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フェルディナント・フォン・シーラッハ, 酒寄進一 / 東京創元社 (38件のレビュー)
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総合評価:
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ぼじょまる
このレビューはネタバレを含みます
・あらすじ ドイツのベルリンが舞台。 実業家の男がホテルのスイートルームで殺害された刑事事件を新米弁護士のカスパーが担当することになった。 加害者は自ら出頭してきたファブリツィオ•コリーニ。 カスパーにとって父親同然だった男を殺害した加害者を弁護するにあたり、事件を起こした動機を調査することになるが、被害者と加害者の関係、被害者の知られざる真実が発覚する。 ・感想 映画がすごく好きだったので原作読んでみたいと思ってたところ本まつりで見つけたので購入。 映画の方はよりやっぱりドラマティックになるように改変してるなーって思った。 原作は淡々とした文章で結構印象が変わる。 1番印象が違ったのがマッティンガーで、映画版だとよりドラマティックにするために割食わされた感じがした。 原作も映画もどちらも面白かった。 著者の経歴を知ると読了後より色々考えさせられるし、著者の他の作品も読んでみたい。
投稿日:2024.03.03
しょう
英小説は邦訳が読みにくくて苦手意識を持っているのですが、ドイツ小説はそうでもありませんでした。やはり言語にも相性はあるんですね。 帯のとおりのあらすじです。刑事を担当する新米弁護士が一番最初に弁護人…となったのは殺人事件の被疑者(被告人、コリーニ)でしたが、その被害者は実は親友の祖父だった、と。これだけ読んで、てっきり刑事弁護人の立場からくる心の葛藤を描いたものだと思っていました(それにしては政治を動かしたとは…程度で)。しかし、読み進めるにつれ、それだけではないことに気が付きました。コリーニが頑なに犯行の動機を口にしない理由が何だったのか、法廷の弁論で漸く明らかにされます。まるで自身も傍聴人のように弁論に現れるストーリーにのめりこんでしまいました。 とりあえず、知識不足を感じたドイツ史を勉強しておきます。続きを読む
投稿日:2024.02.10
fukayanegi
2013年日本刊行、シーラッハの初長編作品とのこと。 『禁忌』は読んだことあったけど、あれよりもこちらの方が前だったとは。 やっぱりこの文体は好き。 どこか不穏でぴりっとした緊迫感が終始漂う。 決して奇をてらった表現や独特な言い回しがあるわけではないのだが、何がどうしてこの著者特有の雰囲気が生まれているのだ。 すごく物語世界に没入させられる。 訳者、酒寄さんの力量、推して知るべし。 ある夜ホテルで一人の大物実業家ハンス・マイヤーが元自動車組立工の年老いたイタリア人コリーニに殺される。 そこには強烈なまでの憎しみがあった。 殺害後自ら警察を呼ぶが、その後は黙して何も語らない。 新米弁護士のライネンは、コリーニを弁護することを決意するが、その後殺された実業家が幼なじみの祖父であることがわかり心が揺れる。 だが、原告側弁護士であり、この道の大先輩であるマッティンガーに「依頼人への責任」を諭され、全力を尽くすことに。 最終的に明らかになる真実は、その題材とミステリを絡ませる趣向は数多くあるため、そこまで意外ではないのだが、著者自身の家系の来歴やハンスの孫ヨハナが語る「わたし、すべてを背負っていかないといけないのかしら?」の名言、現実のドイツ政界をも動かした糾弾姿勢でくるまれたこの物語は、その月並みとすら思える展開に比して奥深い。 今年『珈琲と煙草』、『神』と2作も出版されている著者。 改めてミステリベスト10を賑わすことになるのか。
投稿日:2023.11.04
xan8823
故殺:一時的な激情によって殺意を生じ、人を殺すこと。 謀殺:あらかじめ計画して、人を殺すこと。 故殺と謀殺で、判決が変わる。 それはわかった。 果たして、この犯人は、どちらなのか。 なによりも、殺人にいたった経緯を言わない。 そんな事件の被告側の弁護人となる新人弁護士。 引き受けたはいいものの、後から被害者が、昔可愛がってもらった人物だと知る。 断ることも考えた。 けれど、受ける事にした。多くの葛藤はあった。 公判は進む。 なにかがひっかかっているが、それが何なのかわからないまま。 ある日、突然、何かに気づく。 そこから一気に「なぜ、殺したのか」を理解した新人弁護士。 戦犯が、守られるような法律が、戦犯によって立憲され、誰にも吟味されることなく行使されていた事実。 それはあまりにも衝撃的だった。 そんなことがまかり通っていた事実。 殺人行為に時効が適応される。 彼の人生は、戦犯を告発する為にあった。 あと一歩の所で、時効と、紙切れ一枚で通知がきたら、 それは、どれほどの、怒りと悲しみと絶望が襲い掛かってくるのだろうか。 実行にうつしたのが今だったのはなぜか。 その答えは、胸をかきむしられるほどの感情が伝わってきて涙こらえきれなかった。 戦争は、人を狂わせる。 人は、歴史から学ばなければならない。 おなじ過ちを繰り返してはいけない。 戦争は 謀殺だ。 この物語が、ドイツの法律を変えるきっかけになったというのは、ドイツという国が、過去と真正面から向き合っているという事なのだろう。
投稿日:2023.04.28
じゅう
ドイツの作家「フェルディナント・フォン・シーラッハ」の長篇ミステリ作品『コリーニ事件(原題:Der Fall Collini)』を読みました。 『罪悪』に続き、「フェルディナント・フォン・シーラッハ…」の作品です。 -----story------------- 新米弁護士の「ライネン」は大金持ちの実業家を殺した男の国選弁護人を買ってでた。 だが、被疑者はどうしても動機を話そうとしない。 さらに「ライネン」は被害者が少年時代の親友の祖父だと知る。 ──公職と私情の狭間で苦悩する「ライネン」と、被害者遺族の依頼で裁判に臨む辣腕弁護士が法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。 犯人を凶行に駆り立てた秘めた想い。 そして、ドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”とは。 刑事事件弁護士が研ぎ澄まされた筆で描く圧巻の法廷劇。 訳者あとがき=「酒寄進一」 解説=「瀧井朝世」 *第4位『週刊文春 2013年ミステリーベスト10』海外編 *第8位『ミステリが読みたい!2014年版』海外編 *第16位『このミステリーがすごい!2014年版』海外編 ----------------------- 2011年(平成23年)に刊行された「フェルディナント・フォン・シーラッハ」初の長篇作品… といっても200ページくらいなので、短めの長篇ですかね、、、 ボリュームが、ちょっと物足りない感じもしますが… 気合いを入れなくても一気に読めるので、これはこれで読みやすかったですね。 2001年5月ベルリン、67歳のイタリア人「ファブリツィオ・アリア・コリーニ」が殺人容疑で逮捕された… 被害者は大金持ちの実業家「ジャン=バプティスト(ハンス)・マイヤー」で、新米弁護士の「カスパー・ライネン」は気軽に国選弁護人を買ってでてしまう、、、 だが、「コリーニ」はどうしても殺害動機を話そうとしない… さらに「ライネン」は被害者が少年時代の親友の祖父であることを知り、公職と私情の狭間で苦悩する。 そんな状況下で公判は始まり「ライネン」と被害者遺族の依頼で公訴参加代理人になり裁判に臨む辣腕弁護士「リヒャルト・マッティンガー」は、法廷で緊迫の攻防戦を繰り広げることに… 「コリーニ」を凶行に駆りたてた秘めた想い、そして、ドイツで本当にあった驚くべき“法律の落とし穴”とは、、、 地味な感じのリーガルサスペンスですが、「シーラッハ」らしい研ぎ澄まされ淡々とした筆致が物語にリアリティを与え、犯行動機が徐々に明らかになる中盤から終盤は、どんどん先を読みたくなるような展開でしたね。 そして、第二次世界大戦下のイタリアで起こった悲劇… パルチザンに対するナチスの非情な措置や、戦後のドイツ法改正によりナチス戦犯の犯罪が時効扱いとなった歴史的な問題を告発するような作品でした、、、 「コリーニ」がずっと心に抱き続けていたのは、姉の姿だったんでしょうね… 読み進めるうちに、残忍な殺人者が、血肉の通った人間だと気付かされ、印象が360℃変わってしまう展開、最後の写真のシーンが印象に残りましたね。 以下、主な登場人物です。 「ファブリツィオ・アリア・コリーニ」 元自動車組立工 「カスパー・ライネン」 弁護士 「ジャン=バプティスト(ハンス)・マイヤー」 マイヤー機械工業元代表取締役 「ヨハナ・マイヤー」 ハンス・マイヤーの孫 「フィリップ・マイヤー」 ヨハナの弟 「ケーラー」 捜査刑事 「ライマース」 上席検察官 「リヒャルト・マッティンガー」 弁護士 「ホルガー・バウマン」 マイヤー機械工業法律顧問 「ヴァーゲンシュテット」 法医学者続きを読む
投稿日:2023.03.25
黒い☆安息日
中編ほどのページ数で、わずかな登場人物。それでいて、ちょっと何かを触れるとネタバレになりそうなくらいの緊張感を含んだ良質のミステリー。 これは素晴らしい!しかもこの本が売れたことで、本国ドイツでは現実が動かされ始めているという。 こんな本、日本では絶対出ないだろうなぁ。書ける作家は要ると思うが、大手出版社は絶対躊躇する(統一教会がらみですらもあの朝日が汚れるんやで)やろし、まして現実が動くなんて根性座った政治家も法律家もちょっと見当たらへんなぁ。
投稿日:2022.08.25
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