【感想】片想い探偵 追掛日菜子

辻堂ゆめ / 幻冬舎文庫
(20件のレビュー)

総合評価:

平均 3.3
1
9
4
5
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ブクログレビュー

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  • ひだまりトマト

    ひだまりトマト

    女子高生探偵の日常の謎ですね。

    追掛日菜子は女子高生。彼氏なし。
    「推し」一筋なのだが、ストーカー並み。
    その「推し」が何故か事件に巻き込まれて、日菜子が解決するというストーリー。
    大学生の兄が引きずり込まれてワトソンの如く、事件解決に奔走する。

    めちゃくちゃユーモアたっぷりの本格探偵小説になっているのが、辻堂さんの力業ですね。
    推理が際立っています。パソコンとスマホを駆使して推論を組み立てる熱意は凄まじいほど。
    行動力もホームズもびっくりするくらいの無茶をする。
    何故か、解決すると「推し」が覚めてしまいう。
    次々と「推し」が変わって、五話の短編連作ですね。

    辻堂さんの文章はスピードがあり、楽しい。
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    投稿日:2023.06.16

  • magusa2885

    magusa2885

    軽く、そして楽しく読める。軽いと言っても、気楽に読めるという意味で、面白いライトノベルであることに間違いない。まあ設定や話の流れにやや都合の良い処があるが、こういったライトノベルは、その雰囲気を味わえれば良いと思う。登場人物も、主人公を始め、みんな分かりやすい善人ばかりで、犯人も、そして動機も分かりやすい。ストーリーの展開も軽快で、「ちょっと都合良くない?」などと言いたくなる場面もあるが、肩肘張らないで読もう。とにかく何も考えないで楽しく読めば良いと思う。続きを読む

    投稿日:2023.05.31

  • shifu0523

    shifu0523

    【収録作品】第一話 舞台俳優に恋をした。/第二話 お相撲さんに恋をした。/第三話 天才子役に恋をした。/第四話 覆面漫画家に恋をした。/第五話 総理大臣に恋をした。

     一途だが、熱しやすく冷めやすい、ストーカー気質のファン・日菜子とハラハラしながら付き合う兄が、日菜子の〝推し〟に降りかかるトラブルに取り組む連作。
     日菜子の〝特定〟作業が興味深い。かなりの執着心がないと難しそうだけれど、その分〝特定〟できたときの達成感はやみつきになるかも。
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    投稿日:2022.09.23

  • さてさて

    さてさて

    あなたは、本の表紙をどのくらい意識しますか?

    本を手にするあなたの目に一番先に入ってくるもの、それが表紙です。その際、本を選ぶのが先で、結果的に表紙はこんな感じなんだと見る場合と、本屋さんの平台でたまたま目に入った表紙が気に入って結果的にその本を選ぶことになったという両方の場合があると思います。特に後者の可能性を考えると本の顔となる表紙というものの大切さがわかります。

    “「売れる本」はどうやったら作れるのか”という視点で、本が作られる裏側を紹介するノンフィクション作品に、額賀澪さん「拝啓、本が売れません」という作品があります。私たちが知ることのない、私たちの手元に本が届くまでの裏側が書かれたとても興味深い作品ですが、その中に”優れたブックカバーデザインには、三つの大事なポイントがある”と書かれています。そんなポイントは、

    ①作品の本質を表していること
    ②デザインコンセプトが一貫していること
    ③売れること

    という三点なのだそうです。”顔は心を表す”とも言われるように、本も表紙を見ればその内容が、少なくともその本が自分に合うかどうかはおおよそ分かる、そのくらい意味のあるものとも言えると思います。実際に私は辻村深月さん「光待つ場所へ」という作品を”ジャケ買い”し、その先にイメージ通りの世界が広がっていたことに深い感銘を受けた経験もあります。

    では、そんな視点からこの作品「片想い探偵 追掛日菜子」の文庫本の表紙を見たあなたはそこにどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?10代の女の子が電柱の陰から首を傾げてこちらを見ている赤基調のインパクト最大級の強烈なイラストが特徴のその表紙。げっ!なんだこりゃと瞬間的に興味を失う方もいらっしゃるでしょう。本屋さんの平台に置かれていたとしたら、手に取るのも恥ずかしい、そんな風に思う方もいらっしゃるかもしれません。では、そんな作品の表紙は上記、額賀さんが挙げられた三点に沿っていないのでしょうか?「片想い探偵」という書名を考えると①と②には合致しているように思います。しかし、手に取るのを躊躇する人が多いとなると③の条件には合致しないように思います。

    しかし、この作品の表紙はとても良くできていると私は思います。主人公の追掛日菜子を絶妙に表現しているのがこの表紙だと思います。ただ、この作品の本質はこの表紙だけからは読み取ることができないとも思います。まるで、コミックのようにも感じられる表紙の本の中に、まさかの本格的なミステリーが展開するとはよもや誰も思わないだろうからです。これは、この表紙のマイナスポイントです。一枚の表紙だけでは決して全てを表せない世界観の作品がこの世には存在する、それがこの作品なのだと思います。

    そう、この作品は『推し』にこだわる一人の女子高生の物語。そんな物語に、脅迫、誘拐、そして殺人という事件が起こり、そこに細部にまでこだわった辻堂ゆめさんならではの推理の醍醐味が味わえる物語。そしてそれは、そんな女子高生が天才的な推理によってさまざまな事件を鮮やかに解決していく様を見る物語です。

    『優也くん、今日はブログ更新してるかなぁ』と帰宅早々、ノートパソコンの電源を入れつつ、スマホでツィッターとインスタのチェックをするのは主人公の追掛日菜子(おいかけ ひなこ)。そんな日菜子は『推し』である舞台俳優の須田優也が『他の俳優や知り合いに、どんな返信をしているのか』を調べます。『出待ち』、『入り待ち』、『尾行』、それとも『待ち伏せ』のどれが良いのか手帳にメモしているところで『背後に気配を感じ』て振り返ると、そこには兄の翔平が立っていました。慌てて手帳を閉じるも『好きなアイドルを追っかけるのはいいけど、待ち伏せとか尾行はやめろよ…正真正銘のストーカーだからな』と説教をされてしまう日菜子。やがて兄が立ち去り、『須田優也に会うための綿密な計画づくりを』続行する日菜子。そして、予定していた日となり会場で待つ日菜子の前に黒い車が到着し、『草野京太郎と、須田優也。同じ事務所の二人』が出てきました。『優也くん、こっち向いて』と声を張り上げるファンの前を『軽く手を振りながら通り過ぎ』る優也の『屈託のない笑顔に』『胸を射貫かれた』日菜子。そして、『白球王子』という『甲子園を目指す高校生の一年間の奮闘を描いた野球漫画』の舞台に出演した優也の演技を見て『号泣した』日菜子。そして終了後、綿密に計画していた通り大平昴という別の出演者一行の後をつけた日菜子はお洒落な居酒屋へと潜り込みます。そうしたところ、思った通り、草野京太郎や赤羽創、一ノ宮潤などの共演者と共に優也が店に入ってきました。『凝視していても』気づかれないようにサングラスをし、『優也くんの声を』『個人での観賞用に』と、こっそり録音もしながら優也の近くにいる喜びを感じる日菜子。そんな中、『優也の趣味が、キャンプや釣り』であることを知って目をきらめかせる日菜子。一団の話題はキャンプの話となり優也が買って携帯していた『アウトドアナイフ』の話題で盛り上がります。そして翌日、『再び、舞台「白球王子」の公演会場へと足を踏み入れた』日菜子は、『集中して観劇に臨』みます。そんな舞台は一番の盛り上がりどころ、優也と一ノ宮がナイフを手に揉み合うシーンとなり、優也が一ノ宮にナイフを振り下ろします。そんな時、『やめろ!』と京太郎が割り込むというシーン。絶叫した京太郎は、『大きな音を立てて倒れ』ました。しかし、同じシーンのはずなのに、昨日とは何かが違うことに気づいた日菜子は、京太郎の『白いユニフォームが、みるみるうちに真っ赤に染まっていく』のを目にします。そして、『観客席から、悲鳴が上が』りました。そして『人気俳優・草野京太郎が、舞台の公演中にナイフで刺されて殺された』というニュースが駆け巡り、優也は『警察で任意の事情聴取を受け』ます。そんな展開の中、『優也くんは、草野さんを殺してなんかない』と日菜子が”探偵”の如く活躍する物語が始まりました…という最初の短編〈第一話 舞台俳優に恋をした〉。日菜子と兄の翔平の絶妙なキャラ設定が炸裂する中に、一気に物語世界に連れて行ってくれる好編でした。

    “前代未聞、法律ギリギリアウト(?)の女子高生探偵、降臨”と内容紹介にうたわれるこの作品。五つの短編が主人公・追掛日菜子の”探偵”としての活躍を描いていく連作短編として構成されています。そんな日菜子は高校二年生で、もちろん”探偵”ではありませんが、鋭い直感と行動力によって数々の事件を解決していくというのが基本的なストーリー展開です。同様な作品としては、女子高生が”探偵”となって”ガールズ・ハードボイルド”な魅力たっぷりに展開する永井するみさん「カカオ80%の夏」、女子大生が”探偵”となって”本にまつわるミステリー”に立ち向かっていく大崎梢さん「配達あかずきん」などがあります。いずれもシリーズ化されている人気作品ですが、この辻堂ゆめさんの作品もやはりシリーズ化されています。”女子高(大)生 × 探偵”という意外性のある組み合わせの図式から浮かび上がる独特な世界観には作家の側も読者の側も需要が多い、というところでしょうか。

    そんなこの辻堂さんの作品は五つの短編においてそれぞれに意外性のある事件が発生し、主人公・日菜子がその解決に立ち向かっていきます。まずはそれぞれの短編の内容をご紹介しましょう。

    ・〈第一話 舞台俳優に恋をした〉: 『舞台俳優の須賀優也』が『推し』になった日菜子は、そんな優也が出演する舞台で、優也が共演者の草野をナイフで刺し殺してしまう場に居合わせました。『優也くんは、草野さんを殺してなんかない』と言う日菜子はその謎に立ち向かっていきます。

    ・〈第二話 お相撲さんに恋をした〉: 『チェコ出身の現役力士、力欧泉』が『推し』になった日菜子は、稽古場の見学に赴いた際に『相撲ファン』の瀬川というマスク姿の女性と出会います。そして、翌日曜日、女優の『瀬川萌恵、巷で人気の外国人力士と堂々不倫!』という記事を目にします。

    ・〈第三話 天才子役に恋をした〉: 『三歳の頃から大河ドラマ』などで活躍する天才子役の千枝航、『通称、コウくん』が『推し』になった日菜子は、コウくんが『誰かに狙われている』という情報を入手し、コウくんの学校で開かれる運動会への潜入を試みて、彼を危機から救おうとします。

    ・〈第四話 覆面漫画家に恋をした〉: 『顔を出さずにネットで四コマ漫画の連載をしてる』という覆面漫画家の『ましころいど』が『推し』になった日菜子。そんな『ましころいど』が奥さんの家出をきっかけに『もう漫画はかかない』と発表したことを翻意させるために動き出します。

    ・〈第五話 総理大臣に恋をした〉: 『戦後最年少の四十九歳。超優秀!』という『内閣総理大臣』の高杉浩二郎が『推し』になった日菜子は、衆議院議員選挙前に本来身内である元法務大臣の総理を巻き込んだスキャンダルの真相を探るために深夜、長野の別荘へと赴き建物へ突入を図ります。

    五つの短編は上記させていただいた短編タイトルからお分かりいただけると思いますが、主人公の日菜子が、好きになった極めて振り幅の広い男性たちが巻き込まれた事件の解決に”探偵”の如く関わっていく物語です。ここで一つポイントとなるのが、『推し』という考え方です。宇佐見りんさんが書かれた「推し、燃ゆ」という作品でも有名になった『推し』という言葉。この作品の中でも冒頭に、こんな説明があります。

    『「推し」とは ー 自分が支持、愛好している対象。アイドルグループのファンが自分の好きなメンバーを表すのに使用する「推しメン(イチ推しメンバー)」をさらに短縮した言葉』。

    この作品の主人公である日菜子は、『彼氏より、推しとのほうが、ずっと幸せな関係を築ける』という考えの元、常に『推し』を生活の中心に据えて生きています。兄の翔平とアコーディオンカーテン一枚で共用する部屋の隅々にまで現時点で『推し』としている男性の写真を貼りまくる日菜子のことを翔平は、常々、『ストーカー行為だけはするなよ』と戒め続けます。そして、翔平は妹が『推し』とする男性について

    『お前のストライクゾーンはどうしてそんなに広いんだ』

    と呆れ返ります。この短編で取り上げられただけでも『舞台俳優』はまだ分かるとしても『本気で恋してるんだとしたら、わりと犯罪だな。歳の差的に』という年下の天才子役や、『お前みたいな何も考えてない女子高生が踏み込んでいい領域じゃないんだよ』、『公安に目をつけられたり、SPに取り押さえられたりするようなことだけはやめろよ』というまさかの内閣総理大臣を『推し』にしたりと至極強烈です。しかも、『毎回、変わり身が早すぎる。「女心は秋の空」って言葉を、俺は小六にしてしみじみ実感したよ』と翔平が呆れ返るくらいに次から次へと『推し』の対象を変えていく日菜子は、まあこれは連作短編なので乗り換えていかなければ作品が成り立たないという辻堂さん側の事情がある(笑)とはいえ強烈です。

    しかし、そんな日菜子は一度『推し』と決めた人物にはその全てを捧げて『推し』ていきます。『洞察力と推理力、忍耐力、そして実行力』を駆使して舞台俳優の優也が飲みにいく先の店を割り出して待ち伏せしたり、天才子役が通う小学校、運動会の日付を調べ上げて、さらには不審者対策の名札まで偽造してまんまと受付を突破するなど、一見、”探偵”っぽい行為とはいえ、”悪知恵”の先にあるような真似が先行する日菜子。これには、兄の翔平が呆れ返るのは当たり前です。また、それにいつも付き合わさせられる身となるとその気苦労も偲ばれます。

    しかし、そこから先に日菜子の”探偵”顔負けの超絶推理が展開していきます。一見、これはコミック?と思わせるキョーレツな表紙、そしてストーカーまがいの『推し』の展開を見ると、まさかその先に巻き起こる事件が脅迫、誘拐、そして殺人といったような凶悪犯罪の匂いは一切感じられませんが、実際にはこれらの凶悪犯罪に『推し』の相手が巻き込まれていきます。もちろん、事件が起こらなければ物語は成り立たないわけで、これは必然とも言えますが、そんな日菜子の身近にいて、そんな事件を共に解決するのに付き合わせられる兄・翔平はたまったものではないと思います。そんな翔平は次のような言葉を日菜子に語ります。

    『事件引き寄せ体質だよ。お前が好きになった推しは、大抵、何かに巻き込まれる…ホント、かわいそうに』。

    しかしその一方で、翔平は”事件”を的確に解決していく妹の姿を見てこんな風にも思います。

    『妹の手にかかると、どんな人間も丸裸にされてしまう』

    そう、兄の翔平は一番の身近な存在であるが故に、日菜子の悪い面だけでなくその才能も見抜いています。だからこそ、さまざまな場面で日菜子を的確に支え、高校生の日菜子が”探偵”として活躍できるように寄り添ってもいきます。この図式、つまり日菜子と兄・翔平の関係性を考えると、ある有名な人物の存在が浮かび上がります。そう、それは、名探偵・シャーロック・ホームズと相棒のジョン・H・ワトスン(ワトソン)の存在です。名探偵には名相棒あり、とも言われます。思えば上記した永井するみさんの作品にも、大崎梢さんの作品にもやはり名相棒となる人物が登場します。この形こそが”王道の探偵もの”の証であり、辻堂さんのこの作品もその形式を見事に踏襲しています。この作品のかっ飛んだ面白さはその”王道の探偵もの”の形式の踏襲にもあるのだとも思いました。

    読者が思わず引いてしまうほどに強烈に『推し』を追い求める日菜子の存在が良くも悪くも強いインパクトを与えるこの作品。その一方で、「あの日の交換日記」で読者を魅了する緻密な物語の構成力とミステリーの組み立て方には圧倒的なものを見せてくださる辻堂さんは、この作品でも、一見”おふざけがすぎる”と思われる女子高生探偵が巻き込まれていく事件の数々に”本物感”のある数々の仕掛けを用意して読者に真正面から対峙します。緻密な推理が展開するこの”本物感”は、見事です。そこには”おふざけ”は一切ありません。そう、この作品は”おふざけ”と”大真面目”な一見相反する感覚世界が融合を見せる物語。”おふざけ”があるからこそ、”大真面目”が深刻になりすぎない、”大真面目”があるからこそ、”おふざけ”が軽くなりすぎない、その絶妙なバランスの上にあるのがこの作品なのだと思いました。

    辻堂ゆめさんという作家さんが描く作品の幅の広さと発想の柔軟さ、それでいて極めて緻密に物語を組み立てていく抜群の構成力に改めて感銘を受けた、そんな作品でした。
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    投稿日:2022.08.17

  • rickun

    rickun

    この作家さんにしては、珍しくコメディでサクッと読めるライトノベル。万能鑑定士を書いていた頃の松岡圭祐のようだった。
    SNSはこう使うとストーキングができるのかと、変に感心してしまった。

    投稿日:2022.05.23

  • 晴也

    晴也

    主人公の推しへの気持ちは些細なところから分かりやすい所までかかれており、お兄さんとの対比もあり説得力があったのが良かった。

    投稿日:2021.12.03

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