【感想】ディスリスペクトの迎撃

竹内真 / 東京創元社
(6件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
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ブクログレビュー

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  • 館長

    館長

    (収録作品)チェスセットの暗号/ファンサイトの挑戦状/トラブルメーカーの出題/ポー・トースターの誘拐/ディスリスペクトの迎撃

    投稿日:2017.06.28

  • やまだん

    やまだん

    このレビューはネタバレを含みます

    〇 概要
     銀座にある文壇バー「ミューズ」には,大御所ミステリ作家の辻堂珊瑚朗,藤沢敬五といった面々が現れる。彼らは,さまざまな謎や事件について,鮮やかに推理する名探偵でもあった。ボーイである了の目を通して描かれる日常の謎系の短編ミステリ集。「シチュエーションパズルの攻防」の続編

    〇 総合評価 ★★★☆☆
     全編を通した謎はないものの,全編を通じ「海無し県殺人事件」のバラエティー連動企画の映像化という軸が存在する。その軸をベースに,いわゆる,日常の謎といった謎と解決が示される。
     前作以上に辻堂珊瑚朗のライバル,藤沢敬五が頻繁に登場する。二人で会話を進める中で謎解きが進むという展開が多い。
     いずれも日常の謎系の短編ミステリらしく,意外性は少ない。そこそこ魅力的なキャラクターによる会話や謎解きの過程を楽しむ作品であり,読後感も悪くない。作品にのめりこめるような深さも,熱中して読めるような展開もないが,出勤途中や寝る前などにちょっと読むには最適のミステリだろう。★3で。

    〇 チェスセットの暗号
     辻堂珊瑚朗の「海無し県殺人事件」が,バラエティー番組との連動企画で映像化されることになった。ミューズのママ,ミーナや,辻堂珊瑚朗のライバル,藤沢敬五は,辻堂珊瑚朗が,自分の作品のトリックを単純化してクイズ形式で出題させることを許可したことに疑問をいだいていた。
     ミューズで,その「海無し県殺人事件」の映像化の祝いをしているところに,藤沢敬五が現れる。そして,友人からもらったチェスセットを紹介し,辻堂珊瑚朗とチェスを始める。チェスの最中,チェスセットに仕込まれた暗号に気付き,珊瑚朗と藤沢は,謎解きを始める。
     謎の答えは,ナポレオンの棋譜だった。しかし,ナポレオンの棋譜と伝わっているその棋譜は,実際にはナポレオンが残したものではないと言われている。そして,その棋譜をよりよい棋譜にできるのではないかという謎掛けだった。
     また,藤沢は,「海無し県殺人事件」は珊瑚朗の初期の作品で,むしろトリックは単純にした方がよい仕上がりになると思い,珊瑚朗は,自分の作品を変えたいという欲求と変えるべきじゃないと分かっている二律背反の思いを満たすために,映像化を許可したのではないかと推理する。

    〇 ファンサイトの挑戦状
     「海無し県殺人事件」の映像化,第一弾は,好評だったが,一部のファンからは「トリックを簡略化し,原作の魅力を損なった」と批判を受けていた。
     その批判の一番手と言えるサイトで,簡略化されると思われる第2話の脚本を予測。その脚本の予測は,実際の脚本に酷似していた。
     プロデューサーの加茂は,このままでは本家がサイトを真似したと思われかねないと心配する。ミーコは,珊瑚朗に助けを依頼する。
     珊瑚朗は,視聴者が書いた予想どおりに進め,最後の最後で裏切るという策を授ける。加茂は,この騒動を宣伝に利用し,最後は珊瑚朗のアドバイスどおりに別の女性を黒幕とする原作とは異なる結末を用意した。

    〇 トラブルメーカーの出題
     「海無し県殺人事件」の第3弾を撮影中に,監督の身内で,スタッフの嫌われ者だった「石沼麻沙樹」が,作品の登場人物と同じような姿で殺害される。スタッフに犯人がいると,撮影,放送ができなくなる可能性がある。ミーコは,珊瑚朗に,スタッフ以外に犯人がいない可能性がないか,助言を仰ぐ。真相は,石沼が別のトラブルに巻き込まれ,琵琶湖とは別の場所で殺害され,スタッフの仕業にするために工作されていたというものだった。決めては,比良おろしという琵琶湖の特徴をしらずに,工作が失敗したことと,琵琶湖にいるはずのないイワナが死体のポケットに入っていたから。

    〇 ポー・トースターの誘拐
     「海無し県殺人事件」の最終回,第4弾の台本が誘拐される。サイトの謎を解かなければ公開されるという。辻堂珊瑚朗と藤沢敬五は謎の一部を解き,江戸川乱歩が鍵になると推理する。了はその推理をもとに多摩の江戸川乱歩の墓を訪れるが,これは罠。その姿がネットに公開される。謎の全てを解くと,江戸川乱歩生誕の地である名張に,江戸川乱歩の出生の日に出向けばよいという結論になったが,その時間までは分からない。そこで,珊瑚朗は,スタッフや劇団員などを使って総勢20人で怪人20面相の姿で午前零時に出向き,誘拐犯を捕まえる。

    〇 ディスリスペクトの迎撃
     「海無し県殺人事件」の打ち上げ。その後,視聴者から問題を募集する形の「ドラマで対決!出題ミステリー」という番組が始まる。これは中傷や脅迫をするようなネット住人達を番組に取り込もうという企画だった。

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    投稿日:2016.12.25

  • あまぐも

    あまぐも

    +++
    銀座にある文壇バー『ミューズ』の常連客、大御所ミステリー作家のサンゴ先生こと辻堂珊瑚朗。彼は不思議な事件について鮮やかに推理する、名探偵でもあった! ライバル作家が持ち込んだ、チェスセットに仕掛けられた謎を解く「チェスセットの暗号」、サンゴ先生原作のドラマをめぐって起きた、奇想天外な“誘拐"の解決に乗り出す「ポー・トースターの誘拐」など、五つの事件を収録。『ミューズ』のボーイ・了の視点から、サンゴ先生の華麗な活躍を描く、安楽椅子探偵ミステリー第2弾。
    +++

    サンゴ先生シリーズの二作目。登場人物のキャラクタや、人間関係が呑み込めているので、ストーリーがすんなり頭に入ってきた。毎度毎度のサンゴ先生と藤沢敬五先生のライバル心むき出しのやりとりは、苦笑を禁じ得ないながらも、実は互いを尊重し合っているのが見て取れ、しかも、要所要所でヒントを与え合ったりもしているので、微笑ましくも思えてくる。仕掛けられる謎も、熱烈なファンがきっかけだったり、批判的な読者がきっかけだったりと、バラエティに富んでいて飽きさせない。文壇バーという場所ならではの駆け引きもあって、次が愉しみなシリーズである。
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    投稿日:2016.07.11

  • ももんがー

    ももんがー

    このレビューはネタバレを含みます

    なんで読もうと思ったのか謎なんですが(笑)、さらりと読めてふつーにおもしろかった。
    最後の作品は、ええ話やー!!と思わずほろっと。こうあれたらいいよね、と。
    作者さん、「カレーライフ」の方だったのね。小説読んでないが、舞台は見たなあ。

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    投稿日:2016.05.01

  • tuppence

    tuppence

    珊瑚郎センセイ、今回も素敵(笑)
    小僧くんは、ちょっと受難の巻きだったかな。
    センセイたちに負けじと謎に挑む姿勢はナイスなんだけどね(笑)
    軽妙な感じが楽しくて大好きなので、ぜひとも、続きを書いてほしい。続きを読む

    投稿日:2016.04.08

  • はち

    はち

    竹内真の文壇バー安楽探偵ミステリ。シリーズ第二作。
    小洒落た装丁に負けない、ポップながらセンス溢れる短編が多くてよい。
    大きい興奮こそないものの、オチが読める作品がほとんどない。
    「ファンサイトの挑戦状」がとてもよく、使い古されたトリックを使うミステリを作中作とすることで、そのトリック自体に価値を加えており、メタフィクションものとして非常に理想的なものだったと思う。
    3+
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    投稿日:2016.01.31

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