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リチャード・パワーズ, 木原善彦 / 新潮社 (19件のレビュー)
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pedarun
このレビューはネタバレを含みます
【木々の描く物語を想像してみる】 世代を超えて存在する木と森林と生態系と、そこに異なる形で関わることになった人が想像する物語の話。 人は木材を生産する時、木を守ろうとするとき、木を学問する時、自然に対する自らの視点を示すのかもしれない。 木にまつわる神話や言い伝え、木材の伐採、森林占拠運動、科学、生物多様性… ‥ 環境保護が欺瞞になる社会。 この世界で、人間が特別なのは、私たちが人間だから当たり前だと思う。 自分の家族が自分にとって避けられず特別な人間であること、 自分の国が自分にとって特別であること、 自分が自分にとって特別な人間であること。 それは避けられない。 けど、 それで他者に対して、他国に対して、他の生命に対して、 傲慢になることは違うと。 あらためて。 無知の知は、知らないことを知るだけじゃなくて、知りえないことがあると知ることでもあるのかなーとか。
投稿日:2024.03.30
慎也
『子供、女性、奴隷、先住民、病人、狂人、障碍者。驚いたことにそのすべてが、この数世紀の間に、法律上の人格を持つ存在に変わった。それならば、樹木や鷲、山や川が、自分たちに果てしない危害を加えて窃盗を働い…た人間相手に訴訟を起こしてなならない理由があるだろうか?ー 話すことができないので当事者適格性が認められないというのは理由になっていない。法人も国家も口をきくことができない。弁護士がその代弁をするのである』 昨秋に、隣地の裏山に自生したオニグルミを幹の半分まで切ってもらった。我が家の雨樋が落ち葉で詰まるから。 僕が家を建てる前から生きてきた木の生存権を侵害し、無用な苦しみを与えていると告発されたとき、僕はどうすべきか。 所有権なぞ、地球と生命の歴史が鼻で笑う。 植物同士のコミニュケーション能力。共生する微生物と作り上げた地下のネットワーク。化学物質の交換によって森の全ての木々が交信していること。成熟した木を皆伐することの愚かさ。植林では生態系を救えないこと。 本書は、植物や森に関する様々な不思議を教えてくれる。そして、企業保有の森林伐採を止めるための抵抗活動である樹上占拠と、その挫折についても。 エコロジーと自然破壊を題材としても、描かれるのは木に魅入られた人々の生き方や苦悩だ。入れ替わり語られる群像劇と心理模様、彼らの系譜にまつわるストーリーにグイグイと引っ張っられる。 繰り返し問われるテーマのひとつが、心理学用語である傍観者効果だ。“なぜ人は目の前の明白な緊急事態に対して行動を取ることができないのか“。 その問いのもう一つの側面は、“なぜある人々は行動を起こせるのか”。 樹齢数千年の木の命は、人間一人のよりも重いという大義も一つの答え。 壊れゆく世界を救うためには、種としての人類が滅ぶしかないという絶望と自死もまた答え。 救いたいのは見知らぬ誰かではなく、隣で手を繋ぎ戦っている仲間だというのも、きっと答えなのだろう。 ラストのメッセージは、“STILL ”-まだ、いまだに、更に -諦める訳にはいかない。続きを読む
投稿日:2023.08.26
藍住
リチャード・パワーズが紡ぐ物語の力に泣いた。 特に終章が本当に素晴らしく、本を読んで世界が変わると言う言葉は本当だったんだと思った。 人と人の道が交わり、また新しい道ができる。 そこで交差する人達の想…いは読み手にも作用する。 地球のために、森林のために、私にできることは何か考えながら生きていきたい。 この本は未来へ繋ぐ架け橋。続きを読む
投稿日:2023.02.06
brazil-log
大傑作。あまりにおもしろくて半日で一気読みした。ちょっと動揺するくらいにso movedで、とりあえず今年のマイベストは決定した。極めて美しい無限の姿。
投稿日:2021.12.29
Zwarte Beertje
樹木と何らかの関わりを持ち、樹木をそれぞれのやり方で大事に思うようになる人々個別の物語が最初にある。短編集のようになっている。 中盤以降は、彼らの物語が一つに絡み合い大きな流れとなっていく。 木自体…ですでに多くの生態系を抱える環境になっており、地球規模の視点で環境を見ても木は重要な役割を果たしている。極端に言ってしまえば人間は邪魔者でしかないが、さすがにそこまで言わずとも、そのことを認識しながらもっと謙虚な生き方を人間はすべきだろうと考える。 木になったつもりで、木の視点で世界を見てみる。千年生きる木の時間からすれば、その周りを動き回る人間など、人間の周りで目にも留まらぬ速さで動き回る小虫のようなものだろう。 長すぎるのと、時々出てくる詩的な表現によって文意を解釈しにくくなってしまうのがやや欠点。続きを読む
投稿日:2021.02.22
けんけん
けんけん、名義で、amazonにてレビュー済み。例によってお借りして読んだのだが、改めて購入したいと思える作品だった。 2023年9月現在、同一の著者、訳者による新作「惑う星」を読み進めるにあたり、…自分自身の覚えとして以下のamazonにての当時のレビュー文を引用しておきます。 “米国の現代社会を背景にした、重厚な良い意味で冗長な物語であると思う。 2020年5月16日に日本でレビュー済み 重厚にして、緻密な文体、行間も狭く、ずっしりと詰まった文章、にもかかわらず、読むものを飽きさせず、次は何か、誰に何が起きるのか、登場人物の言葉を借りれば「みんな、何する?」それが気になって、どんなに時間をかけても「地面にいくらでも穴を掘ってでも、」読み進めていきたくなる、このような小説に久しぶりに出会った。 きっかけは新聞誌上の読書欄での紹介記事と本書への、図書館での出会いだった。決してこのような書籍を気軽に購入することができない「所属」に現在あると思う自分は、何度も借りて読み進めていくうちに登場人物の何人かにどこか通じるものを感じ、彼らが見る、感じる、事が我が事の様に思われて実に興味深く読み進める事が出来た。 また、小説で描かれた世界は、ある意味断片的に自分がこれまでに見て来た米国の「あくまでメディアを通じての(この書籍もひとつのメディアである…いや、違うかも知れない…)」世間、大衆、自然、空気、と言ったものを再度つなぎ合わせ、認識させ、実にありありとした情景を私の頭の中に描き出してくれる。 またこの書籍は、さまざまないわゆる「サブカルチャー」のテキストとしても実に有用であると思う。もちろんそれだけでなく、漢詩、中世フランスの史実に至るまで、具体的に調べていくと実に興味深い引用が随所でなされており、ヒントとなる注釈も記されている。この点は訳者の読む者への丁寧な贈り物であると感謝したい。 実はまだ最後まで読み終えていない。残すのはあと100ページ位かと思う。ただ、たとえどんな結末でも、相当な時間を割いても、この書籍を読了する事は、翻訳発表後間もないこの時点、また偶然にも外出がままならない、2020年春からの時節において、おのおのの人生に於いて実に意味深い事ではないかと思う。また、「環境問題」と言ったステレオタイプな問題提起をただただ科学的根拠、ヒステリックなアジテーションから考えなくても、この書籍を読む事、良い意味でここまで冗長な文学に触れる事によって、地球が、自然が、樹木が、生態系が、必要としている事、対峙すべき人間の心構え、は伝わってくるのでは無いかと私は個人的には思う。 少し難しい事を書きはし、また実際重厚な物語ではあるが、現代の米国の親しみやすいと思う人たち(あくまで政治家や投資家よりは)が主な登場人物の長編小説である。長い時間をかけて、ひとりひとりに感情移入しながら、その情景を楽しみながら、読むべき書籍として、是非お勧めしたい。”続きを読む
投稿日:2021.02.18
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