【感想】アマデウスの残り灯 無欲の不死者と退屈な悪神

志賀龍亮, 白味噌 / オーバーラップ文庫
(1件のレビュー)

総合評価:

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  • gaia-kanata

    gaia-kanata

    このレビューはネタバレを含みます

    自称「神」の美少女と不死の青年が旅先の人々に影響を与えていく、4つの短編をまとめたオムニバス風道中記です。時雨沢恵一『キノの旅』に近い構成です。

    タイトルの「アマデウス」はモーツァルトの名前として有名な「神に愛されている」というラテン語由来の言葉ですが、主人公のカインはヨグに愛されているというより、玩具として、財布として、武器の試し斬り相手として扱われています。カインは人助けのために旅をしており、彼を不死者にした謎の少女ヨグはカインが苦労するのを見て楽しむために同行しています。

    ○キャラクター設定が面白いです。出兵した恋人を待つ女性、クライムファイターの警官、女性型の給仕ロボットが使える謎の資産家、そして主人公の過去。これは人を救う旅の物語です。出会ういずれもが、矛盾を持ち合わせていたり、救いなどなさそうな存在です。カインが彼らと出会うことで、彼らの何に影響を与えるのか、読んでいて非常に興味深いです。

    ●キャラクターが興味深いと言いましたが、同時にキャラクター描写が中途半端で、この作品の強みを壊しているように感じました。恋人が戦争から帰るのを一途に待ち続けた女性が、相手の死の真実を受け入れた翌日からさっそく主人公に移り気を抱いたり、犯罪者と戦う警官が改心して罪を認めてしまったりします。自称「神」であり、人を不死身にする能力を持つヨグですが、最後まで正体不明です。世界観に対する掘り下げが不十分で宗教観も語られないため、本当に神なのか、それとも異能力をもったただの人間なのかもわかりません。

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    投稿日:2018.02.24

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