【感想】戦争と読書 水木しげる出征前手記

水木しげる, 荒俣宏 / 角川新書
(9件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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ブクログレビュー

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  • boutoumetous

    boutoumetous

     水木先生、大変なインテリ読書家である。
     第1章の出征前手記は難解かつ送り仮名の使い方が変で読みにくい。常々「なまけものになりなさい」と説いていた先生が二十歳の時点では「怠惰」を厳に戒めている。どういうことだ?と思ったら、それについて弟子 荒俣宏による解説があった。
     第2章は、戦前の読書事情、日本人と日記の関わりについて知るところが多かった。
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    投稿日:2021.12.17

  • raizox

    raizox

    新約聖書やゲーテまで読んでちゃんとものにしている水木先生の哲学的な思索に感心し、私にとっての水木先生の印象もガラリと変わった。(文章は主に荒俣宏さんのもの)

    投稿日:2018.10.09

  • 呂々

    呂々

    まとまりがなくて面白い。
    人の日記を覗き見するような楽しさがある。
    手記から滲む当時の時代の雰囲気もよい。
    後に名を上げる作家の無名のころの手記ってのもまた面白い。

    投稿日:2017.05.07

  • 八百

    八百

    その飄々としたお人柄に加えて"両親が心配して一年遅らせて小学校に入れた"などのエピソードから想像しがちなのんびりした少年時代、でもそれは水木サン一流の照れ隠しであり実の姿は凄まじい天才少年であったことを裏付ける貴重な書簡集。
    その出征を前に懊悩たる思いを書き綴った手記や戦地からの手紙は哲学そのものであり死を前にして生とは何かを自らに問いかける手法は時代を超えて心に強く響く。
    愛弟子荒俣氏の解説も良く出来ており戦争と言う狂気の現場に立たされた若者の心の拠り所としての「読書」の意義がつぶさに書き表されている。読書の幸せ…この言葉を今考えなければ
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    投稿日:2016.10.06

  • sazuka

    sazuka

    活字を眺めていないと不安になるけれど、なければないで、人生が左右されるほどのこともない。そんなフワフワした読書をしている身からすると、まさに凄絶だ。

    「頼りにすべき教養がまだ準備できていないための、まさに苦肉の読書」

    荒俣宏の言である。

    戦時中は本にも恵まれず、それでいて多くの人が重厚な名作を読みこなしている。数学書と高村光太郎の「智恵子抄」を同じ問題意識下で真剣に読む、という行為を荒俣は理解できないという。僕も同じ問題意識(というか興味)下で幅広く読むが、真剣さも足りなければ問題意識も浅かろう。

    水木しげるはゲーテに影響を大いに受けている。悪魔くんにもファウスト博士が登場する。なぜ当時の若者にゲーテがうけたのか? ジャンル・階層を横断しつつ、そして遅れてきた国家ドイツの古い価値観を最先端へのカウンターとしたこと。日本でもそのような文脈から柳田國男のような民俗学へ発展していったのではないか、と。

    戦争という、どうしようもないものの前で吐露する出征前手記と、荒俣によって解説される読書の文脈は、不謹慎ながら羨ましいと思えてしまう。いま、特に文脈から切り離されて、一瞬の連続だけを生きているような気になることが多いが、世の中は縦にも横にもつながっている、ということだ。だけどそういうのがわからないエライ人も増えているからなあ。
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    投稿日:2016.05.09

  • 2号、

    2号、

    ――――――――――――――――――――――――――――――
    仏教もやる。博物もやる……いじけるな、自分を小さくするな、俺は哲学者になる。21
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    自分と言ふものにびつくりした。俺なる実在は、俺の思考がとうてい及びもつかない程、複雑怪奇だ。ひとつ一生涯をこのものを観察しつゝ暮さうか。24
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    芸術品を造るものは何よりも人にならねばならぬ。25
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    仏教のような唯心論には反対だ。人間は心と肉とよりなる。27
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    一たらんと欲すれど本性が多なる以上、死する決意あらざる限り、一とは成り得ない。30
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    宗教には情熱があるけれども道徳にはない。だから道徳はいやだ。32
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    「習慣でない限り自分のものではない」とは真理だ。43
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    一分でも一秒でも自分になつて行く事だ。自分の中にある自分を進ませまいとするものに一分でも一秒でも心をゆるしてはならぬ。

    キリストを見よ。彼は全身を以て、そして一生を以てつ彼自身と戦つたのではないか。油断は禁物だ。48

    人生と言ふ広い所での隣人は、努力し、努力し、自分の思ふものを造る人達だ。48

    そう言ふ人がキリストの友だ。熱心に人間になろうとする人が友だ。

    釈迦でもキリストでも、その教団の凡人共より、漱石やニイチエやそんな人を愛する事を欲したのだ。49
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    「学問は分かれて科学と哲学となる。科学の対象は現象であり、哲学の対象は価値である」119

    河合は本題の「読書の意義」を次のようにまとめるのです。読書とは自己教育であり、自己とは何であり、何であるべきかの内容を与えるのが読書である。ここに読書の第一の意義がある。121
    ――――――――――――――――――――――――――――――
    「漱石の語を否定する程俺は自惚がない。それは損んだ。こんな時代で一番ものを言ふものは自惚だからな――」

    自分を自分にする最大の力は「自惚だ」と語っています。184
    ――――――――――――――――――――――――――――――
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    投稿日:2015.12.27

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