【感想】警察官白書(新潮新書)

古野まほろ / 新潮新書
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 3.1
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ブクログレビュー

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  • モゲラ

    モゲラ

    警察官の生安・刑事・交通・警備それぞれの専務を、その典型イメージを通じて解説している。
    それぞれの専務の特色を通じて、どのような人間像や性格が形作られていくかといった説明が結構説得的で面白く読めた。

    投稿日:2024.03.23

  • のり

    のり

    警察キャリア出身の作家が、交番、生安、刑事、交通、警備などの専門分野別に徹底プロファイル。全国26万警察官の生身の姿をリアルに描き出す。(2018年刊)
    ・まえがき
    ・Ⅰ 警察太郎ー26万警察官の「むりやり平均値」
    ・Ⅱ 刑事太郎たちー誇りを懸け、鎬を削る専門家集団
     ・第1章 生安太郎
     ・第2章 刑事太郎
     ・第3章 交通太郎
     ・第4章 警備太郎
    ・あとがき

    本書では、交番のおまわりさん(地域警察官)である警察太郎と4つの専務をわかりやすく解説している。中の人だったので、記述に重みがある。(交通の経験は無く、わからないことはわからないと言っているのも好印象)公安については、意外であった。内幕物として楽しめる。
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    投稿日:2021.04.11

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    ★4.2

     同著者の小説『新任巡査』上下・『新任刑事』上下の合計4冊を読み終えた後に改めて警察内情エッセイとしてのこの本を手にとった。

    (なお、『新任巡査』は地域課(交番勤務を中心とした“外勤”警察職員)を主に取り上げた警察小説であり、『新任刑事』は題名どおり、警察の内勤専務員であるところの「刑事課」を主に取り上げた警察小説である。最後の方にリンクを張っておく)

     著者は「ステレオタイプは、どうしても個々人そのものではありえないけれども、個々人の特徴を見定める最初の一手としてはなお有用である」という立場に立ち、「だからこそ、警察で勤務してきた自分のような人間の側から見た警察職員のステレオタイプを分類し詳述することには一定の意義がある」と本書の冒頭で述べる(※原文ママではなく、私なりの乱暴な要約である)。すでにこのあたりから、著者の「観察力」とは何か、という思想の表明になっており、面白い。

     そして、その警察的ステレオタイプの記述として著者が提示する概念の中でとりわけ興味深いものが、公正世界仮説を体現する【正義パラダイム】と、警察内部のメジャーな業績評価や判断基準に関わる【オール・オア・ナッシング・パラダイム】の2つである。以下に出てくる5つのセクションにおいても、警察官が“後天的な本能”として獲得してゆくパラダイムは説明用のツールとして繰り返し用いられる。

    (1) “外勤”する大多数の警察職員を抱える【地域課】(警察太郎/交番太郎
    (2) 新しい法律に翻弄されながら犯罪のなんでも屋として立ち回る【生活安全課】(生安太郎)
    (3) 強行犯・知能犯・盗犯・暴力団対策などを司り、職人ギルドとしての性格が他課より極めて強い【刑事課】(刑事太郎)
    (4) 市民からも警察職員からも嫌われがちだが、どこの課よりもコミュニケーションスキルが磨かれる人当たり抜群の【交通課】(交通太郎)※ただし古野自身はこの課に対する専門知識については自信がないと宣言している
    (5) 忍者的な秘密主義と密やかな団結を胸にテロ・ゲリラと30年〜100年の計画で国家安寧を目指す【警備課】
    (※古野はそのキャリア警察官として経験した分野ゆえか、警備課への思い入れが特別強いようだ)

    これら{地域課,生活安全課,刑事課,交通課,警備課}が、警察職員によって構成される主な5部門として説明される(※総務課および警務課については、存在はきちんと示唆されているが、セクションとしては設けられていない)。

     ところでこの本が出た2018年06月は、人気シリーズ『名探偵コナン』の新作映画『ゼロの執行人』が100億円超えの興行収入を挙げた年でもあった。その映画の実質的な主役の一人である降谷零/安室透は、都道府県における「警備課」の警察官ではなく、キャリアである「警察庁」の「警備企画課」の人間として立ち回っていた。しかしながら、古野まほろによって書かれた「警備課」像は、概ね古谷/安室というキャラクターの方向性とも合致しているだろう。なにしろ古谷/安室は、都道府県の「警備課」を上の立場から指揮する、日本国内の警備課すべての頭脳部分に位置する役職に陣取っていることになるから。

     この本それ自体はコナン映画より前に企画されていたものだろうが、たまたま『ゼロの執行人』がヒットした2018年04月からほどなくしてこの本が出て、図らずも古谷/安室が志向する「国のための秘密裏の仕事」のモチベーションが、元キャリア警察官僚である古野まほろによって補足されるのは、2020年の今振り返ってみると、面白いコンビネーションに思われた。

     ところで本書は、語り口が優しいと感じられる一方で、内容それ自体はなかなか飲み込みづらかったというか、やはり専門職ならではの“異界”について語られているからこその消化しづらさがあった。先に同著者の『新任巡査』『新任刑事』を通じて、警察職員のリアリティを別のアプローチから読み終えていなかったら、もっと読みづらい読書経験になったかもしれない。

     古野まほろの小説は、読み手によって好悪・巧拙の判定が極端にわかれがちなようだ。そんな中、私個人は古野まほろの『新任』シリーズの評価はとても高い。よって私はこの『警察官白書』も面白く読めたが、他の人まで似たような判断になることまでは特に請け負わない。好きに判断してほしい。


    ▼関連ブクログレビュー
    『新任巡査』上 https://booklog.jp/users/f51ab8c06189d210/archives/1/4101004714
    『新任巡査』下 https://booklog.jp/users/f51ab8c06189d210/archives/1/4101004722
    『新任刑事』上 https://booklog.jp/users/f51ab8c06189d210/archives/1/4101004730
    『新任刑事』下 https://booklog.jp/users/f51ab8c06189d210/archives/1/4101004749

    ▼付録:『警察官白書』内の専門用語抜書
    著者が独創的なやりかたで設定した「正義パラダイム」や「オール・オア・ナッシング・パラダイム」などといった分析用語は、可能な限り省いています(もし混じっていたらすみません。コメント等で指摘してくれたら直します)

    非違警察官,ゴンゾウ,部内,部内相場,2-3-4ルール,地域警察官,部内結婚,超勤,勤勉手当,期末手当,ぱちんこ,まあじやん,訓授場,警戒力の重複,簿冊,扱い,親交番,指定休,警杖,気働き,SA(選択式問題),決済挟み,令状主義,地理指導,対刃防護衣,桶川事件,事件処理,動静監視,無線照会,第一臨場,執務資料,外勤,内勤,地域,専務,専務員,情報通信部,建制順,専務員登用試験,管理職試験,ナマヤス,刑事局防犯部,生活安全局,組対部門,総警務,特別法犯,薬銃,事案処理,蝟集,保安警察,逐条解説,業法,業規制,緊逮,内偵モノ,掘り起こし型,発生モノ,機動捜査隊,刑事企画課,刑事総務課,捜査〇〇課(本社系),刑事〇〇課(支社系),邀撃,財務捜査官,国際捜査官,訓育,取調べ官,所属長,終局処理,ハム太郎,公安警察,外事警察,警備実施警察,超ドメ,ハイソ,憲法秩序,民主政体,対日有害活動,治安警備実施,災害警備実施,重信房子,ハーグ事件,渋谷暴動,大坂正明,免状不実記載,有印私文書偽造,部内外交,現象面に追われていない,保秘,
    (以下、捜査書類シリーズ)被害届,被害者調書,実況見分調書,捜査報告書,被害品発見捜査報告書,供述調書,任意提出書,領置調書,容疑者発見捜査報告書,参考人調書,被害者割出し捜査報告書,被疑者所在捜査報告書,捜査関係事項照会書,逮捕状請求書,捜索差押許可状請求書,通常逮捕手続書,弁解録取書,捜索差押調書,押収品目録,押収品目録交付書,被疑者調書,鑑定嘱託書,答申書,再現見分調書,捜索差押許可状請求書,総括報告書,装置書,証拠金品総目録,書類目録
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    投稿日:2020.10.27

  • じょ~ろん

    じょ~ろん

    警察組織の話。各現業部門の平均的な考え方や思考パターンがわかって面白い。なんとなく感じてはいたものが、言語化されている、といった印象。

    肩肘張らずに読める。「ハコヅメ」「警察24時」などが好きな方にはお勧め。続きを読む

    投稿日:2020.10.17

  • あるふれっと

    あるふれっと

    経験から書いているんだろうけど、警察官という未知なものの雰囲気をよく伝えてくれてる。警官をみると悪いことしてなくてもドキッとしてしまうほど無意味に毛嫌いしている普段の生活では、警察官の生態は想像できないので、こういう本はありがたい。交番・刑事・交通・公安、に分類されていることも知らなかった。面白かった。続きを読む

    投稿日:2019.06.28

  • fenc

    fenc

    母集に属するものが作るステレオタイプと、母集団の外にいるステレオタイプは異なることに注目して、警察官自身が描く典型的な警察官象を部門・専門ごとに書き出していくのが本書。

    警察官の無形資産としての豊富な信用、社会人になってからでも階級を上げるために度重なるテスト、刑法の事件を扱う警備から事件扱い何でも屋の生安(生活安全部)に時代が経つにつれて犯罪の主流がズレてきたことなども興味深い。ただし本書の一番の見どころは、部門によるあまりにも大きなステレオタイプの違いだと思う。

    地域・専務(生安・刑事・警備・交通)と大きく別れるこれらの組織は、何かいろいろ警察はやってるのだろう、で部門の名前さえ公安以外初耳の私にとっては非常に意外で面白かった。公安の秘密主義的な側面・刑事の我を貼る側面などが、部門に由来すること、それぞれの警察官が一社会人として様々な事務や業務をルーチンとしてこなしてるのは共感すら覚える。

    警察というものに一元化されたステレオタイプ程度の知識しかないかたは、自分がそういった村意識の強いギルドに馴染みたいかは別として、本書を読んでみると面白そう。
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    投稿日:2019.03.19

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