【感想】望

土居伸光 / 光文社
(1件のレビュー)

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  • 光文社 文芸図書編集部

    光文社 文芸図書編集部

    多くの人がいちばんに望むことは、心の平安ではないでしょうか。
    逆に心配事。自分あるいは身内がガンになることは、現代人にとってその上位に入るようです。そのときに備えるため、先達に学ぼうと日本ペンクラブが会員に体験記を募ったことがあります。告知をどう受けとめ、何を考え、何を調べ、どのような選択肢を選んだか。たくさんの体験記が寄せられました。その中で、本書の著者・土居伸光さんの原稿だけが、他の方たちのとは趣を異にしていました。企図した情報ではなく、心のあり方が描かれていました。土居さんは不幸にも奥さんを亡くしますが、その奥さんの出棺のときに、不思議なことが起こります。悲しいはずの土居さんの身体は温かくなり、至福感に包まれたのです。そこに至るまでの経緯が綴られていました。当時小学六年生だった息子さんも遺して、最愛の奥さんに先立たれたのに、悲しみに打ちひしがれることはなかったのです。土居さんは、現象に揺さぶられることのない言わば究極の「心の平安」を手に入れたように思います。
    先の「心配事」は、病気、事故、失業……、そのほとんどが行きつくところは死への恐れです。職場における人間関係の悩みも、失業やさらにその先への不安でしょう。では、その「死」とは何なのか。本書は、土居さんが自身の体験を元に手に入れた宝物を惜しげなく物語に表した作品です。救われる人、癒やされる人、励まされる人、生きる力をもらう人、そして、心がちょっとだけでも強くなったと思う人は少なくないと確信します。
    『人は死なない』の矢作直樹先生に推薦文をいただきました。
    担当編集者
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    投稿日:2017.04.06

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