【感想】キッシンジャー 1923-1968 理想主義者 1

ニーアル・ファーガソン, 村井 章子 / 日経BP
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    20世紀後半の現代史を語る上でのキーパーソンの一人といっても過言ではないヘンリー・キッシンジャー。ニクソン政権での国家安全保障問題担当大統領補佐官として、ベトナム戦争終結の功績でノーベル平和賞を受賞し、その後もアメリカ外交に大きな影響力を持ったキッシンジャーの評伝が本書である。

    "The Idealis-理想主義者"と銘打たれた本書の上巻は、出生した1923年から1958年、ハーバード大学の博士課程を修了し、徐々に外交のスペシャリストとして頭角を表すまでの”青の時代”が中心である。

    上巻の白眉は、第二次世界大戦における欧州の戦場に従軍した時代のエピソードである。ユダヤ系ドイツ人としてホロコーストの危険性をいち早く察知し、アメリカに亡命することに成功した彼が、二等兵として目にした強制収容所における同胞の悲劇をどう受け止めたのかというシーンは、極めて印象的。そうした個人的体験と、自身の政治思想との安易な関連性を繰り返しキッシンジャー自身は否定するが、それでもこの経験が彼の政治思想に与えた影響は見過ごすことができないだろう。

    結局のところ、人間は善か悪かという二項対立の中で生きているのではなく、仮に悪だとしてもその中で無数のバリエーションがある。人が死ぬことが悪だとしても、1,000人が死ぬ可能性のある案よりも100人で済む案があるなら、迷うことなくそちらを選ぶというキッシンジャーの思想はここから生まれたのかもしれない。下巻では、政治の表舞台に立った彼の活躍について。
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    投稿日:2019.05.12

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