【感想】愚民社会

大塚 英志, 宮台 真司 / 太田出版
(15件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • キじばと。。

    キじばと。。

    子どもたちに憲法前文を書かせるなど、「近代」を根づかせるための実践をおこなっている大塚英志と、あえて「天皇」について語り「亜細亜主義」を標榜する宮台真司が、共通の問題意識をもちながら、東日本大震災以降におたがいの立場を入れ替えるようになったことをめぐって対話をおこなっています。

    おおむね大塚が宮台にインタヴューをおこなうというかたちで議論が進められています。表面的には両者の立場は対極的にも見えますが、本人たちも認めているように、じつは極めて近い問題関心にもとづいてそれぞれの立場を選択したということがうかがわれます。

    ただ、東浩紀シンパのわたくしとしては、両者のある意味で「啓蒙的」なスタンスにはついていけないと感じてしまいます。本書のなかで大塚はくり返し「なぜ天皇なのか、ほかのものでもいいのではないか」と宮台に問いかけ、宮台は「おなじ機能を果たせばなんでもいいけど、なんでもいいといってしまえば機能を果たさなくなる」とこたえています。さらに宮台はみずからの立場を「三枚腰」だとも述べていますが、こうした彼の主張は「メタ」が「ベタ」に取り違えられてしまう状況を踏まえたうえでの戦略的な振る舞いを意味していると理解できます。しかし、そうした取り違えが生じることには理由が存在しており、宮台のように「メタ」と「ベタ」の水位差をコントロールしうる立場はもはや維持しがたいように思われます。
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    投稿日:2020.01.04

  • tosyokan175

    tosyokan175

    書名が「愚民社会」と挑発的ですが、内容は「土人社会」ともっと挑発しています。BREXITやトランプなどのポピュリズムが吹き荒れる世界の流れに刺激を受けて、二人の論者と書名に惹かれて開いた本ですが、3・11きっかけでまとめられた日本論でした。西郷隆盛や福沢諭吉まで遡り、日本の近代化が可能なのかどうか、という、かなり日本ローカルの特殊な事情を語り合っています。なのですが、経済と国土だけじゃないもの、とか論理だけでは溢れ落ちちゃうもの、としての文化への向き合い、という意味では普遍性も感じました。タイミング的には最終章の憲法改正を巡る議論が大迫力。土人憲法の行方は、どうなるのでしょう。脚注満載なので、それだけでも知らなかったことが知れます。でも、正直、ちゃんと理解出来てないと思う土人でありました…大塚英志のあとがきの「教育」に未来を託すスタンスに、宮台真司のトリッキーなロジックよりも共感を覚えたことも、備忘しておきます。続きを読む

    投稿日:2018.11.24

  • paintbox

    paintbox

    読み手にもある程度の知識が必要。自分はまったく足りてないので、ところどころ分からない部分が多かった。

    投稿日:2015.07.29

  • Clarksdale工藤

    Clarksdale工藤

    東日本大震災と福島原発事故をきっかけとしてこの国は変わる、いや変わらなければならない、とあのとき思った。そして東浩紀の「一般意志2.0」を読み、未来に対して希望を持った。しかし2年が経ち、日本の恥部の一部が露呈しただけで一向に変わる気配がない。どうもおかしい。
    本書によると「たかだが地震ごとき、たかだが原発事故ごときで変わるはずがない」、それほどまでに深刻な状況に陥っているという。近代化への努力を怠った愚民、田吾作、土人が今更何を言うか!という痛烈な批判。
    暗くなる未来予測だが、「今いる『土人』たちはどうしようもないが、次の世代までそのことにつきあわせる必要はない」という大塚氏のあとがきに、ほんの少しの救いを見、重い肩の荷を感じた。
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    投稿日:2013.07.02

  • 甘味処

    甘味処

    ──ぼくが震災後この国の言説に乗れないのはそこでつくり出されるものが相も変わらず「魚の群れ」たちによる「空気」であり、その「空気」を「愛国」と呼ぼうが「反原発」と呼ぼうが同じである──
    ──そして今や、大衆を動員するのではなく、「大衆」にメディアも知識人も「動員」されている。首相も東と西知事も、そしてある意味で「天皇」さえ「大衆」に動員されている。──
    大塚英志氏のあとがき部分からの引用だが、その通りだと思う。今の日本人に絶望している大塚氏の「土人」と切って捨てる言説は耳に痛い。

    よくある「日本人ダメ論」なので読んでて気持ちのいいものではないし、いちいち「○○によれば」「○○にもあるように」「○○的にいえば」などといった他人の言説をもってくるので、知っていればいいが知らないとさっぱりつたわらず、ややすると自分達だけがわかっているといったオナニープレイのような文章なので本としてはおススメとしにくい。
    対談集なのでこのへんはしかたないのかもしれない。
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    投稿日:2012.08.03

  • yosoy

    yosoy

    『トゥルーマンショー』や『マトリックス』ではないが、「外側」に気付くことなく「マターリ」生きるのは、それはそれで幸せなのかもしれない。でも、私は、たとえすべてを知覚するのは不可能だとしても、置かれた状況について「自分の頭で考える」ことを徹底的に実践し続けていきたい。また、そういう個人を応援していきたい。そのような意味において、宮台氏の「共同体自治」や大塚氏の「カリキュラム」への取り組みには今後も期待したい。続きを読む

    投稿日:2012.06.18

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