【感想】西太平洋の遠洋航海者

ブロニスワフ・マリノフスキ, 増田義郎 / 講談社学術文庫
(5件のレビュー)

総合評価:

平均 4.6
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ブクログレビュー

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  • gakudaiprof

    gakudaiprof

    マリノフスキの全文かと思っていたら、訳者が訳者が縮小したものであると書かれていた。だから、カヌーと呪文のことが多かったわけである。全文500ページが訳されるのはいつであろうか。世界の名著を訳者が補足したと書いてあるので、世界の名著であれば、どこの図書館でもおいてあるのでそこで読んでもいいと思われる。続きを読む

    投稿日:2022.11.06

  • もうとく

    もうとく

    マリノフスキーによるトロブリアンド諸島の民族誌。贈与交換の制度的な結晶としてのモカの慣行と、それを支える呪術に関する生き生きとした叙述もさることながら、以後の比較・理論的研究に資するように貴重な文化事例を記録するための方法論についてしっかりとした議論がなされる。

    モカではまさにモカの中で交換されるための希少品(首飾りと腕輪)を当該地域に住む集団間で一方は右回りに、他方は左回りに交換する。モカは互酬的な贈与であり、首飾りをもらった後に数年おいて腕輪を返礼する(もしくはその逆)。モカでの交換に伴って、生活物資の物々交換も行われるが、住民たちの心理にとって重要なのは儀式的に贈与される装飾品である。ここで、モカの参与者をまとめ上げるためにも、モカにおける贈与の価値を高めるためにも重要なのが呪術である。

    マリノフスキーは参与観察を通じて、モカの慣習と呪術の意義に特に注目したためにこれらについては詳しく論じられているが、例えば首長位がどのように受け継がれるか、一般人と首長の格差は何によって決まっているかなどはあまり論じられていない。それよりもむしろ、丁寧な描写を通じて、未開人は生活上最低限必要な身体的欲求を充足するための経済活動のみを行うなどといった当時の未開人観を覆すことに主眼があるようだ。

    マリノフスキーはトーテミズムヤタブーなどの概念のように一地域で見つかった文化事例が、その概念を知ってから世界を見ると世界中多くの場所で独立に発見されることがあることを参照しつつ、モカが象徴する贈与の問題系を新たに切り出している。そしてそれはモースの『贈与論』で結実することになる。近年はこのような態度を逆に先入見を持ってフィールドに行くものが陥る誤謬と考える向きもあるかもしれないが、他の現象と比較可能な認識が得られて初めて学問的意義を持つのだというマリノフスキーの主張は意義深いと思う。
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    投稿日:2021.08.14

  • bax

    bax

    [ 内容 ]
    ソウラヴァ(首飾り)とムワリ(腕輪)をそれぞれ逆方向に贈与していく不思議な交易「クラ」。
    「未開社会の経済人」は、浅ましい利得の動機に衝き動かされる存在なのか?物々交換とは異なる原理がクラを駆動する。
    クラ交易は、魔術であり、芸術であり、人生の冒険なのだ。
    人類学の金字塔が示唆する「贈与する人」の知恵を探求する。

    [ 目次 ]
    この研究の主題・方法・範囲
    トロブリアンド諸島の住民
    クラの本質
    カヌーと航海
    ワガの儀式的建造
    カヌーの進水と儀式的訪問―トロブリアンド諸島の部族経済
    渡洋遠征への出発
    船団最初の停泊地ムワ
    ピロルの内海を航行する
    サルブウォイナの浜辺にて
    ドブーにおけるクラ―交換の専門技術
    呪術とクラ
    クラの意味

    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]
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    投稿日:2014.10.26

  • msty

    msty

    このレビューはネタバレを含みます

     この本は、ポーランド出身の人類学者ブロニスワフ・マリノフスキが、1914年から1918年にかけてニューギニア島東部のトロブリアンド諸島で行われたフィールドワークに基づいて著した民族誌である(原著の出版は1922年)。
     よく語られることであるが、この本がもたらした人類学への貢献は、「フィールドワーク」という方法を、人類学にとって不可欠なものとして「定着させた」ことである。この本が出版される以前は、旅行者や宣教師からの「伝え聞き」によって集められたデータに基づいて、当該の「民族社会」が描かれる、ということがあった。
     当時の西洋人たちの多くは、「西洋」の側に属さない人々に対する偏見が強かった。しかしマリノフスキは、「きちんとした習慣などなく、獣のような生活をしている」と考えられた「野蛮人」と共に生活をすることで、彼らの生活様式が実は複雑なものであり、彼らなりの秩序をもって生活が営まれていることを明らかにした。そのことは、トロブリアンド諸島の人々にとって重要なものである「クラ」と呼ばれる交易についての記述や、クラの際に行われる儀礼についての記述を読めばわかるだろう。
     この本は、アルフレッド・ラドクリフ=ブラウンの書いた『The Andaman Islanders(=アンダマン島民)』と共に、「機能主義」と呼ばれる考え方を人類学の主流にしたことで知られている。現在の視点から見れば、機能主義に対してはいくつかの批判がある。例えば、現地の人々の「社会」も、西洋人の社会と同じように「経済」「芸術」「宗教」などの部分に分割できるという考えから脱することができなかったこと(竹沢尚一郎『人類学的思考の歴史』)、フィールドワークによって収集されたデータの解釈が機能の発見に終始しており(つまり、「Aという行為にはBという機能がある」という記述に終始している)、現地の人々が自分たちの慣習をどのように解釈するするのかが明かされていないこと(永田脩一「機能主義」、綾部恒雄 編『文化人類学20の理論』)、などである。
     しかし、こうした批判を生み出したからこそ、人類学はその批判を、人類学という学問じたいの問題として受け止め、乗り越えようとしてきた。フィールドワークを定着させたことだけでなく、こうした建設的批判を生み出したことを含めて、この本は、人類学の発展に大きく貢献したということができるだろう。

     ※ この翻訳本は原著の全訳ではなく、クラを中心とした形になっており、原著の内容が圧縮されて翻訳されている。この翻訳本じたいは人類学的にも、また読み物としても非常に価値のあるものではあるが、原著からバッサリとカットされてしまっている箇所があるので、きちんと読みたい方は原著も併せて読まれることをおすすめしたい。

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    投稿日:2011.04.16

  • nt

    nt

    有名な「クラ」をめぐる本の縮約版。
    フレイザーとはまるでちがう、フィールドワークに徹した姿勢でとりあげられる、さまざまな現地の事象に惹きつけられる。
    「クラ」これはすでに「構造主義」の構造ではないのか続きを読む

    投稿日:2010.05.07

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