【感想】P+D BOOKS 夢の浮橋

倉橋由美子 / P+D BOOKS
(4件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • myjstyle

    myjstyle

    なかなか流麗な文章で、話し言葉が美しい。小津監督の会話みたい。70年代の日本語って、こんな綺麗だったかしら。ヒロインは大学生だけど、着物を着こなし、茶道や能楽など古典の教養もあります。谷崎や川端の系譜を継ぐ文体には、倉橋の美意識を感じます。下界では全共闘騒ぎですが、ノイズ扱いです。スワッピングや近親相姦を扱うとはセンセーショナルですね。ただ、子の世代に継承させる展開は技巧が過ぎるでしょう。続きを読む

    投稿日:2018.12.31

  • debuipipi

    debuipipi

    初の倉橋由美子.流麗で豊かな文章と主人公牧田桂子がなんとも魅力的.
    巻末の秀逸な解説に佐伯彰一がこの作品を評して「典雅なロココぶりと、放埓なバロックぶりとが、背中合わせにはりついている小説である」と書いていることが紹介されているが言い得て妙.これは桂子を評する言葉ととっても間違いはない.
    それにしても大学四年生の桂子さんの知的成熟ぶりと優雅な振る舞いには驚かされる.この小説が書かれた当時(1970年)にはリアリティがあったんだろうか?
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    投稿日:2018.05.27

  • pinkchou

    pinkchou

    このレビューはネタバレを含みます

    21時に新宿紀伊国屋書店で購入し朝までに一気読みした。
    ここ最近で一番面白かった。
    あらすじだけだとアブノーマルな雰囲気たっぷりの小説を想像するのに、実際には清々しさすら感じた。文体が瑞々しい。着物や茶道、植物や食物の和名、京都の地名など、和のテイストの単語が豊富に含まれているからだろうか。もちろん、ただ和の単語がふんだんに使われているというだけでは、かえって胃もたれしそうなものだけれど、きれいな水を飲んでいるように読めた(鏡花までいくと典雅過ぎて読みにくいと思ってしまう)。タイトルも源氏?であるし、全体として優雅な、上流階級の生活感がする。
    書かれているものとしては、必ずしもすぐに飲み込める類の世界ではないと感じた。スワッピングが一種の到達であって、多分理想的な自分(もう一人の自分?)と理想的な相手との関係性を表象したものである、のかもしれない。浮気とか不倫でなく、不可能なはずの理想的なものに近づく手段が、もう一組自分たちと同じ「クラス」に属するカップルを発見し育成することにあるのが面白いと感じた。「クラス」の発想は桂子が専攻しているオースティンから来る。オースティンの小説には、この小説での全共闘の学生のような、「下」のクラスに属しているような感じの悪い者は登場しない。そして、小説全体がすでに述べたように、高貴な上流の雰囲気をまとっている(ように少なくとも自分には思えた)から、その点、所詮貴族趣味の、浮世離れした物語なのではないか、との批判もあるかもしれない。げんに、スワッピングしている当事者たちは、あくまで冷静にそれを計画し、条件が整わない以上それを止めることができる(と思われた)くらいに、どこか冷めたというか淡々とこの情事を行なっている。これは余裕のあるお金持ちたちの、高尚な遊戯なのである。
    しかしだからと言って、それが本質を全く欠いているかというとそうでもないのかもしれない。桂子が結婚できないだろうと確信的に思いつつも、耕一に惹かれまた彼に自分と同等の女性が嫁ぐことに満足するというのは、倒錯的ではあるが、結果的に耕一と血の繋がりがあったかもしれないことを考えると、通常の手段では到達できない理想の相手を作り上げ、夫婦交換により、交換されたもう一人の自分がそれを手にいれる、そのことへの伏線だったのかもしれない。
    感想に収集がつかなくなって訳わかんなくなってきたところでやめにする。文体の良さなど、もう少し分析を要する。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2017.09.19

  • toca

    toca

    『桂子さんシリーズ』としてこの先も書き続けられて行くシリーズの第1作目。文庫が少し前に復刊されたような気がしていたが、巻末解説によると2009年のことらしい。ほぼ10年経っているとは思わなかった……。
    シリーズ自体は進むにつれて徐々に幻想的になって行くのだが、現実の世界を舞台にしている本書も非常に幻想的。逆に題材は当時としてはかなり過激で世俗的だったと思う。対比が面白い。

    『幻想絵画館』も何処かが復刊させてくれないかなぁ。
    続きを読む

    投稿日:2017.08.11

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