【感想】魔の山 上

トーマス・マン, 関泰祐, 望月市恵 / 岩波文庫
(34件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    1924年刊。スイス高原のサナトリウムで療養生活を送ることとなった、青年ハンス・カストルプの精神の軌跡。

    20世紀三大小説家のひとり、との声もあるトーマス・マンの代表作。年配の某文学系YouTuberの方が、『魔の山』はトーマス・マンの中では亜流で『ブッデンブローク家』こそ正統派だ、とおっしゃっていて、なるほどそうなのか~と思いつつも、やはり有名なので先にこちらを選んだ。何よりも、「今読みたい」と直感が働き、これがドンピシャだった。

    というのは、本作で主人公の青年ハンスが、過去に想いを寄せていたプリビスラウとの関係を引き合いに出しながら、ロシアの婦人への恋心をひそやかにしつつ、あまりにも控えめな行動力で陰キャ的なやり取りをする描写に、たまらなく共感を覚えるタイミングだったからだ(汗)。
    P250 「現実的に、いまのひそかな関係以上の交渉は持てないという確信、二人のあいだには越えられない深淵が横たわっていて、彼女と一しょでは彼の承認しているどんな批評にも及第できないという確信」
    絶対に越えられない壁がある相手に恋をしてしまったら、こうするしかないだろうな、という行動をハンスがとるので、恋の行方が気になり、それが引力となって読み続けられた。

    したがって、自分は本作の上巻をほぼ恋愛小説として読んだのだが、もちろん下のレビューや各所で言われているように、本作は20世紀初頭の思想や医学などについてつらつらと書き綴られた教養小説というやつで、読んでいて退屈な部分は確かにある。あまりにも変化のないサナトリウムの生活は、実は死と隣り合わせで、いやでも思索的にならざるをえない環境でもあり、こういった議論や語りが続くような小説には格好の舞台といえる。

    しかし、数多い個性的な登場人物と人間関係の描写はなかなかに面白く、高原の景色も趣に富む。物語というよりも、こういった光景を楽しむ小説として考えていると、いつしかハンスと共に自分自身もその場にいるような不思議な感覚すらわいてきた。章の間にいくつもの節で区切られているためコツコツ読むには向いていて、この小説に取り組んでいる数日間ずっと手元のそばに置いていたので、サナトリウムの世界にどっぷりつかっていた感じが強い。その他、時間感覚についての考察は興味深い。

    上巻ラスト付近の急展開は楽しくて仕方なかった。ハンス君やらかしすぎ(笑)。つくづく自分には合う小説だなぁと。下巻はもっと長いようだけど、全然イケそう。
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    投稿日:2023.07.10

  • fackel1015

    fackel1015

    大学時代にドイツ語をやっていたこともあってある種イキっていた自分は、トマスマンを読んでいれば教養人のような気分になれるのではないかと思い、この本を手に取った。結果として、この本を理解するために必要な教養が不足していることに気づき、教養人のような気分どころか、己の無教養を痛感することとなった小説。評価するほど理解もできていないので、星はなし。続きを読む

    投稿日:2022.08.24

  • 紗井谷

    紗井谷

    長い上に難しい言葉も多かったので若干読みにくかったです。注のところも多くて読み返すのが大変でした。ですが結末が気になるので下巻も読もうと思います。

    投稿日:2021.10.29

  • SnowyYuki

    SnowyYuki

    このレビューはネタバレを含みます

     23歳のハンスカストルプが魔の山,ベルクホーフというサナトリウムへやってきて7ヶ月。謝肉祭,ワルプルギスの夜まで。
     ハンス・カストルプの生い立ち,ハンス・カストルプとヨーアヒム・チームセンの関係と各々の性格や興味,人文主義者でハンス・カストルプの教師たろうとするイタリア人のロドヴィゴ・セテムブリーニとの出会い,時間の流れについて,ハンス・カストルプが一流ロシア人席に座るクラウディア・ショーシャ夫人に興味を抱くまでの心の動きと恋心の扱い方,病気というものの捉え方などなど。

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    投稿日:2019.08.10

  • めかぶ

    めかぶ

    このレビューはネタバレを含みます

    とにかく長い。退屈。特に何も起きないまま上巻が終わる。ちょこちょこ動きはあるのだけれど。サナトリウムでの様々な人々との交流を通した青年の成長物語、とでもいうのかしら。病気、死、宗教、戦争、いろんなテーマを登場人物を通してひたすら討論していく場面が続く。しんどい。下巻、盛り上がりを見せてきたところで終わってしまう。しんどい。小説というよりも哲学書のような。しんどかったけど達成感はあった。これを読めたらもう何でも読めそう。ハンスが遭難しかけて生と死について開眼していくところは繰り返し読んだ。あの部分のために他を読んだのだと言ってもいいレベルで沁み入った。結論、しんどかったけど読んでよかった。しんどいけど読んだ方がいい。

    好きだった箇所をメモしておいたので貼っておく。
    「人間は死よりも高貴であり、死に従属するには高貴すぎる、頭脳の自由を持つからだ。人間は生よりも高貴であり、生に従属するには高貴すぎる、心の中に敬虔さを持つからだ。」

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    投稿日:2019.03.16

  • 葛城剛志

    葛城剛志

     「退屈な教養小説」というのが率直な感想である。
    「魔の山」と言うと何やらファンタジーな空間を連想する向きが多そうだが、実際には結核療養のための施設…サナトリウムである。
    高山の療養施設ながらまるでリゾート施設のような雰囲気で、若くしてここに送られた主人公は特に将来を悲観する事も無く周囲の一癖も二癖もある大人達から色々学ぶ事になる。
    まぁ大半は主人公について回るセテムブリーニとかいうオッサンの寓話的警告で、表向きはただ食って散歩して寝ているだけなのに分厚い本の上下巻とかよく書けたものだ。

     元々は「大学に入ったら何やら小難しそうな本に挑戦したい」というだけの理由で読んだので内容らしい内容はもうほとんど覚えていない。
    この本を読んで何か一つ得た事があるとすれば主人公がやたら気にしている人妻のクラウディア・ショーシャがサルバドール・ダリの妻となったガラのモデルらしいと後に判った事ぐらいだ。
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    投稿日:2018.07.05

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