【感想】アルファベット・ハウス

ユッシ・エーズラ・オールスン, 鈴木恵 / ハヤカワ・ミステリ
(21件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
3
6
8
0
0

ブクログレビュー

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  • NASU88

    NASU88

    このレビューはネタバレを含みます

    特捜部Qの作者のデビュー作。第二次世界大戦中にイギリス空軍のパイロット2人が不時着したドイツで精神病院に偽患者として隠れて過ごし、一人だけが脱出に成功。そして二十数年が経った後の物語。
    スリリングなアイデアと予想もつかない方向に展開するストーリーは素晴らしい。相変わらず名前を覚えるのが苦手なのが悪いのだが、登場人物たちが本名以外に偽名を持ってたりするので本当にややこしい。途中で人物を特定するのを放棄したので、やや面白さを味わうことができなかったかも。
    七四式銃にまつわる話は、まさか東の果ての国で、文化教養溢るる自国の小説が読まれるとは思ってもいないからああいう描写になるんだろうな。少し悲しい。3.2

    レビューの続きを読む

    投稿日:2021.09.29

  • 643096

    643096

    設定にちょっと無理を感じるけど
    読むに堪えないほどの理不尽さ
    もちろん戦争中とはいえ
    これでもかと言う虐待
    タイトルにも違和感
    やっぱりQが・・・

    投稿日:2021.09.22

  • akatenkoban

    akatenkoban

    特捜部Qシリーズの作者、オールスンのデビュー作。第二次世界大戦末期のドイツの病院を舞台にする前半と、それから30年近く経った70年代初めを描く後半の二部構成。第一部ではドイツ軍の機密施設を戦闘機で低空飛行して撮影するという危険な任務を負わされた若いイギリス兵二人が、任務に失敗し傷病者を運ぶ列車に潜り込みドイツ兵になりすまして生き延びたものの、入院先は重度の精神障害を負ったナチ将校たちが収容される特殊な病院で、そこで身を偽りながら精神疾患のフリをし続けるという二重の偽装を重ねて死を免れようとするさまが描かれます。戦争は悲惨なだけでなく犯罪者にとっては通常の世より悪事を働きやすく邪魔者を始末しやすいという側面もあり、主人公の二人の他にも戦時の混乱を利用して私腹を肥やすサディストのグループが前線に送られるのを免れようとやはり偽患者として身を隠していて、目を点けられた若い二人はこの悪人たちに酷い虐待を受けるので、過激な電気療法と無計画な投薬で正気と精気を保とうとするだけでも最悪なのに、読んでいてすごく気が滅入りました。しんどい前半が終わると、後半は映画さながらの展開もあり読みやすいのですが、それでも著者がテーマとして扱った「人間関係の亀裂」が淡々と描かれ、映画のようなハッピーエンドやカタルシスは得られないのでした。それでも続きを読むのをやめる気になかなかなれないあたり、この作家のすごいところだと思いました。面白かった、と素直に言いにくいのですが、大変読みごたえがありました。へとへとになって読了。続きを読む

    投稿日:2021.04.21

  • kotonami

    kotonami

    ユッシ・エーズラ・オールスンのデビュー作。
    「特捜部Q」を読み続けて、やはりデビュー作を読むのは大事かな、きっと面白いだろうと予約していた。手にしてビックリ。レンガ本には負けるが参考文献まで入れて572ページ。面白くなければ読了できない厚さだった。

    第一部

    舞台は1944年、第三帝国を目指して世界を無残な戦争に巻き込んだドイツにも少し翳りが見えはじめている。アメリカ軍の要請でイギリス軍パイロットの二人が複座のマスタングで出撃した。前座にジェイムス、後ろにブライアン。二人は子供時代からの親友だった。
    ドイツ上空で撃墜され、二人は傷を負いながら国境線に逃げ込もうとする。
    ここからが第一部のメインストーリーになる。
    かれらがチャンスとばかりに逃げ込んだのは、ナチ親衛隊の精神的な負傷者を満載した列車だった。二人は服を取り替え患者になりすます。収容されたのは、フライブルグ近くの、軍務に復帰できない軍人を収容した精神病院だった。
    疾患の程度によってアルファベットで区別されていた。彼らが成りすましたのは上級軍人だったが、治療は薬物と電撃で、荒療治のために心身ともに病んでしまっていた。
    中に戦場を避けて仮病を使う成りすましがいた。だが余りの演技に発覚することもなく、病室での二人も同じように心身障害者に成りすます。
    中に特に悪質な三人がいた、彼らはひそかに隠匿した高価な金品を廃線に引き込んだ貨車に隠していた。夜のひそひそ話で、ドイツ語の出来ない二人も感づいてきた。仮病ではないかと疑った三人に拷問に近い暴行を加えられる。前線が近いことを知りブライアンは脱走する。だがジェイムスは過酷な治療と暴行を受けてやんだ精神と肉体は逃げることに耐えられなかった。

    ここまでで、精神病院の過酷で粗雑な治療や、見込みのない患者や、疑わしいと思われた患者が無残に処刑されることを述べる。労働可能と見なせば前線に送り返され、ごみのように処分される。作この第一部は心理描写が多く病院の生活、治療法なども事細かに書いている。主人公たちのストーリーを辿るだけなら少し冗長に過ぎるように思えたが、第二部の前段階として読み込んで置いたよかったと感じた。

    第二部

    28年後、イギリスに帰ったブライアンは医師になり薬剤の研究をして製薬会社を興し家庭を持っていた。彼は手を尽くしてジェイムスを探したが、ヨウとして足跡は見出せなかった。
    帰国してブライアンは本名に戻ったが、ジェイムスは入院当時のままになっていた。
    戦後病院を移り、治療と環境のためにますます精神を狂わせ、自己を殆ど無くした日々だった。ただベッドから起きて筋肉を動かす日課で、かろうじて心体の機能を維持をしていた。
    悪徳軍人の三人は豊富な資金で成功し、残りの参謀的一人は目立たない資金運用でコレも富を増やし、新しい名前を得て平然と市民生活を送っていた。秘密を聞かれたという理由でジェイムスを手放さず、彼は入院時からのゲルハルト・ポイカートをユダヤ系のエーリッヒに改名させられた。ドイツ名前のままだと戦犯だと見なされるかもしれない。

    ブライアンはミュンヘンオリンピックの医師団として、ドイツに行く決心をする。改名した三人にたどり着くまで。
    入院中にジェイソンに惹かれどこまでも付き添っている当時の看護師のぺトラがいた。夫ブライアンの言動に不審を抱いた妻も訪独。
    縺れに縺れた糸が次第にほぐれてくる。
    生死をかけた戦いにジェイムスの病んだ心が何かを感じ取る。彼は緩慢な体を使って、動き始める


    第二部は人探しの謎解きに似た展開で、罪の重さをいかに暴いていくか、一部より展開が速い。


    そして、巡りあった二人は、その幸運を喜んだだろうか。
    ジェイムスは、助けに来なかったブライアンを待ち続け、ついに独り逃げた彼に憎むべきではないと思いながら憎悪が深まっていたことに気づく。
    ブライアンは、探し続けたことに心残りは無い。幼い頃の思い出の岬にたってドーヴァー海峡を見ながら、もう取り返せない月日と、二人の心のすれ違いを目の当たりにして悲しむ。
    ジェイムスはただ憎むのではない、過酷な月日に蝕まれ、心身ともに廃人に化しそうな毎日を耐え抜いた、ブライアンにであっても素直に喜べただろうか。

    将来がいい萌しをもたらすかもしれない、人為的に陥らされた境遇であれば人の心はすぐには癒えず、心は様々に形を変える、まず生きることがあってこそ、どこからか亀裂を埋めるときが次第に訪れるのかもしれない。
    戦争を書かず友情を書いたと言う作者の言葉が添えられていたが、深い絆で結ばれていると思っていても、人は心ならずも目先の感情に負け、捻じ曲げられ救われることの無い闇に迷うのかと、酷く哀しい思いがした。

    最初は「岩窟王」のような復讐譚かと思った、第一部は長すぎるように思い第2部は少し感傷的、だが書かなくてはならない目標に向かったというデビュー作は、最後まで読んで分かる作者の心の反映が理解できた。描写の長さを差し引けばとてもいい作品だと思う。

    「特捜部Q]の最新作を読もう。
    続きを読む

    投稿日:2020.01.05

  • toradesukantia55

    toradesukantia55

    ユッシ・エーズラ・オールスンのデビュー作。
    ナチスの精神病棟を描く前半は、結構しんどかったかな。
    第2部は1970年代になっての話だけど、
    すこーし粗いように思う。
    全体的に、も少し緻密に仕上げればよかったかな~と思う。続きを読む

    投稿日:2019.11.05

  • winder

    winder

    面白かった。二部構成の二部が想像していたより深かった。この作者の作品は、いずれも異なるテーマが突きつけられてくるように思う。それでマンネリ感が薄いのかな?11月の特捜部Qの新刊が出るのも楽しみ。

    投稿日:2018.12.25

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