【感想】福島第二原発の奇跡

高嶋哲夫 / PHP研究所
(4件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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ブクログレビュー

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  • たかちん

    たかちん

    東日本大震災による原発事故。どうしても爆発を起こした第一ばかりに目が行きがちであるし、マスコミも第二をあまり取り上げない。第一の過酷な事故の裏で第二でも奮闘していた人たちが多くいたことを忘れてはならない。続きを読む

    投稿日:2021.10.16

  • sasha89

    sasha89

    3月12日午後12時15分、3号機が冷温停止。
    3月14日午後5時、1号機が冷温停止。
    3月14日午後6時、2号機が冷温停止。
    3月15日午前7時15分、最後の4号機が冷温停止。

    2011年3月11日に発災した東日本大震災後、大震災と津波による
    被害と、全電源交流電源を喪失した福島第一原子力発電所の事故
    がメディアを埋め尽くした。

    なかでも原子炉建屋が水素爆発を起こした福島第一原子力発電に
    関しては日本のみならず世界中がその推移を見守っていた。

    しかし、危機を迎えていたのは福島第一原子力発電所だけでは
    なかった。茨城県東海村に立地する東海第二、そして福島第二も
    危険な状態に陥っていた。

    本書はこれまで福島第一原子力発電所事故関連のなかでしか語ら
    れなかった福島第二の緊迫の4日間と、対応に係わった人々の「そ
    の後」を追っている。

    福島第一と福島第二の一番の大きな違いは、第一が外部電源の
    全てを失ったことに対して、第二では富岡線2回線のうち1回線が
    かろうじて生き残ていたことだ。のちに、首都圏の停電解消の為に、
    東電本店はこの唯一の回線を「切ってもいいですか?」と当時の
    第二原発所長・増田氏に聞いて「ふざけるな」と却下されている
    のだが。

    「扉1枚向こうは地獄」。高い放射線量の中で原子炉の暴走を止め
    ようとした第一の現場も壮絶だったが、第二も危険と隣り合合わせ
    だったことに変わりはないんだな。

    なによりも電気を復旧させること。これには電気工学を学んだ電気屋
    である増田氏が所長だったことが幸いしているのだろう。

    重たいケーブルを人力だけを頼りに9kmに渡って敷き、原子炉を
    冷やす為の水が足りなくなれば「あとで役場に報告すればいい」と
    近くの川からポンプでくみ上げる。

    危機に直面した時の判断力。第一の吉田所長にしろ、第二の増田
    所長にしろ、それが出来る人だったのだな。だから、本店も政府も
    横からあれこれ言わず、現場にすべて任せればよかったんじゃない
    のだろうか。

    本書の後半は増田氏の前任であった第二所長・石崎氏のことに紙数
    が割かれている。これは著者が個人的に石崎氏を知っていることも
    あるのだろうが、広報出身の異色の所長として石崎氏が築いた人脈
    が、あの緊迫の4日間の第二全体の一致協力に繋がったのだろう。

    東電の人たちばかりではなく、協力会社の人々の思いもカバーして
    おり、これまでほとんど報道されなかった福島第二の状態が克明に
    描かれている。

    改めて思う。福島第二が、東海第二が、福島第一と同じ状況に陥って
    いたならば日本は今、どうなっていたのかと。

    私は東京電力という会社自体は信用していない。福島第一の事故
    当時、頑なに「メルトダウン」との言葉を使おうとせず、ほとぼりが
    冷めたのを見定めたように「実はあの時、メルトダウンしてました。
    事故3日後にはその測定も可能でした」なんて後出しばっかりして
    いるから。

    でも、現場は必死だった。この思いはくみ取りたいし、忘れないで
    いたいと思う。福島第一の廃炉作業も大事だけれど、本店と現場
    の温度差の解消こそ、東京電力に必要なものではないのだろうか。
    続きを読む

    投稿日:2017.08.23

  • Y.K

    Y.K

    福島第一原発の事故については様々な書籍が出版されています。ところが、福島第二原発を扱った書籍はほとんど見当たりません。東日本大震災のあの日、ほぼ同じ立地状況で津波の遡上を受けた二つの原発のうち、福島第二原発はメルトダウンの危機を脱して冷温停止に成功し、現在も安定した状態に管理されています。
    福島第一原発の状況と比較すると、いくつかの幸運があったにせよ、震災からの数日間は状況がどちらに転んでもおかしくない瀬戸際であり、さらに福島第一原発に世間の注目が集まる中で、ほとんど外部からの支援を受けることができない状況で見事に事態を収束してみせた福島第二原発。そこに従事ししていた関係者の証言をまとめた記録です。
    本書前半は当時の原発所長や運転員の方の証言を中心に、そして後半は原発に関わる様々な協力企業や地元の人の証言をまとめてあります。いかに際どい状況であったのかが伝わってくる内容でした。
    危機的状況を切り抜けた貴重な成功事例である福島第二原発のこの記録は、原発を今後運転するのであれば見つめなおす貴重な資料との印象を受けました。
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    投稿日:2016.06.10

  • 河童猿

    河童猿

    福島第一原発事故に関する書籍は、
    玉石混淆、様々に上梓され…、また、
    今もなお、報道され続けていますが…、

    福島第一原発(1F)から10km離れた、
    福島第二原発(2F)に関する書籍は、
    ほとんど見られず、地震発生当初から、
    ほとんど報道もされておりません…。

    それは、偏に、2Fが、
    1Fのよぅな重大事故に至らなかった、
    といぅ所以ではありますが…、
    その裏には、奇跡的とも言える幸運と、
    職員の懸命で献身的な努力があります。

    本作品は、
    2Fにおける事故対応の模様をまとめた、
    ノンフィクションです。

    作品の前半は、
    地震発生から、全原子炉が冷温停止した、
    5日間の様子が綴られています。

    また、後半は、
    女性職員や総務部門、協力企業など、
    事故対応が行われている最前線で働いた、
    裏方の方々の様子が綴られています。

    どちらも、これまでに、
    ほとんど報道されてこなかった現実です。
    それだけでも、貴重な記録だと思います。

    1Fと2Fの運命を分けたモノ…、それは、
    1回線だけ生き残った「外部電源」でした。

    その虎の子の外部電源を護り抜き、
    2Fの重大事故を防ぎ、無い余力を絞って、
    1Fのサポートまで行った、2Fの仕事は、
    もっと報道されてしかるべきことでそぅ…。

    私たちも含めて、
    大切なことは、正しぃ情報と正しぃ理解、
    そして、技術者たる者、原点は現場主義、
    このことを、改めて感じました。

    本作品の著者、高嶋哲夫さんは、
    ジャーナリストではなく、
    自然災害を題材としたクライシス小説、
    で有名な、作家さんです。
    加えて、原子力発電の技術者でもあります。

    それ故か?、
    読者の勘所を押さえたネタや構成は上手く、
    ご自身の小説で散見される蛇足もなぃため、
    小説としては、盛り上がりに欠けますが、
    ルポルタージュとしては、とても読み易ぃ。
    ノンフィクションとしては、最良でそぅ…。

    原発賛否のプロパガンダもなく、
    美辞麗句もなく、余談や蛇足もなく、
    かと言って、ドライな感じでもなく、
    人間味のある作風も含め、良著です。
    続きを読む

    投稿日:2016.03.13

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