【感想】処刑の丘

ティモ・サンドベリ, 古市真由美 / 東京創元社
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
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ブクログレビュー

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  • ゆめこ

    ゆめこ

    ミステリーと思って読むと物足りなさはあるが、知らなかったフィンランドの歴史や人々の生活ぶりを知ることが出来て面白い。登場人物もいい。

    投稿日:2024.03.21

  • じゅう

    じゅう

    フィンランドの作家「ティモ・サンドベリ」の長篇ミステリ作品『処刑の丘(原題:Mustamaki)』を読みました。

    北欧ミステリは6月に読んだ「カーリン・イェルハルドセン」の『パパ、ママ、あたし』以来ですね… これまで北欧ミステリは数十冊読んでいますが、フィンランド作家の作品は初めてです。

    -----story-------------
    2014年推理の糸口賞受賞

    かつて虐殺の舞台になったことで〈黒が丘〉と呼ばれた場所で、男たちが処刑と称し青年を銃殺した。
    警察は禁止されている酒の取引に絡む殺人として処理したが……。
    事件の影に見え隠れする内戦の傷。
    敗北した側の人々が鬱屈を抱える町で、公正な捜査をするべく苦悩する巡査「ケッキ」。
    正義は果たされるのか。
    推理の糸口賞受賞。
    フィンランドの語られざる闇を描く注目のミステリ。
    訳者あとがき=「古市真由美」
    -----------------------

    1920年頃のフィンランド・ラハティを舞台にした物語… 公共サウナのマッサージ係「ヒルダ・トルニ」とその家族を中心とする市井の人々と、殺人事件や密造酒ピルトゥの取り引きに絡む事件を追うラハティ警察刑事部の巡査「オッツォ・ケッキ」を中心に描いた警察小説、、、

    とはいえ、捜査や推理よりも、事件の数年前に発生したフィンランド内戦(ロシアのボリシェビキの支援を受けた赤衛隊と、ドイツの軍事力を後ろ盾にした白衛隊との間で戦闘になり内戦状態となる)の傷をひきずっている「トルニ家」等、市井の人々の生活や心理描写や克明に描かれているので、ミステリ色は薄く、どちらかといえば歴史フィクションのようなイメージでしたね。


    ラハティ市内の特殊な飛び地で隣町のホッロラに属するレウナンパルスタ地区に住む「トルニ家」は、内戦で敵対した白衛隊から死刑を宣告されたものの、辛うじて生還し、現在は密造酒ピルトゥに溺れ廃人同様の父「アウグスト(アウク)」、その妻「ヒルダ」、工場労働者で次第に共産主義思想に傾いていく息子「イスモ」、幼い娘「エリーサ」の4人家族… 彼らは内戦で赤衛隊に加わった当時14歳の長女「テューネ」が敵対する白衛隊から虐殺された辛い過去を抱えていた、、、

    その虐殺の舞台となった"黒が丘"と呼ばれる場所で、「イスモ」と同僚の工場労働者「アートス・ルオホネン」が何者かに銃殺される… 雌牛に草を食べさせるために丘に登った次女「エリーサ」が、その死体を発見、、、

    巡査部長「ペンティ・マケラ」は密造酒ピルトゥの取り引きに絡む殺人として処理したが「ケッキ」は納得できず、独自に捜査を進める… そんな中、次の殺人事件が発生する。

    被害者は「スロ・カウニスト」… またしても「イスモ」と同僚の工場労働者だった、、、

    「ケッキ」は、二人の共通点として美貌のロシア人女性で娼婦のような生活を送っている「ヴェーラ・ポポヴァ」との関係や、殺された二人と「イスモ」等が関わっていた「アドルフ・ヨハンソン」、「エリアス・ヴァルトネン」という二人の青年が工場を馘首された事案について、独自に捜査を進めるが、共産主義思想者の疑いをかけられ警察内部で孤立する「ケッキ」には誰も協力しないだけではなく、殺人事件の捜査から外すように圧力がかけられる… そして、次に犯人たちから「イスモ」が狙われる。

    犯人たちに襲われ殺されかけた「イスモ」だったが、偶然が重なり命はとりとめる… そして「イスモ」の証言から犯人が「アドルフ・ヨハンソン」、「エリアス・ヴァルトネン」であることに確信を持った「ケッキ」は、粘り強く捜査を進め、密造酒ピルトゥの捜査をきっかけにして「アドルフ・ヨハンソン」と「エリアス・ヴァルトネン」等の犯人一味を逮捕、、、

    しかし、彼らは上司の「マケラ」の力により無罪放免で釈放されてしまう… 無力さを感じる「ケッキ」だったが、その後、驚くべき出来事が。

    公正な警察官であろうとする「ケッキ」の孤軍奮闘には共感を覚えるものの、内戦の勝利者である白衛隊が絶対的な権力を握る警察組織の圧力により、なかなか思うように進まずヤキモキさせられましたが… 最後の最期に用意されていた懲悪勧善的なエンディングにはスカッとさせられ、心地良い読後感がありました、、、

    そういう意味でも主人公は「ヒルダ」なのかもしれませんね… そして、大事な役割を担う公共サウナの釜焚き係「ヴィエノ・ホロパイネン」の存在も印象的でした。
     
    フィンランド作品… なかなか面白そうですね。



    以下、主な登場人物です。

    「オッツォ・ケッキ」
     ラハティ警察刑事部の巡査

    「ペンティ・マケラ」
     ラハティ警察刑事部の巡査部長。ケッキの上司

    「アーポ・マンテレ」
     ラハティ警察刑事部の巡査。ケッキの同僚

    「ヒルダ・トルニ」
     公共サウナのマッサージ係

    「アウグスト(アウク)」
     ヒルダの夫。靴職人

    「エリーサ」
     ヒルダとアウグストの次女

    「イスモ」
     ヒルダとアウグストの長男。工場労働者

    「テューネ」
     ヒルダとアウグストの長女。故人

    「アートス・ルオホネン」
     イスモの同僚

    「スロ・カウニスト」
     イスモの同僚

    「トルスティ・コスキマー」
     イスモの同僚

    「アドルフ・ヨハンソン」
     イスモの元同僚

    「エリアス・ヴァルトネン」
     イスモの元同僚

    「サヴァンデル」
     辻馬車の御者

    「イェブリス(いやはや)・ベニヤミ」
     汚物汲み取り業者

    「ヴィエノ・ホロパイネン」
     公共サウナの釜焚き係

    「ヴェーラ・ポポヴァ」
     ロシア人の女性
    続きを読む

    投稿日:2023.01.25

  • sho3dai

    sho3dai

    汚職や不正がはびこる町を舞台に、警部の奮闘が楽しい作品。社会派ミステリのような印象もありました。 かつて惨殺が行われていた丘で、男が殺されました。警察は禁止されている酒取引のもつれによる事件だと決めつけますが、主人公である警部は違和感を覚え一人捜査を続けます。 真相を知ろうとする主人公と止めようとする警察。そこから暴かれていく街の真実。警察ミステリとしても社会派ミステリとしても楽しく、様々な読み味、側面がある作品だと思いました。続きを読む

    投稿日:2018.06.30

  • yuyuchi84

    yuyuchi84

    ボリシェヴィキって何となく悪役のイメージがあったけど、この時代のフィンランドではむしろ自由の象徴だったのだろうか。ケッキのヴェーラへの思いは独占欲が強くて共感できず。今の日本の雰囲気がこの作品のフィンランドに似てるぞ。続きを読む

    投稿日:2017.06.25

  • baramasa74

    baramasa74

    フィンランドの歴史を知らず読みました。
    警察内に味方はなく、どんな結末になるのかと一気読み。
    オッツォやヒルダの人物像は魅力的。
    フィンランドの歴史についての本も併せて読みたい。

    投稿日:2017.05.05

  • fabian

    fabian

    刑事が主人公で連続殺人があるものの、そう言った意味でのミステリではない。でもこの読み心地のよさは掘り出しものと言えます。

    投稿日:2017.03.05

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