夜中の電話 父・井上ひさし最後の言葉

井上麻矢 / 集英社インターナショナル
(10件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • ukaiya

    ukaiya

    娘への深い愛情と、最後の最後まで
    創作にかけた井上ひさしの執念が
    垣間見えた。

    むずかしいことをやさしく…
    ゆかいなことをまじめに、

    この後にさらに続きがあったのは
    知らなかった。

    投稿日:2020.02.21

  • tosyokan175

    tosyokan175

    不器用なリア王は愛する三女の直言を聞き入れられず悲惨な最期を迎えますが、賢明なる文豪、井上ひさしは不器用な三女に、自分の化身たる劇団を託し、その運営について病魔と闘いながら伝えました。結果、早すぎる死にも思える最期もとても幸せなものになったのではないでしょうか?言葉の大切さを大切にした作家が、深夜の長電話で愛娘に託した至言の数々。もしかしたらふたりだけの秘密であったものが、作品として本になったことは、やはり、井上ひさしの伝えたいことはひとりの娘に向けてというより、人間という存在全体に向けてのものだったから、実現したのだと感じます。一方、色々、葛藤と反発と敬愛を抱えた父と娘の濃厚な時間は、離れた家族の回復の物語でもありました。「父子鷹」の勝小吉と麟太郎、「巨人の星」の星一徹と飛雄馬なと、父と息子の成長物語はありましたが、父と娘のこのパターンの関係論は非常に貴重だと思いました。続きを読む

    投稿日:2018.11.18

  • gannko

    gannko

    父・井上ひさしの残した言葉を娘・井上麻矢が忘れないようにまとめた本。私は井上ひさしのファンで彼の作品の他、書いた小説やエッセイから読み取れる人柄も大好きだ。この本にも、いたるところに娘を思う気持ちや、劇団を大事に思うところが残されている。
     病のため残された生きるわずかな時を、娘・麻矢さんへメッセージをすべて伝えようとしているところがとても共感できた。
    続きを読む

    投稿日:2017.10.06

  • whiteprizm

    whiteprizm

    このレビューはネタバレを含みます

    ・「問題を悩みにすり替えない」という言葉は聖書の中から父が解釈して、出てきた言葉だと思う。問題は問題として正面から受け止め、その問題が解決しないからといって、自分を卑下しない。「私は、なんて出来が悪いのだろう」とか「あの人とは相性が悪い」とか「こんな問題も解決できない自分はどう評価されるだろう」など、いつの間にか、悩みに転嫁されてしまう。そうなるともはや問題ではなくなる。なぜできなかったのか、できない理由を改善すればいいだけである。

    ・私がシングルマザーになった後、数々の職に就きながらマッチ箱のような小さな家を建てた時、誰よりも喜んでくれたのは父である。手が届かないと思っていたマイホームを持てたので、誰より私が嬉しかったが、父にとっても相当嬉しいことだったのかもしれない。自分の境遇を悲観せず、どうしたら両親揃った家族と同じことができるかを問いかけながら進んだ道だった。
    …父に「今度、我が家に遊びにきて」と私が誘ったときに言った言葉である。
    「君は偉いなあ。親が本当に嬉しいのは、子どもが家を建てて、その家に招待された時だ」とわざわざ時間を作って遊びにきてくれた。
    小さな家の中に入り、一番太い柱を手でとんとんたたいて、「なかなかいい柱だ」とほほ笑んでいた。
    「時々ここへ寄って、おいしいコーヒーと煙草を一服吸わせてもらおう。悪いけれどコーヒーと灰皿を買っておいてくれ」と封筒に入ったものを渡してくれた。いくら上等のコーヒーを買っても有り余るお金だった。その日はインスタントコーヒーしかなく、それを飲み、煙草を一服つけた。その煙草の吸殻を私はまだ捨てられずにいる。

    ・むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをゆかいに、ゆかいなことをまじめに書くこと。
    最後まで自分に課した創作への基本姿勢を記したのがこの言葉である。実はこの文章にはそのあとがある。
    「まじめなことをだらしなく、だらしないことをまっすぐに、まっすぐなことをひかえめに、ひかえめなことをわくわくと、わくわくすることをさりげなく、さりげないことをはっきりと」と続いているのだ。

    ・父にある日、「君はなぜそんなに職を変わるの?」と聞かれた。当然お叱りの言葉があると思っていたところ、この言葉を言われたのだ。

    「何をするべきか」三十代の君にわかるわけがない。自分も六十歳を過ぎてやっとなぜ物書きになったかわかったのだから。

    ちょうどその頃、父は『君と暮らせば』という戯曲を書いていた。原爆投下から三年後のヒロシマを舞台にした父と娘の物語である。戦争を体験した時代を生きた作家として、書かなくてはいけないと思って書いた作品だった。これを書いて、父は初めて作家になった意味を知ったと言った。
    何十年も書き続けてきたのに、六十歳を過ぎてわかるのかと正直びっくりしたのを覚えている。

    ・以前、私が恋愛で悩んでいる時、父は私が悩んでいる恋の相手にとって、一番大切なものは何かと聞いた。
    例えば大変忙しい人だったら、その人にとっては時間が一番大切だ。もし時間はあっても貧しかったら、お金が一番大切だ。その大事なものは人によってそれぞれ違う。お金持ちがいくらいいものを買ってくれても、それはお金があればだれでもできること。自分を大切にしているとは言えない。その人が一番大切にしているものを自分に割いてくれているのかを考えてごらんと。
    言葉の魔術師と思われていた父だが、それと同時に態度が伴わない言葉の空虚さをよくわかっている人でもあった。

    ・父が「その人の原風景は何かという本を出したら、例えば原風景辞典のようなものを出したら、自分はそれをきっと買うだろうな」という面白い発言をしたので、それから珍しく、父の原風景の話になった。

    ・「プロというのは、静かにやってきて黙々と仕事をし、静かに帰っていくよ。それが本物というもの。見ていてごらん。うるさく音を立てる人間は、よく観察していると結局愚痴や文句ばかり言って何をやったかわからない。仕事は静かにするものだ」
    「ついでに言う」と前置きをして次のように話した。
    「仕事場に行く時に、気分が落ち込む原因は、その場所で自分の立ち位置がよくわかっていないからだ。仕事が楽しくないのを会社のせいにしたり、自分の実力不足のせいにするのは簡単ですが、少し見方を変えて立ち止まってほしい」と父は話してくれた。

    ・父は本当に劇場を愛していた。いろいろな方に声をかけ、劇場を中心とした街づくりをするという持論を展開し、本当に劇場を作ってしまった人もいた。
    演劇を使って、町を活性化する。観ている方が目の前にいるという芝居の形式が、一番厳しく、しかし面白い、とても贅沢な芸術だと言い続けていた。

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    投稿日:2016.12.23

  • Pooh

    Pooh

    井上ひさしさんが三女 麻矢さんに遺した言葉。そこかしこに井上ひさしさんの素顔が垣間見えるような気がした。わがままを言えばもっともっと突っ込んだ話しが聞きたいな。

    投稿日:2016.05.08

  • hichakko

    hichakko

    このレビューはネタバレを含みます

    命を削って毎日のように夜中に電話がかかってくる。必死で伝えてくれた。それを思うと父がくれた電話の一つひとつが、命の会話だったと気づかされる。(本文より)

    父・井上ひさしから「こまつ座」を引き継いで、朝から晩まで必死に働いた後、夜中に父からかかってくる電話を受けて、彼の遺した言葉をまとめた本。
    正直、自分の親でも、くったくたに疲れた夜に電話がかかってきて、5時間6時間も話に付き合わされ、毎日2時間くらいしか眠れなくて、次の日も朝から仕事なんて状況にさせられたら、「いい加減にしろ! 疲れてるんだから寝させてくれ!」と私だったら怒るだろう。しかもその忙しい仕事はその父から受け継いだものならなおさらだ。

    でも著者は自分からは電話を切らないと決めて、彼が亡くなるまで付き合ったらしい。ある意味信念だったのかな、とも思う。
    そのおかげでこんなに素晴らしい言葉たちが世に出て、本という形で残ったのはありがたいことだ。著者が睡眠時間を削ってまで書き留めた井上さんの言葉は、それだけの価値があったと思う。

    題目の77の言葉自体もいい言葉ばかりだけど、やっぱりその言葉をもらった過程の文章も素晴らしいのでぜひ読むべき。
    人生に迷った時とか、悩み事がある時に読むと、そっと背中を押してくれるような珠玉の言葉が詰まっているので、そういう時におすすめ。

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    投稿日:2016.04.09

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