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森山優 / 講談社現代新書 (9件のレビュー)
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aoi-book
「両論併記」をした状態で決定文書としてしまう日本的な意思決定システムに原因があったとする分析。さまざまな考えを持つステークホルダ間で利害対立を調整できず、玉虫色の文章が作成されて各所で尾ひれがついた解…釈が一人歩きする。いまでさえどこの日本企業にもありそうな現象だと感じた。また、インテリジェンスの観点から、暗号解読を経て一次情報に触れていた人物たちが寧ろ誤った判断をしていたというのが興味深かった。「正しい」判断をするために必要なものがただ情報ではないというのは現代にも通じている。続きを読む
投稿日:2022.09.25
ニャーマネコトリック教 教祖代理
よく日本は情報音痴であり、情報戦に優れた英米に戦争に引き込まれた、とすらも聞き及ぶ。 では、実際にはどのように扱って開戦に至ったのか?を記載したのが本書である。 情報の取捨選択と判断という…“インテリジェンス”の流通を鍵に、日本の対応、英米と比較をし、本書は書かれている。 イギリスは、いくつかのルートが情報を収集、首相の元に一元化していた。インテリジェンスは首相の元にのみ存在し、国家方針を決定していたようだ。 アメリカは、陸軍、海軍等が独自に情報収集を行い、インテリジェンスまで作っていたようだ。ただし、最終的にはそのインテリジェンスを含めて、大統領は収集し、新たにインテリジェンスを作って国家方針を作成した。そして議会・世論の同意が得られれば、決定となった。 日本も、陸軍、海軍、外務省が独自に情報収集を行い、インテリジェンスまで作っていた。インテリジェンスをもとに国家方針を作成し、天皇臨席の御前会議で同意が得て決定となった。 一見アメリカに似ているが、日本の場合、御前会議の前段階、つまり各ルートで作ったインテリジェンスからの国家方針策定の機関が不安定だったようだ。 当時の日本は総理、外務大臣ほか数名と陸海軍などで構成される大本営政府連絡懇談会が国家方針決定の最高機関だったようだが、法制化もされておらず、議長もあいまいなようだった。そして、各部門も内部はバラバラだった。 様々な部署が、様々な方面のバランスを取りつつ苦悩、迷走していく日本。これ、当時の現場の人たちも何がどうなっているのか、わかってなかったんじゃない?とにかく、戦前はそれだけ迷走していたのだろう。 ではイギリス、アメリカはどうだっただろう?うまくいっていたのだろうか? アメリカは大統領の権限が強いが、結局は日本の意図を正確にはとらえることができなかった。そのため真珠湾攻撃と緒戦の敗北を招いた。 イギリスはうまくいきそうであるが、それでも過度に日本を恐れるばかりに、やりすぎと思われた経済制裁を発動したりして結局は日本を追い詰めた。そして戦争には勝ったが、アジアの植民地はほとんどを失った。 結局、第二次世界大戦勃発は、日米英双方の情報の取り扱いの過誤の連鎖だった、そして、勝者はなかったのでは?というのが著者の意見。 じゃあ、どうしたら一番よかったのだろうかね?方針を決める時には、以下に先入観を省いて決めるか、ということだろうか。情報を収集する部局は情報収集に徹底、集めた情報からインテリジェンスを形成する部局、インテリジェンスを集めて意思決定部門に上げる部局。そして意思決定部門で意思決定とするしかないのだろうか?まあ、今は企業、国家ともこのようにやっているのだろう。 そして、本書の各国の失敗を見て、僕たちはどのように行動べきだろうか?自分はひとりなんで、部局をたくさん作ることはできない。自分が今、情報収集を行っているのか、インテリジェンスを作っているのか、方針を決めているのかを明確に分けることが大切なのではないか?続きを読む
投稿日:2019.07.22
suwakotaro
情報の利活用になぜ失敗するのかを学びたいと思い手に取りました。実際、情報過多になる中で自分の見たいものを見てしまう、意思決定に至るまでに割愛され歪んでしまう、全体を見ず確度の低い情報に頼ってしまう等、…失敗のパターンが色々出てきて学びはありました。 トピックスの絞りこまれた本であり、歴史を学ぼうと思うと自分にとってはもうすこし前後の知識が必要だと感じました。続きを読む
投稿日:2019.01.18
ikutora
インフォーメーションとインテリジェンスの違いについて論じたのち米英との戦争を誘引した南部仏印進駐についての意思決定過程を時系列的に解説していく.日米両国で相手側の暗号が解読されてその情報をいかに活用し…たかを調査しているが,資料は失われていて不明な点も多いようだ. いずれにしも日米両国および関連国家の意思決定過程はまさにカオス的でどちらに転ぶんだかは些細なことで決まってしまったように感じる.「戦争責任」と軽く言ってしまうが,戦争に至る過程はかなり複雑で誰の責任なのかという問題は解が無いのかもしれない. 日本がドイツに送ったリップサービス的な暗号文書がアメリカのトップに直接知らされた結果,日本政府の考えが曲解された面があるというのは驚きであった.著者はトップが直接インフォーメーションにアクセスすることの危険性を指摘している.これは自分にとって逆説的で全く新しい視点であった.続きを読む
投稿日:2018.11.11
波瀬龍
【由来】 ・ 【期待したもの】 ・小谷賢の「イギリスの情報外交」を参照しながら読むと立体的な理解が得られるカモと思った。 【要約】 ・ 【ノート】 ・ 【目次】
投稿日:2018.10.28
たけ坊
歴史学の立場から客観的に日米の意思決定プロセスや諜報について見ていく。今まで自分を捉えていた認識の枠組みを意識させてくれる。 日本の国策を決定するにあたっての寄り合い世帯的な、両論併記と非決定の概念が…常につきまとっていた。松岡洋右が外相としてイニシアチブを発揮しようとする中でいかに日本を振り回したのかがわかる。 陸海軍もそれぞれの中で一枚岩ではなかったし、天皇も全く飾り物だったわけではなく、その意向は陸海軍に影響を与えていた。 蘭印や仏印の動き、独ソ戦に向かう中での日本の動き(渋柿主義と熟柿主義)、タイとの関係なども本書を通して細かく知ることができた。 南部仏印進駐からエスカレーションの歯車が噛み合ってしまい戦争が止められなくなってしまった事情がよくわかった。 オートメドン号事件、ハルビン情報も初めて知った。オープンソースのみに触れていた幣原やグルー、クレイギーなどの方が正しく情勢を分析できていたことも教訓だし、政策決定者がインテリジェンスでなくインフォメーションに直接触れ、その中から自分の見たいものしか見なくなる危険からも学ばなければならない。続きを読む
投稿日:2018.05.02
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