【感想】小さな黒い箱 ディック短篇傑作選

フィリップ K ディック, 大森 望 / ハヤカワ文庫SF
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • わん

    わん

    このレビューはネタバレを含みます

    小さな黒い箱
    「アンドロイドは…」に出てくるエンパシーボックスが宗教として駆け出しの頃の話。まだ信者も少なく、小さなカルトでしか無いが、「アンドロイドは…」では太陽系全域に信者を持つ大宗教になっている(キリスト教かよ)。
    「アンドロイドは…」では謎の老人は売れない役者だと暴かれていたが(メディアの嘘かもしれんが)、それよりも着目すべきは箱を送りつけてる組織だろう。
    共感中の怪我まで「共感」できる道具を家庭用品から作れるとあるが、これはどんな宗教への入信も自分の家からできますよって感じのメタファーかな?

    輪廻の車
    やったんだろ?17歳の子と。やらせてもらったんだろ?抗生物質だけじゃなくて、やらせてもらったんだろ?このスケベ!!

    ラウタヴァーラ事件
    臨死体験中に見る悪夢ってマジ最悪だね。怖すぎだし救いもないし。かわいそう。

    待機員
    人が真面目に生きてない世界で、大事な事は機械が決めて人はそれに従う。そうなれば優秀な人材は機械から離れた位置で仕事をする。だからバックアップ大統領選をアホの田舎者に選出したのかな?優秀な人材をバックアップとして持っているのは勿体無いもんね。

    ラグランド・パークをどうする?
    歌った事が現実になる能力、ドラえもんの「ウソ800」に少し似てるけど、それよりすごい。
    神の力にも匹敵する力だけど、それほどの力を1人の人間が握るのは怖いね。自分の能力に自覚してたら本当に神になれたのに、自己をもっと上手く認識研究する事ができたらよかったのにね。

    聖なる戦い
    ドラえもんの「バイバイン」がかけられたガムが自販機で売られる。それに気づいたスパコンが核攻撃を試みる、事に気づいた人間が止める。止めてる間に攻撃の根拠をスパコンに聞くが要領を得ない←ココが人類敗北の原因やろ。スパコンとのコミュニケーションをしっかりしとけば負けなかった。何事にもおいてもコミュニケーションを怠ると負けると言う教訓。

    運のないゲーム
    マッチポンプ詐欺師サーカス団。小さいロボに働かせた方が生産性高くないんか?罠で捕まえたロボは回収すんのかな?

    傍観者
    好きに生きさせてくれ、人に迷惑かけない限り。生き方を強制しないで。学校の校則とかも生き方の強制だよね。

    ジェイムズPクロウ
    人だけの社会になったらまたどうせ戦争するんでしょ?共生できないのが人間っぽいよね。

    水蜘蛛計画
    面白い。SF作家が予知能力者だと誤解して誘拐するとか。しかも後々作家はみんな処刑されるのかいな。作者自身の作品名も出てくるし、少し複雑だった。過去を変えたせいで今が変わったが、変わったのは人の記憶だけなのかな?最後のメモはオークションでフィリップが落札して、この話を執筆したって感じかな?

    時間飛行士へのささやかな贈り物
    永遠の命なんてささやかでもなんでもねえ!つらすぎる!

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    投稿日:2023.07.13

  • ま鴨

    ま鴨

    不肖鴨、毎年春先はいつもディックを読んでいるような気がするヽ( ´ー`)ノ

    数多あるディックの短編の中でも、政治/社会/宗教をテーマにした作品を集めた短編集・・・と、なかなか重たそうですが、実際に読んでみるとメッセージ性が明快な作品が多く、後期のディック作品にしては比較的わかりやすい印象です。
    テーマの重さを中和するためか、ユーモラスで軽妙な筆致で描かれている作品が多いことも、特徴の一つ。実は守備範囲の広い”通俗”作家だったディックの一面が垣間見れます。登場人物がどいつもこいつも頭のネジが一本抜けている感じなのも、親近感アップに一役買ってますね。

    しかし、ラストの一作、「時間飛行士へのささやかな贈物」、これは心底重い・・・。
    重さの理由が、外的要因ではなく、ただひたすらに主人公の内的要因によるという救いようのなさが、また極めてディック的。生身のディック自身がリアルに感じていた、当時のアメリカ社会の閉塞感が反映されているのでしょうか。この重たさがねぇ、ディック作品を読み慣れると癖になっちゃうんですよねー。
    ディックの短編集はまだまだたくさんありますので、少しづつ読み進めたいと思います。春先に。
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    投稿日:2022.04.05

  • savatea

    savatea

    『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の原型作を含む11篇の、SF小説の短編集。

    個人的には6作品目の『聖なる戦い』が一番面白くて怖かった。
    SFとホラーは紙一重というのを体現しているような作品だったと思う。

    全作品を通して、「よくこんな設定を思いつくなあ」という舞台設定でありながら、現実をよく反映していたり、未来に起こってしまうかもしれないと思わせたりしてくれるところが好きだった。
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    投稿日:2021.04.10

  • ますく555

    ますく555

    このレビューはネタバレを含みます

    今回はじめて読んだフィリップ・K・ディックなのですが、彼の作品には映画『ブレードランナー』しか触れたことがなく、ゆえにディックはもっとハードボイルドなSF作家かとイメージしていました。どっこい、その作風にはユーモアとウイットがふんだんに感じられました。

    SF作家をプレコグ(予知能力者)とみなす短編があって、舞台となる未来世界から時間旅行をした未来人が1950年代のSF作家の集まりにまじるのだけれど、レイ・ブラッドベリがでてきたり、アシモフを探したり、そこでの主要人物で未来に連れ去られるのが実在のSF作家だったり、ずいぶんくだけたことをやってるなと思いました。ノリはもはや同人誌です。

    SF作家をプレコグとみる、なんていうのは、たとえば最近、IT企業が未来予測のためにSF作家を雇うなんてのが実際、現実にあったんじゃなかったでしたっけ? となると、ディックのイマジネーションと論理力、それら自体がまさにプレコグ的であり、自分でそれに気付いて「SF作家=プレコグ短編」を書いたようなもので、なんだかおもしろい。自己言及性が生じていますから。

    またモノレール交通システムがよくでてきます。1950年代のアルヴェーグ式モノレール(ゴムタイヤモノレール)の登場で、それ以降はモノレール交通システムが普及していくと見られていたようですから、この近くの年代のSF小説作品での未来世界ではモノレールが走っていたりするのでしょう。アニメ化や実写映画化された漫画『映像研には手を出すな!』の舞台となる未来世界でモノレール交通システムが普及しているのは、そんな昔のSFへのオマージュなんだなあと納得しました。昔の時代に思い描かれていた未来世界の断片的実現を、創作世界で何十年もたった今やっているのでした。オマージュは、愛ですね。

    特に好みの作品を挙げるとすると、次の二つになります。「ラウタヴァーラ事件」と「時間飛行士へのささやかな贈物」。二つとも、生から死への直線的な道理からはずれている作品です。前者はエイリアンによる蘇生が呼んだ過去の追体験が物語られていますし、後者は閉じた時間の輪のなかにいる者たちが自分たちの葬儀に参列するなどの奇妙な時間の送り方が描かれている。こういった死生観みたいなものを、ほとんど考えたことのないような分解の仕方をして再構築して物語ってみせるようなのものは、どうやら僕はおもしろいと感じやすいのかもしれません。不意をつかれるのに似てもいます。

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    投稿日:2021.02.07

  • diver0620

    diver0620

    2023/10/3再読
    読み返してみて今回印象深いのは「聖なる争い」。
    大統領の役割は情報分析し判断するコンピューターシステムが代替している。どうしてそのような判断が下されたかは人間側はわからない。敵が攻めてきているとの判断がくだされ一気に戦争状態になってしまうのを止めようとするFBI とコンピューターエンジニア。まるで現代の生成AIによる問題を予言しているかのようではないですか。この短編集にはある物をとんでもない物に代替させその存在価値を突き詰めて考えさせる作品が多く集められています。でもよく考えると今所属している社会にとっての価値であって、その社会そのものが正しいものかはわからないし保証もされていません。たまたま生まれたとろこの国であったり組織体での価値があるかないかなんてそんなに執着すべきものなのか?とも思えてきます。ディックの異常な思考から生み出された作品はこのような歪みを拡大して見せてくれます。価値や考え方の多様性をうたっておきながらある少数の考えにたやすく誘導されそれが大多数の考えであり、スタンダードだと思い込んでしまいがちな自分の傾向に楔を打ち込まれます。情報統制、思想統制は恐ろしいと思っていながら自らが進んで統制されてしまいがち。これにAIが生成する偽情報も加わって何が本物かわからない現代はまさにディック的悪夢が現実化した世界。恐ろしいではないですか。情報を鵜呑みにせず自分で検証できる思考力と想像力をつけていく事がこれからはますます大事だと痛感します。

    2018/7/4
    「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の原型となった表題作。宗教的な話だったのか。でも、共感ボックスというガジェットを通じてしか他人と通じ合うことができないという、ある意味強烈な皮肉でまさに現代を描写していないか?人間がディックのいうアンドロイド化しているのか?そら恐ろしくなる短編集。
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    投稿日:2018.07.14

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