【感想】スタートボタンを押してください ゲームSF傑作選

ケン・リュウ, 桜坂洋, アンディ・ウィアー, デヴィッド・バー・カートリー, ホリー・ブラック, チャールズ・ユウ, チャーリー・ジェーン・アンダース, ダニエル・H・ウィルソン, ミッキー・ニールソン, ショーナン・マグワイア, ヒュー・ハウイー, コリイ・ドクトロウ, アーネスト・クライン, D・H・ウィルソン, J・J・アダムズ, 中原尚哉, 古沢嘉通 / 東京創元社
(40件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
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ブクログレビュー

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  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    ビデオゲームをテーマにした、現代SFを牽引する豪華執筆陣によるオリジナルSFアンソロジー。全12編を収録。

    「リスポーン」「救助よろ」「1アップ」「NPC」「猫の王権」「神モード」「リコイル!」「サバイバルホラー」「キャラクター選択」「ツウォリア」「アンダのゲーム」「時計仕掛けの兵隊」を収録。

    創元文庫がときどき出すSF系アンソロジー。本書は『スタートボタンを押してください (ゲームSF傑作選) 』というタイトルである。これを見て手に取った人なら、間違いなく楽しめる傑作ぞろい。書いているのはもちろんSFで著名な作者ばかりだ(……といっても自分は3人くらいしか知らなかったのだが^^;)。

    「救助よろ」はMMOのあるあるを思わせる体験者ならニヤリとしてしまう面白さ。ネットスラングなどをうまく日本語に訳してくれた。
    「リコイル!」はそのまま映像化できそうな、スリル満点のアクション佳作。オチがゲーム小説らしくて良き。
    「ツウォリア」は「火星の人」のアンディ・ウィアーなので期待して読んだが、見事に期待にこたえてくれた。既視感のあるSF設定ながら、ユーモアと夢のあるこの作者らしい落とし方。
    「時計仕掛けの兵隊」はケン・リュウらしい作風が光る、さすがの安定感。
    個人的に一番のお気に入りの「1アップ」は往年のテキストアドベンチャーをリスペクトしまくった、好きな人にはたまらない快作。あの時代のアドベンチャーは懐かしいだけでなく今でも楽しめるんだよなぁ。

    全体を通してクオリティが高いのはもちろんそれを選んでいるからだが、ゲームとSFの親和性が高いことと、ゲームSFというジャンルがあるとすれば、人間の根源的な何かを探求していくのにこれほどふさわしい小説の分野はないと思わせてくれたことが大きな収穫。自分自身ファミコン世代で今もってゲーマー(ゲームファン)なので、最高に楽しめた一冊だった。第二弾、三弾と出してくれないかな~。
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    投稿日:2023.12.17

  • chie_e

    chie_e

    23/07/17読了
    救助よろ/デヴィッド・バー・カートリー、サバイバルホラー/ショーナン・マグワイア、キャラクター選択/ヒュー・ハウイー、あたりが好みでした

    投稿日:2023.07.17

  • 司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)

    『紙の動物園』のケン・リュウ、『火星の人』のアンディ・ウィアー、『All You Need Is Kill』の桜坂洋ら、現代SFを牽引する豪華執筆陣が集結。ヒューゴー賞・ネビュラ賞・星雲賞受賞作家たちが、急激な進化を続けるメディアの可能性に挑む、傑作オリジナルSFアンソロジー! 全作が書籍初収録。序文=アーネスト・クライン(『ゲームウォーズ』) 続きを読む

    投稿日:2023.05.07

  • きりしき

    きりしき

    リスポーン」行動心理学によれば人間の行動は大きくレスポンポンデント条件付けとオペラント条件付けに分けられる、簡単に言うと環境に対して行動が発現する。それの極端な形が”ゲーム”である、というところからアイデアとったのかな?と思われる短編。ゲームの中でプレイヤーはどんな人にでもなれる。でも所詮それだって、条件付けの産物にすぎない。じゃあ、俺は俺のままでもなんだってできる。そういうことだろ?みたいな話。ゲームSFの懐の深さを見せつける読みやすい良作。

    「救助よろ」ケン・リュウは別格なので置いておくとしたら、これが一番面白かった。最初から現社会と異世界の合いの子みたいな世界観で、まあ、SFなんだしこういうこともあるかなぁ、と思いながら読んでいたら意外な仕掛け。ゲームみたいな世界だったらなあ、とは誰しも一度は思うこと(多分)。でもラストのオチはお約束みたいでイマイチだったかな。そんなに悪い世界とも思えないし……。

    「1アップ」ゲーム好きが、ゲーム好きならではの発想や推理力から、大きな敵に打ち勝つという王道ながら感動のストーリー。レディプレイヤーワンに求めてたのはこれだったのに……(その話は今は関係ないでしょ)。

    「猫の王権」認知症とゲームの未来について、といった解説がなされていたけど、着想はゲームばかりでコミュニケーションを取ってくれなくなってしまった隣人からなのでは? ある意味どこにでもある話なのだと思う。ラストの解釈は難しいんだけど、そういう方向から考えたら、「ゲームは確かにコミュニケーションを奪う、でもそこにはそれだけの魔力も確かに存在している」ってことかな?

    「神モード」セカイ系! 崩壊していくセカイ、そこに残されるきみとぼく。よくあるストーリーだけど、それでも好きなものは好き。コメント以上。

    「リコイル!」MGSが好きなんだろうなあと思いました。

    「キャラクター選択」ゲームがスカウトの役割を果たす、というアイデアは「The video game with no name」にもありましたね。こっちはちょっとひねってある。ネットの感想で「なぜわざわざガーデニングの上手い人をとるのか、オチが雑」というのを見たけど、多分「戦うことを求められる場においても人々の幸せを求めて違った選択肢を見つけられる人こそが平和を守るためには必要」。泣ける。

    「時計仕掛けの兵隊」ゲームを進めるに連れて、ゲーム世界と作中世界、そして現実世界までもが交錯していく様は、まさに”ナラティブ”なゲーム体験。抑圧され、知ることを許されず、自己選択を制限されることの苦しみ、それに不自由な身でありながらも少しでも抵抗しようと試みるのは、何よりもそれが自分自身の問題であるから。「無知であることと、知ろうとしないことは、別物である」これはアレックスに向けた、そして私たち読者に向けたメッセージ。その読後の余韻の重さにしびれる。
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    投稿日:2022.12.20

  • daisuket

    daisuket

    TVゲームをモチーフにした短編SFアンソロジー。本作で初めて日本語訳される方も含め新進のSF作家の作品をまとめて読めるお得な本。いくつかの作品で感じたのはゲームを題材に、ゲーム的な解釈であればかなり殺伐とした雰囲気や残酷な展開もわりとマイルドに感じてしまえるということの面白さとある種の怖さ。ゲーム的な発想や物事の解釈はとっくにゲームの外にも飛び出していて私たちの発想に染み付いている。それは良くも悪くもなんだろうけど、ゲームはそんなことはお構いなしに面白さで突き進んでしまえるんですよね。続きを読む

    投稿日:2022.12.04

  • og

    og

    このレビューはネタバレを含みます

    もともとビデオゲームを題材にした26篇が収録されていた米国のアンソロジーから、12篇を邦訳した日本版再編集アンソロジー。全体的に読みやすい文体で短めの短編作品が多い。ゲームSF縛りだけど全く飽きず。

    「リスポーン」★★★☆☆
    - 本アンソロジー唯一の日本人作家、桜坂洋。ラノベ出身なだけあってサラッと読みやすい。死ぬと近くにいる誰かに乗り移って、死ねない男。

    「救助よろ」★★☆☆☆
    - ゲームにのめり込んだ元カレ、デボンと連絡を取るためにメグはそのゲームに参加してみると「助けてくれ」という連絡。彼女は元カレのためにゲームを勝ち進み、彼氏を救出するが、それは毎回記憶(記録)をリセットして繰り返した〇千回目だった。彼氏は本来一度しか入手できない最強のアイテムをいくつも手に入れるために元カノを利用していた。
    - さらさらと読みやすいけど。今までに読んだことありそうな、絶望系のオチ。

    「1アップ」★★★★★
    - SFではなかったけど、ハラハラドキドキ系で面白かった。
    - ゲームの中でしか会ったことがなかった仲間のソリーが死亡、生前から絶対葬儀に来てくれと言われていた。初めて会う他の仲間3人と参加。ソリーの寝室に行くと自作のテキストアドベンチャーゲームがあった。ゲームを進めると継母がソリーを部屋に閉じ込め、殺そうとしていたことがわかる。ソリーは仮死状態になる毒物を自ら購入し、死んだふりをして部屋から出る作戦を決行。酸素が残っている5時間以内に墓を掘り起こし、棺を開けてもらうよう友達に命を託していた。

    「NPC」★★☆☆☆
    - ゲーム内の脇役キャラが昇格して浮かれたり、沈んだりするライトな短編。

    「猫の王権」★★★☆☆
    - 認知症患者であるシェアリーのリハビリのためにあるゲーム(猫の王権)を勧められる。同性パートナーのジュディの不安かつ寂しそうな様子が緻密に描かれている。
    - 物語として何かが起きそうなところで終わってしまうので、やや物足りなかったけど、なかなか読める。

    「神モード」★★★★☆
    - 大学生のサラと僕。サラがある時電車で転倒し、頭を打ち付ける。その日を境に世界が少しずつ消滅していく。ふと目が覚めると自分たちは老夫婦でベッドに横たわっていた。
    - すべてがハッキリ説明されてないので正しく理解できているかわからないけど、その夢オチのようなエンディングでも嫌な気持ちにならない満足感のある内容。ストーリーだけでなく文体もよい。

    「リコイル!」★★★★☆
    - ゲームのテスターの仕事をしているジミーが夜遅くにオフィスにいると、何者かがビルに侵入する。犯人から逃げながら、武器を使って応戦し、まるでFPSゲームの中のミッションみたいにスリリングな展開だと思ったら、本当にFPSゲームでした、という若干夢オチ的な終わり方ではあるけど、直接神経インターフェースを使った体験型ゲームという設定も面白いし、最終的に現実世界がまたゲーム世界のような「今どっち??」と混乱させる終わり方も楽しい。

    「サバイバルホラー」★★★☆☆
    - あるゲームをインストールしたせいで命がけのパズルゲームにチャレンジさせられる、という話だけど、そもそもこのプレイヤーがいる世界自体がファンタジーで魔法的なものが使える設定。半分ジョークSF的なもの。(長編のスピンオフ作品らしい)

    「キャラクター選択」★★★★☆
    - 子育ての合間にFPSゲームをプレイするわたし。夫曰く、そのゲームは国防総省開発で、優秀なプレイヤーは国防総省にスカウトされるらしい。わたしはそのゲームの本来の目的はそっちのけで、八百屋の裏に畑を作ったり、ラクガキを消したりしていたら、電話番号らしきものが現れ、かけてみると国防総省に繋がり、スカウトされた…。
    - SF色はほぼないけど、日常と非日常の混ざり方が面白い。

    「ツウォリア」★★★☆☆
    - エンジニアである自分が30年以上前に走らせたまま止め忘れていたプログラムが勝手に増幅し、とてつもないAIに成長して自分の元に帰ってきた、というジョーク系SFショートショート。「火星の人」の著者アンディ・ウィアーによる作品。

    「アンダのゲーム」★★★☆☆
    - 勧誘者ライザから、ゲームの中でミッションをクリアするとリアルマネーが振り込まれるという仕事に誘われ、金を稼ぎ始めたアンダ。
    - 長い割に物語自体はどこにも着地しない感じがちょっと物足りなかった。肥満の女子がリアルの世界でダイエットを頑張るあたりはなんかよかった。
    - アンダ:ゲーマー。リアルでは肥満体型な女子。
    - ライザ:勧誘者。ファーレンハイト・クランのリーダー。
    - ルーシー:軍曹

    「時計仕掛けの兵隊」★★★★☆
    - 新しい設定。アレックスは捕まえた賞金首のライダーを逃すところから始まり、その後、回想シーンへ。アレックスはライダーの父親(政治家)の依頼でライダーを捕まえ、宇宙船で輸送していた。その間、ライダーはPCでテキストアドベンチャーゲームを制作しており、アレックスはそのゲームをプレイすることで、ライダーの過去を知る。※ライダーは幼くして亡くなったが、選挙期間中の父親は息子を見舞う暇がなかったため、死んだことを隠すために自動人形を作っていた。
    - ケン・リュウらしい、後味が悪いけど美しい文章。
    - アレックス:女性のバウンティハンター
    - シェヘラザード:ライダー(賞金首)

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    投稿日:2022.04.05

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