【感想】P+D BOOKS 廻廊にて

辻邦生 / P+D BOOKS
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • ばあチャル

    ばあチャル

    ♪時の過行くままに♪ 歌詞ではないけれど
    時の魔術師、辻邦生作品、しっとり読みました。
    1962年​から雑誌に発表、近代文学賞を受けて、読み継がれた古い文学作品。

    20世紀初頭、大戦と大戦のはざまにパリに留学した画学生が、ロシア人亡命者の娘、同じ画学生「マーシャ」の人生に惹かれ、才能があるのに寡作だったマーシャの残された日記や手紙で生きた証を辿っていく。

    デラシネの行き交うパリ、芸術を成す人は極小、浮かんで消えていく芸術家。
    しかし、その人の辿ってきた道と心模様の奥深さは、成すとなさざるとにかかわらず、その過程こそ真髄なのだと。
    いってみれば「いま、ここ」が大事なんだ、という思いは仏教の教えに通じる。

    ヨーロッパという地形でみれば、国境、人種、言葉のモザイク状態で、権勢によって境目が移動する。
    その中で翻弄されている人々が、現在でもどんなに多く居ることか。
    それはウクライナ侵攻のニュースに触発された現在の知覚だけれども、100年前とも変わらないのだと、そこに普遍性を見た。
    成すことが出来なくても、そのたどる道もその人間の本質でもあると、「時のたっていくこと」を言い尽くしているような作品。

    入り組んだ構成の文学らしい文学作品。
    30年前、女子学生に人気がある作家と聞いた記憶が…、この作品で納得した。
    寄宿舎でマーシャの親友となったアンドレの中性的な魅力がなんとも秀逸なので。
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    投稿日:2023.07.13

  • yoshidamasakazu

    yoshidamasakazu

    著者が描きたかったのは 生命の燃焼感の美しさ だと思う。モノクロの世界に 生命だけが 赤く燃えている感じの小説


    時代や社会がつくりだす虚無の中で 自分の内面から 燃焼する生命は なお一層 美しく見えるし、死んでもなお、美しさを まわりの人の心に 残している


    特に 7章の人生観は 再読 価値大。この章が 著者が伝えたかったテーマ。死や苦悩とともに強く生きることが美しさ

    カタカナ文章のねらいは 場所や時代の変化を 表現したかっただけなのか 考え中。いい物語なので、読みにくいカタカナは残念
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    投稿日:2019.04.04

  • P+D BOOKS

    P+D BOOKS

    ▼電子立ち読みあります▼
    http://shogakukan.tameshiyo.me/9784093522250

    女流画家を通じ、“魂の内奥”の旅を描く。  

    異例の才能を持ちながら埋もれていった亡命ロシア人女流作家マリア・ヴァシレウスカヤ(マーシャ)の内的彷徨を描く辻邦生の処女長編作。  

    少女期に出会った魅惑的な少女アンドレとの痛みを伴った甘美な愛を失い、結婚に破れ、つねに芸術の空しさを苦汁のようになめながら、生の意味、芸術の意味を模索し続けた、寡作の画家マーシャの短い生涯を、彼女が遺した日記や手紙から辿る伝記風スタイルを用い、清冽な筆致で描いた作品。  

    敬虔で慎み深く、絵の才能を持て余すマーシャと、身体が弱いために生に焦がれる無鉄砲なお嬢さまアンドレ、孤独を抱えるふたりの交流がとても丁寧に描写されている。第4回近代文学賞受賞作。
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    投稿日:2016.04.11

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