【感想】海の向こうから見た倭国

高田貫太 / 講談社現代新書
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
0
8
2
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • テムズの畔にて

    テムズの畔にて

    3世紀から6世紀の倭と朝鮮半島の関係を朝鮮の視点から、日韓の考古学上の成果をふんだんに活用して分析している。特に、朝鮮半島側の古墳の状況や研究者の視点を紹介してくれているのが新鮮。

    これによると、「倭という一つの強大国があって中央集権的に朝鮮半島と対峙していた」というステレオタイプの世界観では全く不十分であることがわかる。特に、時代が遡れば遡るほど、朝鮮半島(新羅、伽耶地域、百済、栄山江地域)と倭(九州北部、吉備、大和)が輻輳的に関係を築いていた。

    時代が5世紀に下ると、朝鮮半島側は高句麗の南下に対して百済や新羅が周辺を統合しつつ、倭と友好関係を結ぶことを思考し、倭も先進技術の取り込みのため、関係を構築していく中で、吉備や九州を統合した形で倭王権が交易を独占する形になってきたというもの。また、今と比べて国の概念も曖昧だったのだろうが、筆者は後書きにおいて以下のとおり指摘する。

    ・古墳時代(3世紀後半〜6世紀前半)の倭では、倭王権を核としながらそれぞれの地域社会も拠点となる、錯綜した可変的なネットワークが広がっていた。それは、朝鮮半島(少なくとも中南部)にまでのびていて、そこでも同じようなネットワークが広がっていた。その環海地域を取り巻くネットワークを活用しながら、倭王権と地域社会は時には協調して時には競合して、朝鮮半島のさまざまな社会と政治経済的な交渉を重ねた。

     ↑の好例が6世紀前半の磐井の乱であろう。筆者は、倭王権が北部九州の港を直轄化するとともに、新羅の圧迫を受ける伽耶を助けようとしたことに対し、新羅は磐井に賂を送って倭を牽制させ、磐井も港の直轄化に反応して倭を見限ったと見ている。まさにこのような『錯綜して可変的な』ネットワークが、(今のような厳密な国境意識なしに)日本でも朝鮮でも広がっていたということであろう。

    古墳の考古学的な解説の部分を読むのがやや苦痛だったが、全体として極めて説得的な本だった。

    続きを読む

    投稿日:2022.10.09

  • たけ坊

    たけ坊

    3世紀から6世紀にかけて、朝鮮半島と倭との間でどのような交渉があったのかについての研究をまとめた本。
    高句麗、新羅、加耶、百済、栄山江流域といった社会が割拠する中で、それぞれの対外戦略として倭との通行があった。
    倭は倭で様々な地域集団が存在し、吉備の反乱や磐井の乱といった、倭王権が外交権を接収するにあたって生起した戦いもあった。
    古代の歴史はよくわかっていない分ロマンもあるし興味をそそる。新羅が倭の出兵を抑えるために…という件とか。
    続きを読む

    投稿日:2018.11.27

  • hironakaji

    hironakaji

    2017年73冊目
    参加している読書会 3Bの7月度のテーマ本。
    読書会はもう終わったのですが、ようやく読了。
    著者は40代前半の日朝関係史の研究者。
    本書では日本人が書いた朝鮮から見た倭国というのが面白い。
    4世紀から6世紀の朝鮮と日本。その両者を結びつける様々な遺跡や出土品
    たとえば、朝鮮でも前方後円墳が見つかったりなど。
    当時の両国はどのような船で海を渡り、交流していたのであろうか。
    それぞれがお互いの必要性を認め交流していた日々。
    当時の様子を想像させてくれる一冊でした。
    続きを読む

    投稿日:2018.10.28

  • yoshio2018

    yoshio2018

    三世紀後半から六世紀前半の期間、朝鮮半島の国々、百済、加耶、新羅、金官などと倭の国々との交流を見る。倭も大和政権だけでなく、吉備、磐井、九州などの地方勢力との交流もあり、朝鮮半島の国々は北からの高句麗の攻勢に対抗する意味もあって、倭との交流を求めたようだ。続きを読む

    投稿日:2018.10.11

  • reinou

    reinou

    このレビューはネタバレを含みます

    2017年刊行。著者は国立歴史民俗博物館研究部准教授・総合政策大学院大学准教授。


     邪馬台国論争を見れば理解できるだろうが、もはや文献史学だけでは、古代日本を巡る交易・外交関係を理解することは不可能である。

     本書は、紀元~6世紀の、日本列島と朝鮮半島の関係性を、双方の考古学的遺跡・遺物の対照・分析を通じて解読しようと試みる書である。

     細かな部分は兎も角、叙述される内容の骨格については、左程の意外性はなかった。しかし、日本の古代国家形成と半島との関係性を簡明に理解しようとするならば、本書読破の価値はある。
     また、倭権力や百済・新羅といった権力機構側の関係性だけでなく、対馬海峡などを股に駆ける交易ネットワークの構成員「海民」とその交易物産に注目している点は、現代的と言えそうだ。

     しかも、本書は時期区分に意を払うだけでない。時代相に即応しつつ、半島の諸勢力毎に峻別して倭との関係性に言及しており、倭は親百済、反高句麗、反新羅であるなどと単純には論じてはいない。
     例えば、磐井の乱の前史における、新羅の反倭政策に関し、時期による親疎の度合いの違いなどを踏まえて叙述している。こういう点が本書の買いの部分である。


     また個人的には、特に第四章の内容。すなわち、朝鮮半島(栄山江流域)に築造された前方後円墳の持つ意味に関する解説が目を引いたところだ。


     ところで、本書の内容とは関係がないが、本書執筆の動機で気になる点がある。「書紀」に書いているだけで、考古学的に到底実証性のない「任那日本府」。この点は教科書の記載からも外れて久しい。
     にも拘らず、一般書にはこの実在を前提する記述が横行し、これを是正しないと誤謬が世間に流布してしまい、これを改めるべきと考えたことにあるというもの。
     かような動機を著者が持たざるを得なかった現実・実態。どちらかというと、そちらの方に驚かされてしまったところである。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2018.04.17

  • kojirok1222

    kojirok1222

    古代日韓関係史に全く詳しくない読者からすると、本書の主張の重要性や信頼度は評価不能だ。

    任那(本書で「加耶(かや)」)の日本(著者がいう「倭」)支配がなかったことを主張するのであれば、日本支配論の根拠とされるものを批判的に再評価し、逆に日本支配がなかったことの根拠を批判可能な形で示すべきだろう。

    半島南岸と倭との海峡を隔てた交流は当然にあったのだろうし、相互に影響は及ぼしたのだろうが、本書は日韓の古墳の紹介が中心になっており、「海の向こうから見た倭国」がいかなるものであったかを描いているようには思えない。
    続きを読む

    投稿日:2017.10.10

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。