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中津文彦 / 光文社文庫 (1件のレビュー)
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マーブル
「もしも…だったら」と想像するのは楽しい。 歴史上の出来事を、別な可能性を紡いで。 あるいは期待や希望を込めて。 信長が本能寺でその生涯を閉じなかったら。 義経が平泉で命を落とさなかったら…。 そんなことを想像するのも、雑談程度ならともかく、 作品を作り上げるとなると、 その根拠や、説得力など、 難しいこともあるのだろう。 「そうでも良かったかも」と「荒唐無稽」の間には大きな開きがある。 本書は奥州藤原秀衝が歴史とは異なる決断をしたことから開く、 新たな歴史シュミレーションとのことだが。 歴史的事実自体が、それほどカチッと固定されたものではなく、終始揺れ動いている。 我々が昔習った、歴史教育の中身が、いつの間にか異なったものになっていることも珍しくはない。 新たに発見された資料。その解釈。あるいは誰かの事情。 最近は、とみに気になるのが諸外国との歴史認識の差、というやつ。 歴史はしょせん誰かが書き記したもの。 その誰かが公明正大とは限らない。 時の権力者が、自らのために歴史を編纂させるというのは古今東西に見られること。 今、知っていると思っている歴史は正しいのか。それは誰にとって。 秀衝の決断が変えた歴史。 こんな風に進むか。 という思いにかられつつ、あと残りわずかでひっくり返るラスト。 そう来たか。 ちょっとどうなんだ。 本を閉じて、ゆっくり考えると、決断の分かれ目を明確にするにはその方法が良かったのか、とは気づかされる。なにしろ一般的な歴史を知らずにいる読者も多いだろう。そこを明確にする必要もあったのかもしれない。 しかし。 この落ちは。 まずは、読みたい作家が一人増えたのは事実。続きを読む
投稿日:2013.05.31
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