【感想】歴史戦と思想戦 ――歴史問題の読み解き方

山崎雅弘 / 集英社新書
(33件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
11
8
5
6
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ブクログレビュー

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  • まこっちゃ 改め 愚直亭小抹茶

    まこっちゃ 改め 愚直亭小抹茶

    第二次世界大戦では、世界各国が自国にとって戦況を有利に導くためにプロパガンダを積極的に多用した。

    本書では、当時の「大日本帝国」が展開したプロパガンダを記録や証言に基づき丁寧に紐解くと同時に、
    極端な解釈が今でも横行している現状を指摘し、憂慮しつつ問題提起している。
    特に、「大日本帝国」と「第二次世界大戦後の日本国」、および一般概念としての「日本」の区別の重要性を説いている。
    その区別が曖昧なまま、感情的に過剰反応している政治家や著名人がいることを名指しで指摘している。
    個人的には、この名指しの指摘自体が形を変えた別種のプロパガンダにも見えなくもなかったため、全部を読後感そのままに鵜呑みにすることは出来ないと感じたものの、
    1938年に日本橋高島屋で開催された思想戦展覧会など、公文書として閲覧できるような公的情報を時系列に基づき丁寧に挙げながら自論を展開している点から、
    少なくとも事実関係についての信頼性は高いように思われる(し、反証可能性もしっかり担保されている)。

    一見すると公平性を保っているように見える「両論併記」の心理的トリック、
    「歴史戦」論者と歴史学者の根本的な違い(歴史に対して向き合う姿勢の違い)、
    問題の本質や焦点の“すり替え”の事例、
    等々、プロパガンダが実際にどのようにして日本で行われてきたか、ということについて、
    一つ一つ記録に残っている具体例を挙げて考察しながら解説している。

    「GHQ」や「コミンテルン」が、その実像から掛け離れた極端な形で、
    政治家やマスメディア、著名人などの発信を通してどのように繰り返し伝えられてきたか(また、いつ頃からその活動が活発化したか)、
    ということについても検証を重ねながら指摘していく。

    日頃、マスメディアでは報道されることのないこれらの「社会構造の実態」は、
    一般社会を観察する際の重要な視点を教えてくれる。
    著者による細かい指摘のすべてを鵜呑みにしないまでも、
    平然と事実歪曲が行われてきた経緯を知ることは、一般市民として今後も生き続けていく上で意義深いと感じた。

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    投稿日:2024.02.03

  • kun92

    kun92

    ごめん、無理でした。

    近隣国が仕掛けてくる思想戦と歴史戦かと思ったら違って、サンケイ新聞を初めとする「日本の保守」の「歴史修正主義」の批判だった。
    たまにはそう言うのも読まないとなと思ったんだが、無理でした。

    誰も言ってないことを言ってると批判し、問題を歪曲する。

    一部の人が見てないからないと言うのか、と言う批判の後に、一部の人が見たと言ってるからあったんだとか。

    南京大虐殺は、人数が問題ではない。
    従軍慰安婦は、強制性が問題ではない。

    初めて意識したが、界隈の人が、レッテル貼りが得意なのはそう言うことなのだな。
    一旦名前さえつけば、広義にそこに含まれるものは、すべて同じレベルで批判する。
    問題の本質に関係なく、悪魔化できる。

    何をやったかが問題ではない。
    それであることが絶対の罪なのだ。

    それ、魔女狩りっていうんだよ。
    後、共産主義ね。

    頑張って読もうと思ったんだが、26になったうちの厨二の娘と喋ってるみたいで、無理でした。
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    投稿日:2023.08.08

  • 馬場豊

    馬場豊

    日本や世界の歴史問題について、いわゆる左派側の目線から読み解くことが出来た。
    リベラルと言えば5chの嫌儲板の住民のイメージで、ただネトウヨが嫌いな人だと思っていた。しかし本書では俯瞰して物事を見れる人が沢山いて、アカデミックな知見の概要を得ることが出来た


    歴史修正 つくる会 歴史選択 読みやすさ 一般層
    慰安婦問題 経済協力 独裁政治に援助 道義的解決
    文化生産者と歴史学の対立
    右翼 左翼どちらか片方
    他の国 アジアアフリカ会議
    イギリス ケニア マウマウ 未来志向のイギリスの良心
    インド エリザベス 教科書 中立 選別的思考
    ドイツ 西ドイツ レパレーションではなく補償 道義的責任
    日本 植民地主義自体ではなく行為自体
    オランダ 東南アジア 奴隷制 遺憾の念
    歴史学会 閉じこもり 網野 天皇 民族解放 メディアの商業主義
    左右の定義
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    投稿日:2023.02.05

  • 近現代史と組織論

    近現代史と組織論

     書店の売り場に「中国・韓国の反日攻勢」「南京大虐殺の嘘」「慰安婦問題のデタラメ」「あの戦争は日本の侵略ではなかった」「自虐史観の洗脳からの脱却」などの歴史修正主義に関する書籍に目が行き、つい手を伸ばして購入したことはないだろうか?最近では、安倍元総理の銃撃事件に端を発し、国葬問題や統一協会問題、東京五輪不正など綴じ蓋が弾けた様な報道に、歴史修正主義者と歴史や事実の積み重ねによる研究書籍など、両論の書籍を並べる書店をSNS等で多数見かけるようになり、読者の目が片方に向かないようになってきているのを肌で感じる。
     本書は、歴史修正主義者が「歴史戦」と称して、歴史の一部分をあたかも全体であるかのように見せかけるトリックの概要を解説し、その巧妙さを指摘する。例えば、南京大虐殺では、虐殺の事実の積み重ねが重要であるものを「虐殺された人数」への論点のすり替を行われている点を指摘する。アジア・太平洋戦争では、帝国陸軍は敗戦と同時に多くの書類を焼却・隠滅したために、正確な記録が無い中では明確に数値化できない点を巧妙に突いてくる。しかし、一方で最近になって軍の記録や個人の日記などが多数見つかり、またNHK等の番組で紹介されるようになり、事実の積み重ねと歴史の検証は続いている。この思想戦は、アジア・太平洋戦争中に開始され、戦後も続いている経過とトリックを丹念に追いかけ、歴史教科書や事実の積み重ねの重要性を伝え、ともすれば「非国民」=「反日」のレッテルのトリックも喝破する。作家保坂正康氏は、「自虐史観」から「自省史観」への転換を訴えるが、正に反省、自省、内省、猛省など、「自省史観」が重要な事を再確認した。また、学生を含めた社会人たちと共に歴史の積み重ねを学び、複眼で多面的に考える重要性を再認識した一冊となった。
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    投稿日:2022.09.23

  • Go Extreme

    Go Extreme

    大きく揺らいでいる日本人の歴史との向き合い方
    産経新聞が2014年から本格的に開始した歴史観
    続々と刊行される歴史観の3文字を冠した書物
    歴史観の祖先としての思想戦と宣伝戦
    日本と大日本帝国と日本国の違い
    第1章 「歴史戦」とは何か
    第2章 「自虐史観」の「自」とは何か
    第3章 太平洋戦争期に日本政府が内外で展開した「思想戦」
    第4章 「思想戦」から「歴史戦」へとつながる一本の道
    第5章 時代遅れの武器で戦う「歴史戦」の戦士たち
    専門化が批判も肯定もしない≒一定の信憑性がある事実
    大日本帝国の日本人
    vs日本国の日本人
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    投稿日:2022.06.29

  • けやけや

    けやけや

    2019年5月。集英社新書。帯に内田樹、望月衣塑子、鴻上尚史、想田和弘の推薦文。
    中韓への排斥論にあるもやもや感を「事実」と「論理」の角度から検証し解消する。

    投稿日:2022.06.14

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