【感想】漱石書簡集

三好行雄 / 岩波文庫
(10件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • B_dur

    B_dur

    森見登美彦の作品を濫読する中で、「漱石の書簡は面白い」と紹介されてたのがきっかけで、この本を手に取った。
    夏目漱石といえば国語の教科書で触れた程度で、作品も人柄もほぼ知らないと言っていい自分が、いきなり書簡集なんぞ読めるものかという恐れもあった。
    事実、開いて暫くは、自分の知識の乏しさから候文のような文語体や独特の漢字使いをろくに理解できず、内容を理解できている自信のないままページを捲っているような状態だった。
    しかしそれでも、なんとなくではあるが、漱石の喜怒哀楽であったり主義主張が薫ってくる気がして、読み進めるに連れてそれは顕著になっていった。
    言文一致になってからはより確かなものとなった。
    これも偏に漱石の書簡が、文学的で多彩な表現はありつつも、その心情をとても素直にしたためていたからこそだろう。
    なるほど確かに漱石の書簡はそれだけで文学作品足り得る、等と生意気にも心地良く腹落ちした
    ところで読了となった。
    こうして漱石の人となりに触れて、小説にも手を出せそうな気がしてきたのが、錯覚ではない事を祈る。
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    投稿日:2020.09.04

  • betchy

    betchy

    某文学館で「夏目漱石の手紙」の展示をやっていて、見に入ったら思いのほか面白く、ミュージアムショップで買ってしまった本。

    手紙が好きでものすごくたくさん書いた漱石。
    友人の正岡子規。妻の鏡子。後進の芥川龍之介――そのほかたくさんの人々に、実にいろいろな手紙を書いています。
    手紙というのは書き手の人となりが如実に表れるもの。
    漱石の手紙には、意外にも、正直さと、相手を思う気持ちと、何よりもユーモアがあふれています。
    自虐的であったり、シニカルであったりしても、常にサービス精神が見え隠れしているところが魅力。
    妻への小言とか友への愚痴とか、若者への羨望とか、いろいろありながら、そこには漱石の相手を思う気持ち、がきちんとある。

    文学館の人は言っていました。
    手紙をもらった人たちが、漱石から手紙をもらったことが嬉しくて大切にとっておいたから(あるいは、なんだか捨てられなかったから)こそ、こうして100年後の私達が読むことが出来るのだ、と。

    いろいろいい言葉がちりばめられているので、これからも時々読み返す本になりそうです。
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    投稿日:2017.12.28

  • orinori

    orinori

    昔の文体で、初めは読みづらく感じましたが読み進めるにつれ漱石の個性がわかってきました。
    極貧で奥様にも苦労をかけつつ、自分のやりたいことを探し続け、返事も書きなさい、みたいな寂しがりの一面も見え、人間らしさをかんじます。
    お金のないことは問題でなく、正岡子規への手紙など、当時の手紙は単なる近況報告ではなく、想いを届ける大切なコミュニケーションだったことが伝わってきます
    こういう手紙もらったり、書いてみたいなあ。
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    投稿日:2017.02.19

  • きゆ

    きゆ

    夏目漱石。1867年2月29日(慶応3年1月5日)〜1916(大正5)年12月9日。明治22年22歳から、満49歳の没年までに書かれた書簡集。

    古い文章はさすがに難しくきちんと理解して読めなかったと思うけど、友人知人、門下生、家族、いろんな人たちへの心配りや暖かさが感じられる書簡が158通。

    目を引いたのは家族、妻の鏡子宛、娘の筆子、恒子、えい子宛。友人や門下生では、正岡子規、高浜虚子、他に、寺田寅彦、鈴木三重吉、津田青楓、中勘助、徳田秋声、武者小路実篤、芥川龍之介宛。


    「書簡ほど漱石を、漱石のままに表現しているものはない(中略)単独に書簡だけを読んで、其所から一貫した漱石を発見するのも、また興味深い仕事たることを失わない。(中略)此処にこそ最も自然な、また最も自由な漱石があるからである。」(解説より抜粋。小宮豊隆『漱石全集』解説)
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    投稿日:2016.06.19

  • なで肩

    なで肩

    約15ヶ月かけて、ちまちま読了。漱石が22歳~没年の間にしたためた158通の書簡。
    興味深かったのは英国留学中の書簡。異国の描写に漱石の思いが見え隠れして楽しい。
    芥川龍之介らに向けた「ただ牛のように図々しく進んで行くのが大事です」は秀逸。続きを読む

    投稿日:2013.01.18

  • ruoka

    ruoka

    全てを熟読したわけではないけれど、読了。
    侯文はむつかしい。言文一致体に慣れすぎているからなぁ。
    以下、つらつら書き。

    本書は三好行雄さん編集。
    カバーに、「漱石の手紙を読むと、この類まれな人物のあらゆる心の動きがその温もりとともに伝わってくるように感ずる」とあるように、夏目漱石の人となりに触れることができる。

    はじめは子規とのやり取りが主。だんたんと思わしくなくなる子規の様子と、それを気にかける漱石が切ない。
    奥さんの鏡子さん。悪妻と評されることもあるようだけど、二人のやり取り(手紙は漱石のものだけなのだが)を見る限り、いい按配な気はする。
    父親然した漱石は新鮮。

    高校教師の時やロンドン留学、大学の講師、新聞職・・・「金がない」が口癖のようで、何だか可笑しい。

    そうして教職に就くこと、愛媛や熊本など地方に赴くことをとても嫌がっている。
    そういう「嫌なものは嫌」という姿勢は、少しだけ、『坊ちゃん』のイメージと重なる。

    書簡は、次第に漱石門下に宛てたものが多くなる。
    遠慮がないものや、慇懃なもの、説諭めいているもの。
    漱石は慕われていたんだなぁといったことが感じられた。
    中勘助の『銀の匙』、島崎藤村の『破戒』・・・褒められていたこれらを読んでみたいな。

    後半は芥川龍之介登場。
    なるほど、どちらも文豪のイメージではあるが、どのくらい時代が違っているか、なんとなく感じることはできた。
    このへん(漱石五十代)になると漱石も大人になったね、と思えてくる。
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    投稿日:2012.12.17

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