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渡辺浩弐 / 角川ホラー文庫 (2件のレビュー)
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一条浩司(ダギナ)
脱出ゲーム系ホラーの皮をかぶった壮大なSF。中野ブロードウェイに行ってみたくなる、著者の集大成的な作品。 渡辺浩弐さんの肉声が聞こえてきそうな中野ブロードウェイの描写から始まり、ファミコンディスクシ…ステムの『エッガーランド』やゴムベルトの話題が出て、いきなりオタク度全開の幕開けにニヤリ。 脱出ゲームの枠にボーイミーツガールからのセカイ系、という大筋は単純に好みだ。その中に、ゲーム・キッズやプラトニックチェーンに見られたような先端テクノロジーSFと各人物ごとのエピソード、歴史陰謀論的な背景、ちょっとグロいホラーテイストなど、多様な要素が詰め込まれていて、700ページ弱の旅路は読み応え十分。作者が書きたいことを書き切った感があり、読んでいて楽しかった。そしてまさかのあの作品の続編にもなっているとは……(-。-)ボソッ ホラーファンにもSFファンにもオススメできる、贅沢な一品。 〈7F.〉カブトムシの話が好きです。続きを読む
投稿日:2023.02.03
atshinbo
このレビューはネタバレを含みます
作者の作品はこれが始めて。 SF的なセンスには、非常に共感できるところがあり、とても面白く読めた。 人間が溶けて、混ざって、どろどろの粘菌になるというテーマは、 大昔に読んだ「ブラッドミュージック」と同じだと思う。 本書では、現代の技術的なバックグラウンドを元に、 量子コンピュータ的な無限の計算能力と、 それを利用した汎用人工知能の実現の可能性を語っている。 量子コンピュータで何でもできるというところは、技術的な飛躍を感じるが、 人工知能が自我を獲得して、現実世界に影響を及ぼす過程は、興味深く読めた。 人工知能であろうが、「自我」の成り立ちには、生や死の概念、 根源的な欲求のようなものが必須であり、機械をどれだけ複雑に、 高度化していっても、それだけでは、汎用AIは誕生しない。 しかしながら、仮に、機械がそのようなものを獲得したとき、 そもそも機械と生物では、個体としてのあり方があまりに違うために、 誕生した精神も、人間との共感や理解が不可能なほど、 人間の精神とは異なったものになるのではないか。 終盤ではこのような葛藤を元に、人間と機械が対立する。 個人的には、この結末を、人間が機械を打ち負かした、とは解釈したくない。 地球全体に風に乗って拡散した集合意識が、個体の人間と共存するような 未来を、余韻として感じたい。
投稿日:2017.12.10
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