【感想】もつれ

ジグムント・ミウォシェフスキ, 田口俊樹 / 小学館文庫
(5件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
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ブクログレビュー

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  • じゅう

    じゅう

    ポーランドの作家「ジグムント・ミウォシェフスキ」の長篇ミステリ作品『もつれ(原題:Uwiklanie、英題:Entanglement)』を読みました。
    チェコの「ヤン・ヴァイス」の作品に続き、東欧の作家の作品です… 東欧ミステリ、ポーランドミステリは初めてですね。

    -----story-------------
    予想の斜め上を行くポーランドの怪作小説!

    ワルシャワ市内の教会で、右眼に焼き串を突かれた男の遺体が見つかった。
    被害者は、娘を自殺で亡くした印刷会社経営者。
    容疑者は、彼と共にグループセラピーに参加していた男女3人と、主催者のセラピスト。
    中年検察官「シャツキ」は早速捜査を進めるが、調べれば調べるほど事件の闇は深まっていく。
    一方で、愛する妻と娘に恵まれながらもどこか閉塞感を抱いていた「シャツキ」は、事件の取材に訪れた若い女性記者に惹かれ、罪悪感と欲望との狭間で悶々とする。
    やがて、被害者の遺品から過去のある事件に気づく「シャツキ」。
    真実に手が届こうとしたその時、思わぬ事態が……。

    日本中のミステリーファンを唸らせたポーランドの怪作『怒り』、その「シャツキ三部作」の第一作がいよいよ日本上陸。
    ハードボイルドなのにポップ、凄惨なのに笑える、一度読んだら中年クライシス男のボヤキがやみつきに!?
    予想の斜め上を行く傑作ミステリー!
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    2007年(平成19年)に刊行されたワルシャワ市の切れ者検察官「テオドル・シャツキ」の活躍を描いた「シャツキ三部作」の第1作です。


    ワルシャワ市内の教会で、右眼に焼き串を突かれ男が死んだ… 容疑者は、彼と共にグループセラピーに参加していた男女四人、、、

    検察官シャツキは早速捜査を進めるが、調べれば調べるほど事件は混迷し、一方で夫婦関係に閉塞感を抱いていた彼は若い女性記者に惹かれ、罪悪感と欲望との挟間で悶々とする… やがて、被害者の遺品から過去のある事件に気づく「シャツキ」。

    真実に手が届こうとしたその時、衝撃の事態が起こる……。


    終盤、被害者の妻やグループセラピーの主催者・参加者の関係が明らかになる展開が愉しめるミステリでしたが… 私生活がダメダメな「テオドル・シャツキ」の魅力に惹きつけられて、最後まで飽きずに読めましたね、、、

    ある理由で髪は真っ白だけれど、顔もスタイルもよくハンサムな、法と正義を愛する男なのですが、家庭では夫婦関係に、職場では中間管理職の息苦しさに耐えながら、取材に訪れた若い女性記者に心惹かれ、彼女からのメールにいちいち小躍りし、罪悪感と煩悩の間で悶々とする… という人間臭さに好感が持て、共感しながら読むことができました。

    先に翻訳・刊行されているシリーズ第3作の『怒り』も読んでみたいし、未翻訳の第2作も翻訳してほしいですね。
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    投稿日:2024.01.04

  • saigehan

    saigehan

    「怒り」は結構感触良かったので期待してみたが、これはどうも。。。事件が起こってその関係者がセラピーに通っていたとのことだが、そのセラピー仲間とセラピーの内容や効能なんかの比重が多く、本来この作者は物を書く能力がすごくあるので、描写が必要以上に自分にはしんどく、永らく翻訳されなかった理由はやっぱりあるんだなーと。実際壮年男性はこんなもんだろうが、奥さんにはそこそこ性的魅力を感じていながらも、物足りなさを感じており、女性全て(容姿良さのみ対象)との妄想に耽る様子も、読むうえで疲れる要因。続きを読む

    投稿日:2023.04.08

  • full3

    full3

    ワルシャワ、精神科のグループセラピーの参加者の一人が眼に串を刺され殺された。検察官のシャツキが捜査に関わる。セラピーはコンステレーションという参加者が他の参加者の家族を演じるというものだと分かる。しかし動機がなかなか分からない。

    三部作の第一作。長いし、そしてラストの謎解きもとっても分かりにくい。なのに何故か読み進んでしまったのは、シャツキの内面や街の描写などストーリーとは直接関係無いところが良かったからか。それと第ニ作、三作の評判がいいから我慢したのもあり。
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    投稿日:2020.01.13

  • シュン

    シュン

    題名:もつれ
    原題:Entanglement (2007)
    著者:ジグムント・ミウォシェフスキ Zygmunt Miloszewski
    訳者:田口俊樹訳
    発行:小学館文庫 2018.12.10 初版
    価格:¥970

     読んでいる本と自分の過ごす季節がシンクロしていると気づくと少し得をした気分にはなりませんか? ぼくは、自分が関わろうとする物語と自分の生きる時期が同じである方が、いろいろなものごとが入ってきやすいように感じる。物語との出会いという偶然性に、ほんの少しだけ神秘を感じたり。そう、勝手にね。

     本書はこれを書いている6月第三週くらいの物語である。ただし、舞台はポーランドの首都ワルシャワ、時代は14年前の2005年……1989年民主化の16年後の物語。ぼくのいる2019年の石狩郡当別町とは実は相当に遠い次元の物語ではある。しかし季節の動きや気温は我が北海道と似たり寄ったり。なぜかこの小説には日が変わる度に、その日のニュースや天候や気温が記されるのでそれがわかる。検死官テオドル・シャツキ三部作の個性の一つと言ってもいいかもしれない。

     シャツキが古い事件を図書館で調べるシーンで、その日のニュースを読み返すシーンがあり、そこで、ああこのニュースはシャツキの眼に映ったものなのだ、と類推される。しかも作者はジャーナリスト上がりだ。新聞記事との日常的な繋がりは、作家の目線にそれが変わっても捨てることのできないものなのかもしれない。テーマとなるミステリだけではなく、本書ではシャツキの脳内現象や、感情の移ろいが語られる部分が相当に多い。ミステリの謎解きにしか関心のない読者にはさぞかし辛く長い試練の時間となるかもしれない。

     しかし民主化後わずかに16年。秘密警察時代の影はわずかながら深く生活に刻まれ、ポーランド国民は、ナチスとソビエト支配からの自由をまだ自分のものとして身に纏えていない。何よりも作品自体が黒い影に凝視されている中で、シャツキは事件を追い、検察官という公務のかつかつな生活の中で、希釈されつつある弁護士の妻との愛情への危機と、近づいてくる女性記者への欲望に身を焦がされながら、読者らと等身大のアンチヒーローのページを紡いでゆこうとしている。

     さてミステリとしての仕掛けだが、実はこれが凄い。心理療法を受けている限られた5名の登場人物による初めての二泊三日のセラピーが事件の場となる。各人には何のつながりもない。焼き串を眼に刺され脳に至る刺傷で死に至った痛ましい死者は、誰に何故殺されたのかがわからない。

     シャツキが真相に至るのは何を以てなのか? 5名の人物たちのそれぞれの関わり合いは? そしてシャツキの私生活はどの種のリスクに晒されるのか? 以上三つのQに対して用意される答えはいずれも、読者の予想を遥かに超越してゆく。巻末に至るまで、読者はシャツキの暗中模索にも似た現在とともに辿る。提示されてゆく真実の多重構造に驚愕するエンディングを楽しむために、それはどうしても必要な過程である。どうか、じっくり最後の最後までシャツキの心の旅におつきあい願いたい。

     さて、シャツキ三部作の最終作『怒り』は先に翻訳されており、好評を得ているそうである。本書は後から邦訳されたものの、三部作の最初の作品である。できれば順番に読みたいという、こだわりのぼくとしては、二作目の邦訳がなされるまでは、その後の『怒り』に辿り着く気になれない。なんとも気の長い話だが、性分はなかなか変えることができない。

     ポーランドという邦訳ミステリが十指に満たない、かつて圧政下で呻いていた国に、こうして新しい作家によるエンターテインメントが生まれ、そこではポーランドそのものが綴られる。暗黒の過去に葬られた犠牲者たちの叫びを伴って存在する、現代の彼我の国の平和や幸福そのものが、どれほど不安定で揺るぎあるものであるかを暗示させつつ進む現代史にさわったミステリとして、是非体感して頂きたいシリーズの、本書は貴重な登場作なのである。
    続きを読む

    投稿日:2019.06.13

  • fabian

    fabian

    このレビューはネタバレを含みます

    主人公の検察官がかなりクセの強い人物なので、ダメな人にはまったく受け入れられないと思うが、「怒り」に続いてかなり好き。真ん中の作品も読めますように(祈り)
    ワルシャワが舞台なのもポイント高い。謎ときは後から説明する部分が大きくわかりにくかった。

    3部作のラストが先に翻訳されたのはもったいなかったかな

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    投稿日:2019.01.23

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