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原田正純 / 岩波新書 (12件のレビュー)
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よもぎ餅
先日の環境省の問題で手に取ったが、かねてから「近代/環境」の関係を事例レベルから理解する必要性を感じていた。YouTubeで水俣病の症例を見てから、本書を読むと、ある意味淡々と症例が列記されている感じ…にも思えた。恐らく、動画にあがっているものは本書でいう「重症」患者で、水俣病の一面的な部分でしかないのだろうと思う。本書で取り上げられている事例の多様さは、恐らく著者にしか書けないであろうリアリティが伝わってくる。また、著者の本音も随所に描かれているのが良かった。 医学部は「水俣病の実験的研究はしても、臨床的研究には手を出すな」「あれは研究でなく社会運動か県庁のする仕事だ(p. 234)」なる記述には心を痛めた。科学とは何か、科学における客観性とは何か、科学はいかに社会に貢献すべきかを考えるきっかけになった。また、水俣病が近代社会論という大きな括りだけで議論できるものではなく、日本社会特有の構造(e.g., 村社会の閉鎖性,企業城下町)にも起因していた点に、事例研究の重要性を感じた。 そして、今「普通」に生きられていることが幸せだと思った。続きを読む
投稿日:2024.05.10
ひと源堂
原田正純さん、最初の著書。初版からちょうど10年後、学生だった私は、とある古本屋でこの本と出会いました。水俣病は教科書の中で知っていたことでしたが、それが現実であることを思い知らせてくれた1冊でした。…私の、「いま」につながる、大事な大事な1冊です。続きを読む
投稿日:2021.08.01
nakaizawa
(2016.09.11読了)(2014.08.26購入)(2011.04.26・第45刷) 【目次】 はじめに Ⅰ 水俣病の発生 Ⅱ 原因物質を追う Ⅲ 水銀をつきとめる Ⅳ 胎児性水俣病 Ⅴ 一酸…化炭素中毒 Ⅵ 新潟水俣病の発生 Ⅶ 公害病認定から訴訟へ Ⅷ 水俣病の全貌の解明にのり出す Ⅸ 隠れ水俣病 Ⅹ 水俣病は終わっていない あとがき 参考文献 (amazonより) 公害病の中でも大規模で最も悲惨なものの一つ、水俣病。苦痛に絶叫しながら亡くなった人々や胎児性患者のことは世界的にも知られているが、有機水銀によるこの環境破壊の恐るべき全貌は、いまだに探りつくされてはいない。長年患者を診察してその実態の解明にとりくんできた一医学者の体験と反省は、貴重な教訓に満ちている。続きを読む
投稿日:2016.09.09
もの知らず
水俣病が公害問題であることは周知の事実である。が、その病状の悲惨さを知り、その病気がもたらす悲惨さを知っているかとなると、私のようにあまり知らないという人も多いと思う。そこでおすすめしたいのが本書で…ある。 なぜ彼らは苦しまなければならなかったのか。企業や行政、そして医学者は患者に対してなにをしたのか。そこに含まれる社会の不条理を、患者の悲惨さをドラマチックに強調することによってではなく、あくまで事実に基づいて冷静に記述している。 工場排水との因果関係を把握しながらひた隠しにした企業。原因物質が明らかではないとして漁獲を禁止しなかった行政。魚無しの生活は有り得ないとして水銀まみれの魚を食べ続けた住人。水俣病発生の背景を考えただけでも、そこには様々な問題がある。 さらに本書は、医学者である筆者自身への自戒も込められている。昭和35年に問題は解決したとして、水俣の実態を追跡することを怠った行政と医学者。問題は解決したとされてからも、「隠れた」あるいは「隠された」水俣病が蔓延していたのである。 最初に「その病状の悲惨さを知り、その病気がもたらす悲惨さを知っているか」と書いたが、現地を訪れその病状の悲惨さに理解を深めていた医学者でさえ、その病気が社会的にどういう意味を持ち、どういう悲惨さをもたらすかということは、十分には知らなかったのである。 多くの「隠れ水俣病」患者らは、工場排水と病状の因果関係を認められず、そのまま泣き寝入りすることを強いられていた。そのような状況下で書かれた本書には、水俣病がもつ問題の根深さと、その認定をめぐる不条理な実態が描かれている。 本書を読んだ人は、水俣病という問題が過去の出来事ではないことにかならず気がつくと思う。それは、企業や行政、医学、市民、といったさまざまな存在を取り巻く社会というものがつねに抱えうる病理なのである。 科学技術の進歩めざましい現代にこそ顧みることが必要な一冊だ、と、強い言葉でおすすめしたい。続きを読む
投稿日:2016.07.21
tsutomu1958
このレビューはネタバレを含みます
水俣の裁判の場合は、企業に過失があったかどうかということがいちばん大きな争点であること、水俣病の発生から実に15年も経って、はじめて「水俣市報」で水俣病認定申請手続の広報がなされたことに驚かざるを得ない。とにかく日本という国は責任を取ろうとしない。実際に起こってしまったことに対して、被害者が納得できる責任の取り方は事実上まず無理ではあるのだが、起こしたことの非は認めて謝罪することはできるはずだ。
投稿日:2016.06.05
Takuro Okamoto
「安全性の考え方」に学ぶ 表題は武谷三男氏の著書名。 武谷氏の著作を根拠に、本書の中で企業の環境マネジメントにおける善管注意義務を語る。 そのポイントだけを言うと、 ・危険なものはできるだけ外へ出…さないのが、 排水処理の根本原理。 ・排水の処理方法が研究、調査されるべき。 ・排水後も環境に異常がないか常に監視すべき。 さらに筆者は、 企業は安全性不明の排水から生じる危険を予見しこれを未然に防ぐ必要な処理を講ずるべきと主張し、 予見の対象をメチル水銀に限定するチッソの態度は「言い逃れ」に過ぎないと断ずる。 企業はなぜ環境マネジメントをやらないといけないのか、その答えがわからなくなった時本書へ帰ってくる、 そんな位置づけの本。続きを読む
投稿日:2016.05.07
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