【感想】世界史の構造

柄谷行人 / 岩波現代文庫
(11件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • hisamo99

    hisamo99

    柄谷は交換様式の観点から世界史を捉え直そうとしている。

    交換様式Aは互酬。歴史的派生態としてネーション。交換様式Bは略奪と再分配。歴史的派生態は国家。交換様式Cは商品交換。その歴史的派生態は資本。交換様式DはX。その歴史的派生態もX。例えば、歴史的にAが主であるとき他は存在していないのではない。その時々で支配的なものが異なる。
    Aが支配的な社会は部族社会、Bは国家社会、Cは資本制社会。
    交換様式DはBやCによって抑えられていたAの高次元での回復である(368
    ページ)。
    交換様式Dはカントの「世界共和国」において実現される。ただ「世界共和国」は実現することのない永遠の目標みたいなものとのこと。(373ページ)。

    国家を拒否する社会主義(アソシエーショニズム)は交換様式Dにあたり、資本=ネーション=ステイト、ないし自由・平等・友愛を越えることによってしかなされない。(376ページ)

    協同組合は労働者自身が労働を連合する。利潤は労働者に分配される。協同組合は労働力商品・資本制を揚棄する志向がある。真の民主主義は政治的なレベルだけではなく経済的なレベルで達成されるべきというプルードンの考えは協同組合工場で実現されている。それは交換様式Dを現実化している。(391-393ページ)

    一国内だけではなく、国家間でも、交換様式Aの回復がなされなければならない。それが諸国家連邦、世界共和国。

    交換様式Dが何か具体的なイメージができなかった…
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    投稿日:2024.09.09

  • ぼるへす

    ぼるへす

    生産形式ではなく交換形式を捉えることで浮かび上がる資本=ネーション=国家のボロメオの輪の史的発展を描く中盤までの議論はトランスクリティークの深化として納得させられる議論だと感じた。
    統制的理念として世界共和国へ向かう展望が述べられる後半部については消化不良感が残る。世界共和国の実現という国家連邦レベルの視点での発展とそこに生きる個々人の発展は果たしてつながりうるのだろうか?という疑問が最後まで拭いきれなかった。
    とはいえ、資本主義をより深く捉えるためには必読と言える本だと感じた。
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    投稿日:2024.06.16

  • itachi23号

    itachi23号

    「交換様式」から世界史を見つめ直す。
    主に、カント、ヘーゲル、マルクスの史観と著者の新しい視点を比較しながら、これまでの世界史の流れを再構築し再解釈されていく。
    25歳の誕生日に出会った本だが、もう少し早く読みたかった。でも、いつだって今日が1番若いのだから大人になってからこの本に出会った意味を考えて、今後の人生に投影していきたい。
    私に影響を与えてくれたのは、本の中身ではなくこの本との出会い方なのかもしれないが、私の人生にとってとても大事な1冊となった。
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    投稿日:2024.01.06

  • ktazuke

    ktazuke

    歴史の本ですが、交換様式という構造で世界史の流れを捉えているのが、興味深い内容でした。歴史上の出来事を断片とせず、背景を様々に考察し、共通項として読み取れることを交換様式というフレームでまとめていくことの面白さ。物量ともに骨のある内容で、通読するのにある程度の時間を要しますが、年末年始という長い休みには良いものでした。続きを読む

    投稿日:2024.01.05

  • アングリマーラ

    アングリマーラ

    このレビューはネタバレを含みます

    8 資本と国家に対する対抗運動は一定のレベルを超えると必ず分断されてしまう。

    23 貨幣(交換様式C)に基づく力は、互酬性や再分配に基づく力とは異なっている。それは、他者を物理的・心理的に強制することなく、同意に基づく交換によって使役することができる。

    33 産業資本は労働者を搾取するだけでなく、いわば自然をも搾取=開発(exploit)している。しかし、この「人間と自然の関係」は人間と人間の交換関係に根ざしている。ゆえに、人間を収奪する国家が最初にあり、それが自然の収奪に繋がることを見ないかぎり、本質的ではない。

    45 互酬的交換Aが支配的な共同体の種類
    農業共同体、宗教的共同体、想像された平等共同体(ネーション)

    54 遊動採取民(バンド)→定住化→農業・灌漑の発展

    第一部 第一章
    互酬性交換の諸様態
    家族内交換、共同寄託、血讐、沈黙交易、外婚制、略奪婚、呪術

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    投稿日:2024.01.01

  • Mkengar

    Mkengar

    本屋でふと目につき、あまり深く考えずに購入しました。その意味では本当に偶然の出会いで、お恥ずかしい話著者のこともまったく知らずに「題名が面白そう」ということだけで購入しました。しかし本書は本当に面白かったです。これだけ読み応えのある本は久しぶりでした。世界史をダラダラと時系列に記述している本は巷にいくつかあるのですが、本書はまさに題名にあるように世界史の「構造」ということで、フレームを通じて世界史を分析されています。具体的には交換様式A、B、C、Dという4つの形式から世界史を紐解いていて、私自身このフレームには初めて触れましたがユニークなだけでなく説得力があるとも思いました。2016年におこったブレクジット、米国トランプ政権の誕生なども念頭に置きながら本書を読むと、なおさらその説得力の高さに驚かされます。
    本書はなるべく読者の読みやすさを意識して書かれているとは思いますが、用語やフレームに慣れないとなかなか読み進められませんが、後半部になるとスラスラ頭に入ってきます。その意味では、もう一度頭から読み直してみると、さらに理解度が深まりそうだと感じましたので、早速2回目読み始めています。
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    投稿日:2023.04.28

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