【感想】社会的共通資本

宇沢弘文 / 岩波新書
(62件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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14
4
2

ブクログレビュー

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  • こん

    こん

    一読しただけの感想という前提で、今も議論になっていることを2000年当時から問題提起していたのはすごいなーという感想にとどまってしまう。くるま社会のところは面白かった。「会社法は誰のためにあるか」を読んだ時と同じような痛快さを感じるが、その痛快さへの乗っかり方に気をつけたいと思う。続きを読む

    投稿日:2024.03.24

  • saga-ref

    saga-ref

    第1章は社会的共通資本の総論。経済学の講義のようでとても難解。第2章以降は、農業・都市・教育・医療・金融・地球環境と、個別具体的な各論で、こちらは判りやすかった。農業基本法が、個別農家と一工業事業所とを同列に位置づけていることへの問題提起をしているが、まったくそのとおり。「輝ける都市」の人間を無視した都市構想の問題も然り。地球環境での炭素税の考え方を発展させて、国連単位で炭素量に応じた基金への拠出+森林面積に応じた基金からの交付金という制度があれば、発展途上国の森林保護の動機づけにならないだろうか?続きを読む

    投稿日:2024.03.01

  • hiddie

    hiddie

    以前から勧められていたが、コモンズについて関心を持ったことを機にようやく読んでみた。日本語でコモンズをわかりやすく解説してくれている。それにも増して、この当時から気候変動問題に真正面から対峙し、炭素税の仕組みを提唱していたことには、畏れいる。続きを読む

    投稿日:2023.12.29

  • rafmon

    rafmon

    社とは本来、土を耕すという意味。農家50戸をもって社となす。そして、社には必ず学校をおく。コモンズの訳語として「社」が最適だろうか、というのが著者宇沢弘文。果たして、その概念は正しいのだろうか。

    会的共通資本は、地球そのもの。インフラや制度、都市や農村もそうだという。もっと具体的に書くなら、公園とか図書館とか道路。皆でお金を出し合って共有する財や、自然に存在して私有化されていない資源の事と考える。そこで思い浮かぶのは、共有地の悲劇。みんなで使うから、使い方が杜撰に。シェアハウスのトイレ掃除はやりたくないみたいな事で、当番制のようなルールや監視、ペナルティがないとトイレの汚れは放置、悪化するので、まさに悲劇だ。

    この共有地の悲劇というキーワードは、生物学者ガーレット・ハーディンの論文が発端。私有制の欠如が原因だとする新古典派経済学。解決策として、私的合理性と社会的合理性を矛盾なく投合することが課題。しかし、歴史的なコモンズ、共有地は無条件なオープンアクセスではない。つまり、現実社会には、野放図な共有地は意外に存在せず、国であれ地域社会であれ、ある集団の管理下には置かれているものだ。

    そこからこぼれ落ちるような、真の共有地。まさに悲劇の可能性を持つのは、本著の最終章で述べられる地球温暖化の話。それと付け加えるなら、世界平和や平等などの「現象の維持」だろうか。動学的ではなく、今、この瞬間を維持する幸福感。成長ノルマで奴隷化された現代社会において、静学的に「維持」を唱える事。このことが公共経済学に重要な視点ではないかと感じた。
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    投稿日:2023.12.23

  • naosunaya

    naosunaya


    宇沢弘文教授の数式のない経済学。
    まずここは、著者による「ゆたかな社会」についての明快な定義の引用から始めるべきであろう。

    「ゆたかな社会とは、すべての人々が、その先天的、後天的資質と能力とを充分に生かし、それぞれのもっている夢とアスピレーション(aspiration: 熱望、抱負)が最大限に実現できるような仕事にたずさわり、その私的、社会的貢献に相応しい所得を得て、幸福で、安定的な家庭を営み、できるだけ多様な社会的接触をもち、文化的水準の高い一生をおくることができるような社会である。」

    そしてこの実現を妨げている最大の要因が資本主義経済、とくに資源の私有を無制限に肯定するメカニズムである、というのがおそらく著者の基本的立場なのだろう。

    私は、資本主義に対して、かつて民主主義についてチャーチルが語ったのと同じような感覚を持っている。すなわち、資本主義は最悪の資源配分方法である、これまで試みられてきた他のすべての方法を除いて、というような。とくに今日のようにお互いの顔の見えない巨大化した社会においては。

    “democracy is the worst form of Government except for all those other forms that have been tried from time to time”(W. Churchill)

    これを打破するために著者が導入するのが社会的共通資本である。
    昨今、地域コミュニティなんかではコモンズの考え方がリバイバルしていたりするのをみると、著者の先見性には驚かされる。
    また、実際読んでみると一部で誤解されているような意味でのマルキストでもなんでもなく、資本主義に基づかない効率的な資源配分を模索するというごく真っ当なテーマを追究していることがよくわかる。

    その上で、あえて言うなら、うーん、多分宇沢先生バイトしたことないな。ていうか働いたことないんじゃないかな。
    これ、今流行りの斎藤幸平さんにも感じたことなんだが。

    はたらいたことない、をより簡単に言うと要するにモノに値段をつけたことがないんじゃないかなと。
    例えばカテキョーだって時給の設定を間違えたら生徒は集まらない。これは何も金融資本主義のせいではない。

    自分の手がける商品の性能や、世の中の需要や、自分のプライドや、そんなこんなを総動員して決めるのが値付け。働くっていうのは自分の労働への値付けという面もある。

    資源配分を歪めているのは、強欲な独占資本、というほど宇沢先生の議論は単純ではないけれど、一度でも自力でモノを売れば新しい発見もあるんじゃないですか、という感想も持った。
    というわけで、俗世間で働いている暇などないほどの知の巨人の考察、と考えれば極めて有益な本。

    続きを読む

    投稿日:2023.08.28

  • のっぴ

    のっぴ

    コモンズに興味を持ち読む。前半部分が求める内容だった。
    社会的共通資本とは、一つの国ないし特定の地域に住む人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化・社会を持続的、安定的に維持することを可能にするような社会的装置とされる。社会的共通資本は、広い意味での環境を指すため幅広い。自然環境に加えて、交通機関、上下水道、道路、電力、通信施設、教育、医療、金融、行政などの制度も含む。社会的共通資本は、市場原理に基づいて運営されるべきではなく、専門的知見に基づき、職業規律に従って運営され信託に基づかれるとされる。そして各要素の社会的共通資本を解説している。
    コモンズも伝統的なものは、漁場、牧草地、河川などで社会的共通資本の概念に含まれている。特定の場所で、対象となる資源が確定し、利用する集団がある程度決められ、そしてルールが存在しているのがコモンズということだった。
    もう少し最近の社会的共通資本の考え方を知ってみたい。拾い読みとはいえ、わかりやすい図書だった。
    続きを読む

    投稿日:2023.06.12

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