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葉室麟 / 祥伝社文庫 (28件のレビュー)
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ゆきだ
このレビューはネタバレを含みます
落ちた花は二度と咲かないとひとは言う。だが、もう一度、花を咲かせようと櫂蔵は思う。そして、咲いたとすれば、わが胸の奥深くに咲くお芳の花でございます。わたしが生きてる限りは、お芳の花は枯れずに咲き続けることでありましょう。 そのために生きるのです。ひとはおのれの思いのみ生きるのではなく、ひとの思いも生きるのだと。それゆえ、落ちた花はおのれをいとおしんでくれたひとの胸の中に咲くのだと存じます。 お芳と弟の新五郎を想い、仇を取るために紛争する櫂蔵。最後は、潮鳴りが、いとおしい者の囁きがきこえる。 人を想い生きる事は、どんな事があらうが、生き抜かねばならない。そんなふうに感じた小説でした。
投稿日:2024.03.13
ハビエルラスコーリニコフ
仕事な人生で挫折を経験し、やさぐれた生活をした人が再起を図る勇気をもらえる本。周りの人の信頼、支えのありがたさを改めて感じるきっかけになる。
投稿日:2023.08.27
ginkan2
やはり私は葉室さんの作品に触れると心が熱くなり、涙も出てしまいます。とんでもない悪党がいる一方、主人公とその周りの人たち、その人達が強くもあり弱くもあって人間らしい一方、お互い感化されていく。哀しい話…には違いありませんが、希望、明るい希望のある最高の読後感でした。特に、お芳、染子といった女性がまた素晴らしいです。優しくて、そして芯から強くて。。。続きを読む
投稿日:2023.07.29
shiro
一旦は落ちるところまで落ちた主人公が弟のために決意する。 藩で奔走する主人公らの傍ら、家で一生懸命働く女性たち。 弟の無念や村娘の行く末など、哀しく悔しい話もありながら周囲に認められ支えられて目的を成…していく。 絶望しながらも生き抜く覚悟をもってあがく泥臭い主人公が格好いい。続きを読む
投稿日:2023.07.05
honno-遊民
著者は、出版社によって作品を書き分けているそうで、舞台とする藩についても、角川版には架空の扇野藩を、この祥伝社では、やはり架空の羽根藩を用いている。 羽根藩シリーズと銘打たれるが、羽根藩が舞台というだ…けで、一部を除きそれぞれの作品に関連性はなく、登場人物にもつながりはない。 第一弾の直木賞受賞作『蜩ノ記』は、死を意識した所から始まる「生の美学」であるのに対し、第二弾の本書は、「落ちた花は再び咲かすことはできるのか」をテーマにした再生の物語となっている。 役目を失敗して、お役御免となった伊吹櫂蔵が主人公。 彼が弟の切腹をきっかけに、それまでの無頼な暮らしを改め、弟の無念を晴らすべく、真相究明に立ち上がる。 彼の再生を手助けするのが、大店の元手代で、今は俳諧師の咲庵と、さらに櫂蔵が死を意識したとき、彼を抱いて引き留めた居酒屋の女将お芳。 彼らの助力により、宿願を果たした櫂蔵は、「ひとはおのれの思いのみに生きるのではなく、人の思いを生きる」のであり、「落ちた花はおのれをいとしんでくれたひとの胸に咲くのだと存じます」と、述懐する。 題名の「潮鳴り」は、咲庵が吐露する言葉から。 「潮鳴りが聞こえるでしょう。わたしにはあの響きが、死んだ女房の泣き声に聞こえるのです」 しかし、宿願を果たした櫂蔵は、潮鳴りはいとしい者の囁きだったかもしれぬ、と考え、いまもお芳が静かに囁き、励ましてくれているのだから、一生潮鳴りを聞いてゆくだろうと、心に誓う。続きを読む
投稿日:2023.04.23
ramunesaitodot
羽根藩シリーズの2作目。 1作目「蜩ノ記」は「隠密の花」がテーマ。 表舞台ではなく、誰にも評価されぬ、 それどころか無実の罪にて切腹が決まった中で、 誠実に清廉に生きる男の姿を描く。 対して2作目は「…落花を咲かす」がテーマ。 一度落ちた花は、咲くことがない。 それでも、もう一度咲かそうという物語。 人生をやり直す、再起を果たすことは可能なのか。 人は挫折から立ち直ることができるのか。 堕ちるところまで墜ち、ボロボロとなっても、 そこから這い上がることが出来る。 そんな強いメッセージを感じる。 もちろん簡単ではない。 自分だけでなく、他者にも認めさせる必要もある。 信頼を失った者が、それを取り戻すのは至難の業。むしろ周囲は足を引っ張ろうとする。 引っ張られても仕方ない過去もある。 それでも変わろうと思えば変われる。 困難に立ち向かい、 どんなに笑われようとも自分を貫き続ける。 そうすれば、ひとつずつ変わっていく。 いくしか味方になる者も出て来る。 正直者が報われ、悪は討たれる。 その陰で犠牲となる者が出る。 正義の途上で、舞台を去る者もいる。 その哀しみの上に、花は咲く。 最後まで諦めなければ、いつか叶う。 そう信じたい。続きを読む
投稿日:2022.10.09
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