【感想】陽子の一日

南木佳士 / 文春文庫
(1件のレビュー)

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  • todo23

    todo23

    デビュー作ともいえる短編、文学界新人賞受賞作の「破水」の続編です。
    最近は趣味で始めた山行物が多かった南木作品ですが、今回は元に戻って医療現場を題材にした作品。「破水」では独身のまま子供を産む若い女医だった陽子ですが、この作品では既に還暦を迎え、前線から一歩引いた人間ドックの診療医です。
    そんな陽子の元に届けられたのは元の同僚医師・黒田の半生記風に書かれた奇妙な「病歴要約」。診療の合間にその病歴要約を読み進める陽子の一日が描かれます。
    そこには様々な医師たちの懊悩があります。例えば、黒田は志願して僻地診療に赴き、結果として妻子に去られ、さらには一つの事をきっかけに当の農村の住民にあっさり疎まれるようになります。

    「淡々と」という言葉が浮かびます。結論を表に出さず、情感に流されず、ただただ事象・心象を描く南木さん特有の硬質な文体。若い頃の作品よりやや晦渋さは増したように思いますが、久しぶりに南木さんらしい作品を読んだ気がします。
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    投稿日:2015.08.18

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