、ならない。私なんか、座るだけで土下座している。名前だけで、本人はちっとも謝っていないのだ。
     謝罪とは、解毒であり、そのために問診、検査、診断、治療、予後の経過観察。①感知する。危機を招いたと感じたら、真実を正確に調べる。②解析する。③解毒。心に響く謝罪、再発防止策、厳しい処分などによって、許しを得て問題を収束させる。④再生。信頼を取り戻して、業績を回復させる。
     逃走本能と闘争本能があるが、逃げてはならない。他人に頼っても、解決にならない。
    そして、①遅い謝罪。②時間足らずの謝罪。③曖昧にぼかした謝罪。④言い訳や反論混じりの謝罪。⑤嘘と隠蔽混じりの謝罪。⑥贖罪の伴わない謝罪。
    「遺憾、誤解、お騒がせし、知らなかった、邁進するの頭の文字をつなげると イゴオシマイとなる」
    ふーむ。地雷多き時代、どう地雷を踏んでも、生き残っていくのかがこれからの時代なのだ。突き進むしかない。パックンや爆笑問題の太田も、意外と地雷踏んじゃっている。この本を読むべきだ。
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    投稿日:2022.09.09

  • 規格外の薬剤師

    規格外の薬剤師

    私自身は、あえて地雷を踏んで、雨降って地固まる、を、実践する派なのですが、当然、超上下関係など、踏まない、いや踏めない地雷も数多く存在します。そんな危機突破術を学ぶことのできる本で、社会人になる前の学生さんにもお勧めです。


    P31 上司には、YES! BUTで臨む。

    P34 モードの違いによる衝突を回避

    P48 「効率性の加減」というギャップ

    現在は昔と比べて様々な手続きやインフラの
    利便性が高くなり、スピードが早く、
    ペーパーレスになっていて、
    ある意味、効率性が美徳のように見られる
    時代になりつつある。

    しかし、この「効率性」も行き過ぎると
    早いだけの「即席」になってしまい、
    ここに年配者は不満を抱く。

    P50 若い世代が、他者とのコミュニケーションが
    苦手であることが、「報恩の加減」にまるわる
    ギャップの原因でもあるような気がしてならない。

    相手の心に響く感謝の言葉を、うまく伝えられない。
    こちらの嬉しい気持ちを伝える、上手な技法も知らない。
    恩に報いるのが下手なのです。

    「報恩の加減」は「効率性の加減」に次ぐ
    世代間の大きなギャップ。

    P58 好意と厚意は、地雷の原料の火薬

    好意については、
    自分に対して他者が抱くイメージ、
    あるいは相手にとって自分の存在価値が
    どのようなものかを強く認識して
    それを汚さないことを肝に銘じる必要がある。
    例としては、期待を裏切る行為であり、
    「期待を認識して、それに背かないこと」を
    意識する必要性がある。

    厚意については、
    「原点を忘れない」の一語に尽きる。
    ・お金を借りたなら、貸してもらうまでの
     みじめな気持ちを常に思い起こして
     ギャンブルなどを封印する
    ・就職の世話をしてもらったなら、
     無色の自分と現在とを比べて、
     どちらが幸せか常に比較する

    P61 人間関係構築に必要な五つの能力

    1. 開始能力

    自分の周りに良き人間関係を築くためには、
    「この人はキーマンだ」と思った相手と
    親しくなる必要がある。

    相手の第一印象を良くすることが、
    開始能力を高める。

    2. デザイン能力

    相手を引っかけるフックを探す

    3. 維持能力

    人間関係の維持に気を付けるべきことは、
    「ギブ・アンド・テイク」
    「シチュエーション」→「位置・立場・境遇」
    人間関係は日々刻々と変化する。
    位置の高低の様に、低い方が低姿勢で臨む。

    人間関係が劣化する原因は、
    「自分の劣化」「相手の劣化」「必要性の劣化」

    4. 修復能力

    ガス抜きや止血、傷口の消毒

    5. 収束能力

    おさまりをつけて終わらせる。
    お付き合いした年数と同じ時間をかけてお別れする

    P80 要注意人物を見分ける五つの眼鏡

    1. 言うことに一貫性がない
    2. 違和感のある言動が多い
    3. 他者の尊厳を重んじない
    4. 権利のサイクルを回す
    5. 向上心を失っている

    P91 SNSで炎上しないためのチェック

    ・サ:差別に関わる発言や映像
    ・ギ:業務を妨げる発言や映像
    ・ヒ:誹謗中傷する発言(根拠なく)
    ・シ:私生活の自由を侵害する発言や映像
    ・メ:名誉を毀損する発言や映像
    ・キ:機密を漏洩する発言や映像

    p108 困った人

    こちらの言うことを聞いている途中で、
    頭に浮かんだ疑問に意識を奪われて、
    話を聞くのがおろそかになり、
    言われていることを十分に理解できなくなってしまう人。

    あるいは、こちらが話している途中で、
    疑問に思ったことを聞いてしまう人

    困った人へのアドバイス
    ・疑問が浮かんだら書き留めておき、
     まずは相手の話を「最後まで聞き切る」
     という姿勢を持ちましょう

    ・最初に「相手の話の焦点(真意)を掴む」
     ことを意識しましょう

    ・相手の話に「賛同する言葉」を述べた後で
     質問をしてみましょう

    P117 戦法は人を見て変える

    「こちら側の過失の程度と相手によって
     ”折れる””戦う””防ぐ””かわす”の、いずれかを選ぶ」

    「相手の要求レベルを分類して、対応の方法を選ぶ」

    P123 プラスだと思うことのマイナス面を見逃すな

    危機管理の正しい姿は、
    「悲観的に備えて、楽観的に過ごす」

    多くの人が見逃がしなのは、
    「良いこと」「前向きなこと」の
    陰にひそんでいるリスク。

    本人はプラスだと思っている行為で、
    実際に概ねその通りだが、
    実は反作用があって、マイナスもある。

    ・相手の嫌いな人を誉める
    ・派閥に関連した人間関係の明示

    P129 危機を洗い出して想定外を無くす

    ・危機を「天災」と「人災」に分ける
    ・「加害者になる危機」と「被害者になる危機」に分ける

    という2×2のデザインで考え、更に
    ・人に関する危機
    ・物に関する危機
    ・金に関する危機
    ・情報に関する危機
    に分類して何が起こり得るか想像し、
    できる限りの予防策を講じる。
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    投稿日:2020.01.16

  • H.Sato

    H.Sato

    このレビューはネタバレを含みます

    説得する、断る、謝る、叱る、共有する。
    相手を説得するためで一番大切なのは急がないこと。
    相手の提案を断る時に一番大切なのは、のっけから否定しないこと。
    謝罪する時に一番大切なのは、相手の言いたいことをこちらから言ってしまうこと。

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    投稿日:2020.01.10

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