【感想】漆黒の森

ペトラ・ブッシュ, 酒寄進一 / 東京創元社
(12件のレビュー)

総合評価:

平均 3.3
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3
2
1
1

ブクログレビュー

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  • じゅう

    じゅう

    ドイツの作家「ペトラ・ブッシュ」の長篇ミステリ作品『漆黒の森(原題:Schweig still, mein Kind)』を読みました。

    「フェルディナント・フォン・シーラッハ」、「ハラルト・ギルバース」に続きドイツ作家の作品です。

    -----story-------------
    取材で黒い森(シュヴァルツヴァルト)を訪れた編集者の「ハンナ」は、トレッキングの最中に女性の死体を発見してしまう。
    被害者は10年前に村を出て帰郷したばかりの妊婦だったが、胎児が消えていた。
    村に伝わる“鴉谷(からすだに)”の不吉な言い伝えや、過去の嬰児失踪事件と関わりが? 
    堅物の刑事と敏腕女性編集者が、閉ざされた村での連続殺人を解き明かす。

    ドイツ推理作家協会賞新人賞受賞の清冽なデビュー作! 
    解説=「穂井田直美」
    -----------------------

    「ペトラ・ブッシュ」のデビュー作で、ドイツ推理作家協会賞新人賞を受賞した作品で、「エルリンシュピール首席警部」と「ハンナ・ブロック」が活躍する物語、、、

    「モーリッツ・エルリンシュピール首席警部」と「ハンナ・ブロック」のシリーズは現在のところ3作品が刊行されているらしいです。


    トレッキング・ガイドブックのための取材中に出版編集者「ハンナ・ブロック」は南ドイツに広がる<漆黒の森(シュヴァルツヴァルト)>の一角、鴉谷(からすだに)で若い女性の遺体を発見する… 女性は妊娠していたが、腹部を切り取られ、臨月前の胎児が連れ去られているという猟奇殺人事件であった、、、

    犠牲者は地元の小村の村長「ヘルマン・ゾマー」の妹「エリーザベト・キューン」で、ここ10年前に村を出て消息不明となっていた人物だった… ベルリンで幸せに暮らしていた彼女は、父「ヨーゼフ」の60歳の誕生日を祝うために村に戻ってきていたのだが、彼女の帰郷は村に深刻な事態を引き起こすことになってしまった。

    フライブルク刑事警察の主席警部「モーリッツ・エルリンシュピール」らが捜査を始めるが、よそ者を受けつけない閉鎖的な村人たちを前に捜査は難航する… 「ハンナ」もまた、疼き出したジャーナリスト魂の赴くままに独自に聞き取り調査を進める、、、

    「ハンナ」が村人たちから得た情報や、「モーリッツ」粘り強く聞き込みにより、村に伝わる鴉谷の不吉な言い伝え ―理不尽にも無実の罪で絞首刑となった男の亡霊が鴉男として彷徨っているという重苦しい伝承― や、10年前の嬰児失踪事件 ―当時16歳だった「ジーナ・フォーゲル」が出産したが、愛児「フェリクス」は生後4日目に何者かに連れ去られた― が明らかになってくる… また、被害者「エリーザベト」の実家「ゾマー家」は複雑な家庭環境で、自閉症の末息子「ブルーノ」を溺愛する母「フリーダ」や、事あるごとに「フリーダ」と対立する夫の「ヨーゼフ」と長男「ヘルマン」とその妻「レナーテ」が奇妙なバランスの上に成り立っていることも判明する。

    容疑者として、「エリーザベト」の幼なじみで、彼女の遺産を相続することになっていた「ジーナ」、「エリーザベト」の元恋人で村内で最後に「エリーザベト」と会っていたこと「ヨハネス・バイヤー」、そして自閉症で状況によっては手が付けられないことのある「ブルーノ」等が浮上する、、、

    そんな中、第2の殺人事件が発生… 容疑者のひとり「ヨハネス」が「ブルーノ」が花を栽培している温室で撲殺され裸となった姿で発見されたのだ。

    そして、現場検証を行う中で、「ヨハネス」のものではない肉片が温室から発見され、それは「エリーザベト」の胎児のものと特定される… また、「ゾマー家」の冷蔵庫からルミノール反応が出て、その血液も同じ胎児のものと特定されたことから、容疑は「ブルーノ」に向けられる、、、

    漆黒の森で何が起きているのか? 閉ざされた小さな村に隠された忌まわしい秘密とは何か?

    10年前に発生した「ジーナ」の愛児「フェリクス」の失踪事件の真相や、16歳で出産した「ジーナ」を妊娠させた相手が判明すること等により、徐々に事件の全貌が明らかになる、、、

    取り調べの中で、「ブルーノ」が単なる自閉症ではなく、ある特定の分野に限って優れた能力を発揮するサヴァン症候群であり、その天才的な分野を兄「ヘルマン」に利用されていたことが判明… 「ブルーノ」は、従順で純粋だっただけなんですよねぇ。

    なかなか哀しい結末でした、、、

    村の伝承や行事、閉鎖的な村社会での絡み合うような人間関係… という古い部分と、警察の鑑識技術、科学捜査、調査、分析結果… という新しい部分が、巧く組み合わされて、深みが感じられる作品でしたね。

    事件を追う「モーリッツ・エルリンシュピール首席警部」と「ハンナ・ブロック」の対照的な行動が絶妙に組み合わされて真相が明らかになり、当初、反発しあっていた二人が、その過程で、お互いが惹かれ合っていく展開も、2作目以降に期待を抱かせる内容でした、、、

    2作目以降も読んでみたいけど… まだ本作しか翻訳されていないようなので残念です。



    以下は、主な登場人物です。

    「ハンナ・ブロック」
     ハンブルクから来た編集者

    「モーリッツ・エルリンシュピール」
     フライブルク刑事警察首席警部

    「パウル・フライターク」
     フライブルク警察警部

    「ラインハルト・ラーソン」
     法医学者

    「ルーカス・フェルバー」
     鑑識課課長

    「ロレーナ・シュタイン」
     上席検事

    「モニカ・エーヴァース」
     地元の派出所の上級巡査

    「ヘルマン・ゾマー」
     村長

    「エリーザベト・キューン」
     ヘルマンの妹

    「ブルーノ・ゾマー」
     ヘルマンの弟

    「レナーテ・ゾマー」
     ヘルマンの妻

    「ヨーゼフ・ゾマー」
     ヘルマンたちの父

    「フリーダ・ゾマー」
     ヘルマンたちの母

    「ジーナ・フォーゲル」
     エリーザベトの親友

    「アントン・フォーゲル」
     ジーナの父親

    「ダーヴィット・ラヴィー」
     ジーナの恋人

    「ヨハネス・バイヤー」
     エリーザベトの元恋人

    「マルガレーテ・バイヤー」
     ヨハネスの妻

    「ベルタ・ヴェーバー」
     村の老婆

    「ブラント」
     村の医師

    「ヴィリ」
     熊手亭の店主

     
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    投稿日:2022.11.26

  • saigehan

    saigehan

    はあ長かった。ちょっと変わった感じのミステリ。ドイツっぽい、感じもしない。タイトルもあんま関係ない。都会で敏腕編集者として活躍していた女性が仕事と私生活でポシャリ、やっと見つけた裏山道企画のために田舎にやってくる。死体見つける。この人ごっそりいらなかった。話をわかりずらく、読みにくくしただけ。元々の田舎の閉鎖的な環境で起こった殺人事件を、内輪でやれば良かったのに。まあそれだと普通なのか?いや、人物などを掘り下げれば充分だと思うよ。デビュー作らしく、色々惜しい作品で、もう一回じっくり書き直せば素晴らしそう。続きを読む

    投稿日:2020.09.18

  • usadon2162

    usadon2162

    Romaneシリーズ① 
    ハンナ(フリーの編集者)&モーリッツ(刑事警察主席警部、猫好き)の相棒もの

    ドイツの小さな村が舞台 
    ブルーノの独白に引き込まれた 
    モーリッの亡くなった親友の母親ロレーナ検事やラインハルト法医学者に興味がわいた 
    次作では彼らの事も掘り下げられていくのかな 次作も読みたいな、っていつになることやら…
    ドイツ推理作家協会新人賞受賞
    続きを読む

    投稿日:2017.08.16

  • bosch

    bosch

    女性が殺され、胎児が奪われるという猟奇事件が発生。ドイツの閉鎖的で因習に囚われた田舎町を舞台に刑事の苦闘を描く。多彩で陰影に富んだキャラも豊富だし、10年前に起きた”事件”の真相も見え隠れするストーリー展開でラストまで飽きずに読める。
    しかし、女性作家のせいなのか主人公の心情があまりにも頑固で狭量だし、捜査自体が単純で今一共感できない。又、自閉症の一人称はさすがに読みづらい。話自体も主人公やヒロインの私生活をも描いて幅はあるが、その分話が冗長になったきらいはある。
    全体としては、ストーリーの骨格もしっかりしているし、10年前の事件の真相、今回の事件の真相ともにスッキリ謎は回収されているうえ、情感のあるラストはうまい。
    このシリーズは次作に期待。
    しかし、現代のドイツでも田舎に行けばこんなに閉鎖的なんだろうか?猟奇的な殺人に、寒々とした描写はどこか北欧小説と似ている。
    ドイツって、今までマルティン・ベックとかフィジックとか限られた作品しか読んでないからなぁ。
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    投稿日:2017.02.06

  • wordworm

    wordworm

    このレビューはネタバレを含みます

    ドイツのミステリ、シリーズ第一弾。
    ちょっとサイコな始まりだったけど、最後まで楽しませてもらったよ。
    こういう閉ざされた村での事件という設定は数多あるけれど、飽きさせず読み進めさせる力量は大したもの。
    強いて言えばヒロインのハンナの描き方が甘いかな、とは思ったかな。
    彼女や彼の過去の詳細は今後に期待。

    うーん、でも犯人はやっぱり、ちょっと唐突というか。
    や、別に不思議ではないのだけど、その前の書き方との繋がりがね。
    何にせよ、次作が楽しみだ。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2016.11.11

  • lenttissimo

    lenttissimo

    猟奇的な殺人、村に伝わる呪いの伝説、閉鎖的な村社会…と設定は盛り沢山だが、全てがあまり上手く噛み合っていないという印象を受けた。引きが弱いというか。

    投稿日:2016.04.23

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