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葵瞬一郎 / 講談社ノベルス (1件のレビュー)
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ごい
このレビューはネタバレを含みます
「梅はるさんと梅ちよさんも、親しい関係だったんでしょうね」「親しいというだけじゃない、切っても切れない繫がりでしたよ。梅ちよちゃんが舞妓としてデビューしたお店出しのときには、梅はるちゃんが後見人として引いて出る役を務めて、姉妹の盃を交わしましたし、梅ちよの名も梅はるちゃんから一文字もらったものですから。二人には実の姉妹以上に深い繫がりがあったはずです」「なるほど……」 朝倉は端正な横顔に物憂げな表情を浮かべながらも、刑事たちの執拗な質問に一つ一つ丁寧に答えていた。百合と波内も、今や疲労の色がはっきりと顔に浮かんでいたが、だれることなく朝倉の返答を補足していた。 「まず、全ての始まりは、五年前に起きた飲酒轢き逃げ事件だった。飲酒運転をしていた大八木は、波内博氏をはねてしまった。車を下りて波内氏の状態を確認した大八木は、もはや助からないと見て、その場から逃走した。そして、自分の罪をなすりつけるために、社員の風間を呼び寄せて、事故に見せかけて殺した。その際、車に同乗していた梅はると梅ちよは、大八木をかばうために警察に対して噓の証言をした。これによって警察は風間が轢き逃げ犯であると判断して、大八木は目論見通り罪を免れたかに見えた。だが、あいにくと事故の現場を目撃していた人間がいた。その目撃者こそが今枝兄弟で、彼らは事実を警察に告げる代わりに、大八木や梅はるたちを脅迫して金を出させた。この脅迫行為はしばらく続いたが、やがて大八木は金を渡すのを拒むようになった。大八木を直接脅迫するのを諦めた今枝兄弟は、被害者の息子である波内さんに目撃情報を売りつけて金に換えようとしたが、これも失敗に終わる。こうして今枝兄弟は、これ以降、脅迫を続けることができなくなったが、祇園に居辛くなった梅はると梅ちよは芸舞妓を辞めた。……ここまではいいかな?」「はい、過去の事件については、そんなところだと思います」 「うわ ー、きれい」 やがて最初に運ばれてきた炙り鱧を一目見て、一乃が感激したように声を上げる。飾り切り野菜と青もみじの葉と共に盛りつけられた鱧は、確かに箸をつけるのがちょっとためらわれるほど美しかった。 炙り鱧に続いて、湯引き、おろし煮といった料理が運ばれてきて、他にもイカと筍の酢もの、地鶏の塩焼きといった品もテーブルに並んだ。どの料理も素材の旨味をごく自然に引き出していて、素直に美味しいと思えるものばかりだった。 「それと、僕はこれから必要になるものを買ってくる。また後で、この待合室で合流しよう」 朝倉はそう告げると、急いで待合室を出た。 改札まで行くと、駅員に事情を説明して一時退場を認めてもらい、外に出た。駅ビルのエレベーターを探し、案内板で店を確認してから十階に上がった。 早足で通路を進み、旅行用品店を見つけると、さっとスーツケースを物色して L Lサイズのものを二つ購入することにした。「あ、それ... 「五年前に風間正人さんが亡くなった後、彼の妹が遺体を引き取りに来ていたそうです。その妹は祇園で働く舞妓で、当時は小芳という名前だった。……その小芳こそが、あなただったんですね?」
投稿日:2023.05.14
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