【感想】~入試問題で歴史を推理する~ 東大の日本史「超」講義

相澤理 / ワニの本
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  • poron330

    poron330

    東大の入試問題を通して、日本史の本質を学ぶという主旨の本。
    印象的だったのは、東大の歴史教授達は英雄史観ではなく、歴史の転換は民衆が鍵を握っているという、いわば大衆史観とでも言うのか、その思想が問題に取り組まれているということであった。
    幕末、幕府が第2次長州征伐で敗退するのは、薩長の英雄が活躍したのではない。幕府が各大名に要請した徴収に、大名が応じなかったことが上げられ、その原因は困窮している民衆が大名から離反しかねない状況を慮り、幕府の命に従わない者が続出したからである。といった考えが根底にある、らしい。
    日本史を選択していなかった身としても面白かったし、歴史の読み方は表層的な歴史をなぞっただけでは、理解したことにならないのだと感じた。
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    投稿日:2018.03.05

  • 友

    <目次>
    はじめに
    第1章 古代
     問題1 「政治の要は軍事」と悟った天武の経験
      東大の入試問題が求めていること
      軍事力の重要性を誰よりも知っていた天武天皇
      庚午年籍が果たした役割は徴兵だった!
      戸の編成も徴兵が主眼

     問題2 政争の時代をしたたかに生きた吉備真備
      「質問されたことにきちんと答える」難しさ
       <唐>という古代のグローバルスタンダート
      教義研究の発展と国家仏教の確立
      藤原氏と皇親の争いの中で

     問題3 摂関家と中下級貴族の「潤う」関係
      公的な秩序から私的な秩序へ
      財政の悪化と対外的危機の緩和で、中央集権体制はなし崩しに
      能力があれば昇進できた、律令制下の官僚制
      「おいしい」ポストだった!? 国司の徴税請負人化
      官吏の任免権を握った摂関家に、中下級貴族はなびく

     問題4 文字文化が広まった政治的背景
      <文字>が担う政治的な意味
      中国への遣使により伝わった感じ
      文書の作成のために、渡来人を組織
      唐風文化の消化・吸収のうえに、国風文化が花開く

    第2章 中世
     問題5 頼朝政権が勝ち残った、鎌倉の「地政学」
      <時代の転換点>はいつもジグザグ
      奥州藤原氏の台頭
      知られざる<流通都市>平泉の建設
      朝廷も源頼朝も、奥州藤原氏を恐れた!
      鎌倉という朝廷からの程よい距離感

     問題6 東国と西国では違った地頭のあり方
      武士とは開発領主であり、荘官でもある
      地頭任命とは、先祖伝来の所領の支配権を保障すること
      西国の地頭は東国からの新参者だった
      幕府も所領紛争の解決に乗り出す
      コメだけではなかった中世の産業

     問題7 「他力」の守護大名から「自力」の戦国大名へ
      鎌倉時代の守護は無給だった
      守護の権限強化と守護領国性の成立
      「虎の威を借る」守護大名に国人たちは強く反発
      自力支配を貫徹した戦国大名の登場

     問題8 実力社会の中世に広がった<徳政>
      <一揆>の時代としての<徳政>
      惣村の自治組織を基盤とした土一揆の頻発
      「代がわりの徳政」というリセットボタン
      <徳政>にならなかった、永仁の徳政令
      徳政令を収入源とした室町幕府

    第3章 近世
     問題9 江戸幕府がなしえた統一的な軍事動員
      近世は<統一化>の時代 一元的な権力の出現
      近世社会の基盤を準備した太閤検地
      荘園制が消滅し、秀吉が全国の領主となった
      大名の所領は将軍からの<一時的な預り物>
      自治に依存した村の支配

     問題10 許されなかった大名の末期養子
      江戸幕府が本格的にスタートを切ったのは1615年
      大名同士の連帯を警戒した幕府
      相続人の決定は臣下の奉公だった
      「武」ではなく「文」で治める、文治政治への転換

     問題11 幕府から自立できない藩経済
      貨幣経済の発達は、幕藩体制にとって「両刃の剣」
      「米価安の諸色高」で、幕藩の財政は火の車に
      人口の集中する三都に、全国の産品は集まる
      既存の組織を利用する、幕藩体制のしたたかさ
     
     問題12 農村の危機と松平定信の幕政改革
      農民層の階層分化が、幕藩の財政を揺るがす
      幕府に残された「2つの道」とは?
      貨幣経済を目の敵にする老中・松平定信
      松平定信の農村復興法

    第4章 近代
     問題13 「民衆」が動かした倒幕への道
      <民衆>の視点から幕末を問う東大日本史
      大事なことは、何度でも問われる
      高騰する米価と高まっていく民衆の不満
      「世直し」の波を諸藩は無視できなかった

     問題14 日本経済の発展と貿易の動向
      戦前の日本は、貿易赤字続きだった
      資本主義の基盤を準備した松方財政
      産業革命の進展とともに、貿易赤字は拡大する
      バブルだった第一次世界大戦後の好況

     問題15 政党内閣の成立と戦争の深い関わり
      「政党の動向に左右されない」、黒田首相の「超然主義」演説
      初の政党内閣となる、第一次大隈重信内閣が成立
      米騒動と「平民宰相」原敬内閣の成立
      短期間に終わった「憲政の常道」

     問題16 ワシントン体制と日本の国際的立場
      国際的に孤立しかねなかった、第一次世界大戦後の日本
      太平洋・極東問題に対する日本のホンネ
      日米英の建艦競争の中で、急務だった軍縮
      協調外交が破綻した歴史的必然とは?

     問題17 欧化主義への反発と国家論の高揚
      明治日本のナショナリズムが高まった1880年代
      条約改正交渉の挫折と三大事件建白運動
      朝鮮における日清間の対立と福沢諭吉の「脱亜論」
      国内に不安がある時こそ、眼は国外に向かう

    おわりに

    *** 
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    投稿日:2017.11.26

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