【感想】5分後に起こる恐怖 世にも奇妙なストーリー 呪いの螺旋

岩城裕明, 織守きょうや, 黒史郎, ササクラ, 針谷卓史 / 西東社
(1件のレビュー)

総合評価:

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  • もんがらかわはぎ@読書垢 児童書ホラー強化中

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    このレビューはネタバレを含みます

    呪い。それは確かに存在する。知らない間に、貴方はそれに触れてしまっているかもしれない。あるいは、触れられてしまっているかも。もし、呪いに魅入られてしまったら、逃げることはできないだろう。
    ***
    「世にも奇妙なストーリー」シリーズ第5弾。これが最終巻の様子。今回はメンバーが大きく変わり、最近名前を見るようになった作家さんが多数書かれた作品の様だ。どれがどの作家さんの話かは分からないが、どれも面白い作品ばかりだった。怖い話も多くあったが、怖いが不思議と感じる話も多かった。
    お気に入りの話は、「顔ナシの鏡」「その話、知ってるよ」「かえさずの指輪」。 「顔ナシの鏡」は語り手の通う学校が林間学校で利用する宿泊施設にあるといわれる、鏡に関する怖い話。この施設のどこかにはひび割れた鏡があり、そこに顔がぼやけて映ると、お化けに顔を持っていかれるというものだ。母親が子供のころからまことしやかにささやかれていた噂であるが、その真偽のほどは定かではない。語り手は、その噂と、初めてお気に入りのぬいぐるみと離れて寝ることに不安を覚えていたが、実際林間学校に参加するとイベントが目白押しでそんなことは次第に気にならなくなってしまった。二日目になって余裕が出てきた語り手と友人はイベントの合間を縫って鏡を探すが、時間も探す場所も限られるため結局鏡を見つけることはかなわなかった。所詮は噂だと割り割り切り、そして次第に鏡の事を忘れる語り手たち。しかし、その日の夜、寝ていると目の前にある大きな窓に白い影が現れた……。楽しそうな林間学校を一瞬で阿鼻叫喚の地獄絵図に叩き落す白い影。挿絵を見る限り人間の格好をしているが、手足や首が長くちぐはぐで気持ちが悪い。
    それが頭をガラスに頭を何度も何度も打ち付けている様を想像するだけで鳥肌が立つ。その場は、騒動を聞きつけた先生が助けに来てくれたので事なきを得たがそれからが本当の恐怖の始まりだった。この短篇集はいつも思うのだが、想像しているオチの裏をかくオチを書いてくるので非常に面白い。話の主体は確かに鏡の怪異なのだが、呪われた鏡が存在するわけではないというのが面白かった。読み終わって、はーなるほどなー。という気持ちだった。

    「その話、知ってるよ」は語り手である父親が、自分の娘に話す怖い話。夜眠れないときに、怖い話をせがむ娘に聞かせた話は、実際に語り手が体験した恐ろしい話だった。 職場の後輩である武田から教えてもらった幽霊屋敷「イラハラ邸」そこは、一家六人がある日忽然と消えてしまったという事件が起こった家だった。この辺りに越してきたばかりの語り手はピンとこない様子だったが、辺りでは有名な家らしい。ほめられたことではないが、仕事の合間に別の後輩を含めた3人で行ってみようという事に。
    社用車を乗りつけ、件の「イラハラ邸」を訪れるが、思っていたよりきれいな普通の一軒家だった。平和な雰囲気に拍子抜けする語り手であったが、この後とてつもなく恐ろしい目に合う羽目になってしまう。 一家失踪が起こった家に纏わるホラー小説。この家で巻き起こる異様な現象も怖かったが、それより、武田の異常な行動のほうが気になった。まず、敷地内に入った後裏庭にあるという底なし沼に、かつてこの家に住んでいた少女が使っていた思われる三輪車を投げ入れてみたり、勝手に裏口から家の中に入ったりとやりたい放題。
    正直ドン引きした。最初から軽薄そうな感じであったが、常識がなさすぎる!とムカムカしながら読んだ。(武田のこの行動の謎は最後に理由が明かされることになる)なかなか怖い場面にならず、武田の傍若無人な振る舞いにイライラしたが、その後起こった怪奇現象はばっちり怖かった。何の前触れもなく起こった現象に這う這うの体で逃げ出す3人。その出来事を娘に怖い話として話すのはなかなか刺激的過ぎやしないだろうか。普通なら泣く。しかし、話し終えた後の娘の反応は意外なもので、すでにその話を知っているというのだ。
    しかも、この事件の真相とも言うべき話をよどみなくつらつらと話し始めるのだ。この時点でもう背筋がゾクゾクした。何となく予想しつつページをめくっていくと、やはり思っていた通りで、うわっとなった。更にそのページに描かれている挿絵で更にうわっとなってしまった。この話は話自体もこの本の中で一番怖いし挿絵も一番怖い。失踪事件の真相がわかりすっきりしたが、オチが怖すぎてそれどころの騒ぎじゃなかった。

    「かえさずの指輪」はある町に伝わる俗信に関する怖い話。海に面しているその町は、海からやってきた品は、海で亡くなった持ち物だからという考え方があり、それを元の持ち主に返すため、漂流物を船に乗せ、海に返すという祭りを行っていた。この話を語り手は信じていたが、姉は全く信じていなかった。 ある日海辺を散歩しているとダイヤモンドの指輪が落ちていることに気づく語り手。綺麗なそれであるが、流れ着いたものだから、海に返してしまおうとする。しかし、いつの間にか後ろにいた姉がそれを目ざとく見つけ、指輪を自分の物にしてしまう。
    海に返すように促す語り手だが、姉は頑として聞かず、それを持ち帰ってしまう。姉の行動に不安を覚えながら、怖くて何も言えない語り手は、そのままにしておいたが、その夜、姉と並んで寝ていると海からやってきた脅威にさらされることになってしまった。土着の風習を信じない、姉に起こってしまった悲劇。であるのだが、自業自得なところが否めない。風習を信じる信じないは個人の価値観なので、それはいいとして、ダイヤモンドが付いた高価な指輪を自分の物にしてしまうその根性に驚き。海からやって来たにしろ、誰かが落としてしまったものだったにしろ、気持ち悪くないのだろうか。欲って怖いなぁ。その結果、海からやってきた指輪の持ち主に襲われひどい目にあってしまうのだが、そりゃそうなるのは仕方がない。軽い気持ちで自分の物にしてしまおうと思ったのだろうが、その代償はあまりに大きすぎた。

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    投稿日:2021.02.11

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