鳥肌が(PHP文芸文庫)

穂村弘 / PHP文芸文庫
(22件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
3
12
5
1
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ブクログレビュー

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  • コナン.O.

    コナン.O.

    穂村弘(1962年~)氏は、札幌市生まれ、上智大学文学部卒、1986年に連作「シンジケート」で角川短歌賞次席(同年の受賞作は俵万智の『サラダ記念日』)、1990年代には加藤治郎、荻原裕幸とともに「ニューウェーブ短歌」運動を推進した、現代短歌を代表する歌人の一人。エッセイも多数執筆している。
    本書は、2016年に出版され、2017年の講談社エッセイ賞を受賞、2019年に文庫化された。
    私はこれまで、著者の『はじめての短歌』、歌集『ラインマーカーズ』、エッセイ集『蚊がいる』を読んできたが、その歌もエッセイも、著者の鋭敏かつ独特の感性と、それを文字にする表現力があっての作品であるが、本書も、それらが遺憾なく発揮されたエッセイ44篇が収められている。
    解説で、作家の福澤徹三は次のように書いている。「怖さとは想像力である。まだ起きていいないなにかに思いをめぐらせることで怖さは生じる。すでに恐怖の渦中にいてもそれはおなじで、これからを想像するから怖さは増す。つまり想像力が豊かであるほど、恐怖に対する感覚は鋭敏になる。そういう意味でいえば、名だたる歌人でありエッセイストでもある穂村弘さんに怖いものが多いのは当然だろう。本書『鳥肌が』は、穂村さんが怖いと感じる-すなわち鳥肌が立つ事柄について記したエッセイ集である。」
    著者が「鳥肌が立つ」事柄とはどんなことか。。。それは、「娘が死ぬのを見届けてからじゃないと死ねない」という母親、夫が無呼吸症候群であることを教えずに毎晩隣で眠る妻、哺乳瓶からミルクを飲むヤギの赤ちゃんの目、外国で起きた連続殺人事件の被害者が皆青目金髪ロングヘア―真ん中分けだったこと、自分が連載していた日記でわずか1ヶ月の間に無意識に同じエピソードを2度書いていたこと、几帳面で仕事もできる男性が自分の年齢を妻に指摘されるまで間違っていたこと、まだ元気だと思っていた自分の母親に「今は昼かい?夜かい?」と聞かれたこと、また、自分と他人の感覚のズレから生じる様々な事柄、未知の自分や将来に対する様々な事柄、等々である。多くは、我々が見聞きしたとしても、一瞬「?。。。」と思いつつ、次の瞬間には流してしまいそうな事柄なのだが、著者はそれを一々留保し、他の類似した事柄や一般的な法則のようなものに敷衍していく。
    そして、それらを読んでいると、我々も、日常に埋もれがちなそうした事項が、実は怖いことなのだと改めて気付かされるのだ。
    我々の日常に埋没した怖さを軽妙な筆致で描いた、著者の代表的エッセイ集である。
    (2021年3月了)
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    投稿日:2021.03.05

  • march

    march

    ようやく読了。いつも穂村さんのエッセイは同じ感想になるんですが、言葉にしにくい感覚をここまで適切な言葉に置き換えて表現しているのがすごい!今回も頷きまくり。
    何時間、何日もかけて繊細に作られた切り絵作品がテレビで紹介されているのを見ると、自分が手渡された時グシャッとしたい衝動に駆られるんじゃないかって、ソワソワします。出演者の方々は自分フラグを抑えているのかなぁ。どうだろう。続きを読む

    投稿日:2021.01.09

  • 菜保

    菜保

    このレビューはネタバレを含みます

    寝る前に少しずつ読むつもりでいたのに、あっという間に最後のページまでめくってしまいました。
    特に赤ちゃんを抱くのが怖い、次に自分が何をするか不安という感覚に共感しました。
    普段なら、言い表せず、もやもやしたまま素通りしてしまう鳥肌が濃縮された一冊でした。

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    投稿日:2020.11.18

  • m3353

    m3353

    44編を集めたエッセイ集。初めて読んでみたが、じわっときたり、ぞぞぞときたりその怖さが面白かった。


    話題の穂村さんのエッセイを初めて読んだ。題名が「鳥肌が」(?)
    穂村さんの名前はよく見かけていたし訳された本(スナーク狩り)も読んだので、穂村エッセイに嵌まって全刊読了という人がいると知って借りて来た。図書館では話の予想がつかなかったが。怖い話を集めたものだった。怖いは、気持ち悪いから心理的に恐ろしいものまでさまざまで、後を引くような忘れられないような怖さから、訳が分かればナンダと解決するものまで44編。
    いつも「びくびく」暮らしているそうだが、私だって正真正銘、引けを取らない小心者。だから閉所だって高所だって次のシーンを想像しただけで足がすくむ。思い当たるところが多くて面白かった。うう

    ☆「母」なるもの
    優しくおいしい食事を塩漬けにして、お風呂は熱めで夫にすすめて、、、という話があるがいらないものを愛もどきにまぶして排除していく、というのもなかなか怖いものがある。
    ここでは「母」の愛情が柔らかい竹の子の穂先をいつまでも娘には食べさせる。母を通して娘の生まれる前と生まれた後はつながっている。「愛」の極めつけが一面怖い。

    「Fちゃんが死ぬのを見届けてからじゃないと、私も死ねない」
    怖い。こどもの後に死にたいのか。
    まぁ心情がわかるけれど。子供には「ありがとう。じゃね」といって先に死にたいが。

    ☆ 原材料という不安
    ちょっと思い出して、薬品に含まれる「タルク」について調べたばかりで、薬や食品の原材料にはわからない怖さがある。タルクはアスベストに似て非なるもので一応危険なものではないらしいという結論だった。
    誰かが甘いものは毒だという極論を言っていた。それにしても過度の肥満はよくない。私も商品の裏を見カロリーもチェックする。生産地も読む。

    単純に化学式をカタカナ化したようなものは怖い気がする。カカオマス、麦芽糖はいい
    そう、こういうものだとなんだか安心で穂村さんに一票。

    ☆ 現実の素顔
    知識と現実は違う、殺人事件もテレビでは生々しい描写はひかえているし、臨終もあんなものかとおもっている。しかし現実の死はもっとおぞましい姿だろう。それが自分の将来かと思うと恐ろしい。自分だけは違うという今を生きている。父も母も苦しまなかった。未来が見えないのが幸せかもと思う。
    手術室で思った。華岡青洲さんのおかげだ。麻酔というものがなかったら超えられなかったかもしれない。ノミの心臓だし。

    ☆ ヤゴと電車

    蜻蛉を喰いたいと蛙がいうのだ。おたまじゃくしの仇を討つと 
                               中村みゆき
    一見すると異様な言葉の背後には「論理」の文脈があったのだ。

    おたまじゃくしの時にヤゴに柔らかい足を喰われるということがあったそうだ。
    穂村さんの、固い文脈、定型の限られた世界の中を想像して読みこなす柔らかい心が見える。
    言葉数が限られた文藝では、背後の世界は読み手の持ち分で面白くなるのだなとあたらめて思う。

    ☆ 落ちている

    道に手袋などか落ちているとドキッとする。哀しい存在に見える。

    私もツタンカーメンのミイラはあまり怖くなかったが、枕元に展示されていた皮の手袋が一番気味悪かった。はるか紀元前、この中に肉体が入っていたのかと、生々しい妙に迫るものがあった。
    同じように、博物館などで観る故人の肉筆というものなども、初めて見るとうら哀しい。

    ☆ しまった、しまった、しまった

    この世界にこれ以上存在したくなくなって実行に移す人がいる。
    「ビルの屋上に呼ばれて別れ話をしていたら突然、『俺のこと、忘れられなくさせやるよ』といって目の前から消えちゃった。笑顔でした」

    あ~そういうことか。
    少し前に似たような本を読んだ。尽くし過ぎた女の目の前で男が消える話だった。死んだわけは、恨みだろうか。絶望だろうか。復讐だろうか。作者が出家したことがあるというのだから宗教的な意味があるのだろうか。単純にもう此岸にいたくはない自分も彼女も自由にしてやろう、彼岸の方が居心地がいい。などと思ったのだろうか。
    わからなかったが、こういうこともあるかもしれないと目が開いた気がした。

    身近な人間の裏は知りたくない、と強く思った。知らないことは同じだろうか。


    ☆ ケジャン

    この世には思いがけない危険が満ちている。でも立ち向かうための気合いや胆力が私には欠けている。

    穂村さんも普通の人だ。そうだから立場を変えて思いやりも生まれる。そうでなかったら歴史に残るだろう。これは小心だが、今の私にだけ通じる人生観で、それも本を読むたびにころころ変わるが。

    短編集をより短くしてしまったが、一編ごとに納得のじわっと来る怖さがあった
    続きを読む

    投稿日:2020.11.10

  • minbook

    minbook

    ”怖い”出来事、物事についてのエッセイ。作者以外には、そんなこと怖い?ってものもあり、ひたすらゾッとする話もあり。普段なら聞き流してしまうような、ちょっとしたことからも怖さを見出すその鋭敏な感覚と、表現がスゴイ。私も基本ビビリなので、共感できることも度々。続きを読む

    投稿日:2020.09.17

  • 分倍河原かずよし

    分倍河原かずよし

    表紙のカッコよさに惚れて購入

    日常に潜む恐怖を見つけてしまい、鳥肌が立つ思いをするエピソードたち。
    文体も柔らかく読みやすい、が、振り返ると楽しみながら読んでいた訳ではなかったと思う。

    優しいおじいちゃん(白髪、背が高い、メガネ、痩せ型)が、抑揚少なめ落ち着いた口調で「こないださ…」と、トークしてるような印象。

    楽しいと思えなかったのは暗いエピソードが多いからだろうか。でも、「それは心配しすぎだよw」と笑う人も居ると思う。自分が笑えなかったのは、他人事だと思えなかったからじゃないか。
    続きを読む

    投稿日:2020.08.16

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