【感想】ルポ タックスヘイブン 秘密文書が暴く、税逃れのリアル

朝日新聞ICIJ取材班 / 朝日新書
(3件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • osechies

    osechies

    国債調査報道ジャーナリスト連合によって、世界に共有された「パラダイス文書」がこの本のテーマ。

    パナマ文書よりずっとボリュームが多く、現地取材のレポートもある。

    楽しく読めるかと言われればそうではないけれど、タックスヘイブンの実態を知るには手軽でいいと思う。続きを読む

    投稿日:2023.03.02

  • kasaji

    kasaji

    パラダイス文書の件を取りまとめてあり、理解しやすい。結局は金持ちの金持ちによる金持ちのための社会だな。(笑)

    投稿日:2020.10.20

  • aikow

    aikow

    世界有数の大富豪だった投資家のロス氏は、米商務長官就任時に法律に従って保有資産を公開した上で、利益相反になりうる大半の資産を手放すことを宣誓して米上院から承認される。しかし、タックスヘイブンである英領ケイマン諸島で、長官承認後も株を保有する複数の法人を通じて海運会社「ナビゲーター社」と利害関係を保っていたことがパラダイスペーパーで明らかになる。ロシアへの経済制裁下で身動きができなくなったロシアのガス・石油会社に輸送船をの貸し出しを拡大し、74.8億円もの収益を上げた。表向きはロシアに制裁を課してきた米政権だが、中枢にいる商務長官がその制裁を骨抜きにするような行為をとっていたというわけ。
    パラダイス文書最大の流出元は法律事務所アップルビー。バミューダ島やケイマン諸島を中心に世界10か所に拠点を構える。アップルビーは法を犯してはおらず、違法なハッキングによって顧客のプライバシーが侵害されたことに抗議しているが、「公益性があり報道は適法」「記者の権利は守られる」と西側主要国では認められている。
    普通の人がタックスヘイブンを使って税金を安くしようと思ったら、会社をつくったり銀行口座を持ったり、専門家に相談したりして、手数料が回避する税金に対して高くつく。大企業や資産家は何億円も税金を払うため、手数料が何千万円かかっても割に合う。しかし、企業や投資家も公共サービスの恩恵を受けているのだから、実態に合った租税義務をうべき。タダノリは問題がある。
    アップルビーにもコンプライアンス部があり、マネーロンダリングやテロ組織、麻薬、汚職、犯罪、児童ポルノなどにタックスヘイブンが利用される恐れのある案件は認められない。しかし、実際には倫理より利益が優先され、ブラックダイヤモンドに関する案件が通ったりしている。
    秘匿性はアップルビーの顧客が重要視する点なので、政府から情報提供を求められた時には、自発的に応じるのではなく、裁判所から法的な「開示命令」を出してもらったうえでそれに従う形をとる。
    アップルビーはもともとは普通の法律事務所で、1865年の創業当時、バミューダはタックスヘイブンではなかった。しかし輸入関税で税収を得る代わりに法人税がゼロ、かつニューヨークとワシントンに近い立地に、この30年で海外企業が一気に進出、国際金融ビジネスが急成長し、アップルビーも一気に世界各地へと勢力を拡大した。アップルビーのパンフレットには「世界中の個人富裕層のうち、ほぼ半分はたった2つの国に住んでいます。それは米国と日本です。」とある。富裕層をさらに裕福にするしわ寄せは誰に来るのか。バミューダの一人当たりGDPは世界トップレベルの1030万円。(2008年)しかし、失業率は6~9%と高く、貧富の差が激しい。物価が高く、マクドナルドのハンバーガーセットは1210円、パン一斤660円、家賃は3LDKマンションなら月55万円。年金は5万5千円なのでとても暮らせない、多くの人が仕事を2つ以上かけもちして生活している。
    国際NGO「税公正ネットワーク」創設者ジョン・クリステンは、タックヘイブンの抱える3つの構造的な問題について、
    ①巨大な金融業を抱えることにより、不動産の価格上昇が起こりやすい
    ②金融業に依存するため、農業や製造業が育たず、普通の人には配送やレストラン従業員などの低賃金の仕事しかない
    ③富裕層を優遇することによって税収が不足し、その埋め合わせで消費税や付加価値税が高くなる
    これらのことが貧富の差を広げ、社会の分断をさらに大きくする
    世界最貧国のひとつであるブルキナファソは地元民が鉛の鉱脈を発見したのち、外資に土地を買われ、貴重な資源が一部の企業の利益に変わっている。アフリカは国際支援で受け取る金額の2倍もの金額を不正な資金流出によって失っていると言われる。先進国からアフリカへの支援が叫ばれる一方、逆の資金の流れがアフリカの貧困解決を阻んでいる。
    先進国は支援などしなくても収奪をやめればよい。
    インド洋のモーリシャスは1968年当時は労働人口の半分がサトウキビ畑で働くモノカルチャー経済国だった。もともとはフランス領時代に奴隷によるサトウキビ生産が始まり作家ベルナルダン・サン・ピエールは、「コーヒーと砂糖がヨーロッパに幸福をもたらしたかどうかはわからないが、アフリカ大陸に不幸をもたらしたことはあきらかだ」と記した。19世紀には製糖工場が300あったが、現在は4つだけ。農民の一人は、「産業の多様化は良いが、金融はぜい弱だ。農業ほど確実なものはないんだ」と話す。
    地中海の島国マルタで主にブログで記事を書いていたジャーナリストのダフネ・カルアナガリチアさんは車に仕掛けられた爆弾で即死した。彼女はパナマ文書をもとにマルタ政府首脳らの疑惑を追及し、「悪党だらけ。状況は絶望的」と書き込んだ直後にレンタカーで自宅を出、爆死した。葬儀に訪れたシクルーナ大司教は、「記者の皆さん、人々の目、耳、口となる使命を続けて下さい」と訴えた。
    米国では、選出された議員が大半の時間を資金運用にあてていることが公然の秘密となっている。
    世論が弱く調査報道が薄い国では問題は放置されがちとなる。
    続きを読む

    投稿日:2020.01.14

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