【感想】イーハトーブ探偵　山ねこ裁判～賢治の推理手帳ＩＩ～

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宮沢賢治を探偵に据えた「イーハトーブ探偵」シリーズ第二弾。
前作よりも落ち着いて、より、賢治の世界を感じさせる。
人間の弱さが犯す悲しい罪を、賢治も悲しみながら、しかし厳しく暴いていく。
それぞれの作…品が、賢治の作品を彷彿とさせ、あるいは実際に対比として語られたりする。

『哀しき火山弾』
石工会社の社長が、割れた凝灰岩の下敷きになって死んだ。
偶然の事故なのか？

『雪渡りのあした』
宝珠の中にあったはずの仏像が姿を消す。

『山ねこ裁判』
厳重に施錠されているはずの蔵から、高価な品が盗み取られた。

『きもだめしの夜に』
真に人を想うならば。

『赤い焔がどうどう』
真に人を想うならば２。



賢治の作品「貝の火」は、銀河鉄道の夜と並んで好きな作品だが、いまだに理解には及ばない。
これから先もずっと、考え続ける。続きを読む

シリーズ第一作に比べたら
少しトーンダウン？

今回のエピソードの幾つかに
自殺のことが書かれていたが
作中のケンジがそうであるように
賢治もまた、その信仰と妹としの
早世ゆえに、自殺を否定していた。…

やはり作中にとりあげられていた
賢治の童話「ペンネンネンネンネン
・ネネムの伝記」は、完全な形で
出版された「グスコーブドリの伝記」
の前身である。しかし…このブドリの
生き別れた妹ネリは生き続けた。二人
を引き裂いた大冷害を防ごうと、火山島
を人工的に噴火させるためブドリは死ぬ。
作業の最後の仕上げをするためには
誰かが居残る必要があり、居残れば
間違いなく死ぬことをわかった上で
ブドリが志願するのだ。

これは私の卒論のテーマの一つでも
あった。自己犠牲は自殺と違い、肯定
されるものなのか。

この話は、ブドリとネリの物語。妹を
幸せに、世界中のみんなを幸せにする
ために、ブドリは命を捧げるのだ。

妹としの死という、賢治の一生の生き方
を決めた大きな転換点への切り込みが
今作では甘い。

そう感じて読了。続きを読む

前作と同様、探偵役に宮沢賢治、ワトソン役に親友・藤原嘉藤治を据えて様々な事件を解決していく連作短編集。
宮沢賢治の著作と上手く絡めて話を作っている点は相変わらず関心しますが、読んでいる内に概ね予想がつ…いてしまうものばかりで、ミステリーとしてはやや物足りないです。
物理トリックは前回ほど大掛かりではありませんが、【山ねこ裁判】と【赤い焔がどうどう】はなかなか良く出来たトリックだと思います。続きを読む

ケンジと賢治は別の人？そんなに賢治を知っているわけでもないのに賢治らしさを感じる。しゃべり言葉は花巻弁、誰かに音読してもらいたいなと思う。冷静な観察と推測が一体になって答を導き出していました。ますむら…ひろしさんの解説も面白かったです♪♪続きを読む