【感想】学校では教えてくれない日本文学史

清水義範 / PHP文庫
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 1705264番目の読書家

    1705264番目の読書家

    古事記から現代文学までの日本文学史の流れと、変容しながらも日本文化の根底にある価値観みたいなものの理解を深められた。

    古事記の美しさと醜さを同格に論じるところ、源氏物語の短歌と敬語が頻繁に用いられるところ、枕草子や方丈記や平家物語などの滅びの美さ、奥の細道の陰を醸し出す紀行文学。

    日本はやはり、奥ゆかしさの美学があるのだと感じる。美しさは「生きるために必要なもの(福岡伸一)」であると考えると、奥ゆかしさがないと生きることができない国民性を日本人は身につけている。つまりは日本人の礼儀正しさや集団主義だ。

    そのような感性が仕上がったのは、封建制度や貴族文化など人間の手によってつくられるもの以上に、どうしても太刀打ちできない大自然がどの時代にもあったからではないか。

    文学がこの感性の形成にさほど影響を及ぼしているとは思えないのだが、その時代性を表した文学からは日本文化の成熟のプロセスを垣間見ることができる。

    これからも文を書く人・読む人が途絶えない限り、文学の価値はあり続けるだろう。未来に継続できるように平和な世界であってほしい。

    流れが掴めればよかったので各文学作品の内容は読み飛ばしてしまったが、いつか有名どころはそのよさを噛み締められたらいいな。
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    投稿日:2022.09.23

  • ksk84

    ksk84

    日本文学の歴史をざっくりと知りたいなー…と思い見つけた本作。

    いやー、めちゃくちゃ分かりやすくて良い本だったな(笑)
    大枠で流れを掴みたいって目的にビタっとハマってる感じ。

    YouTubeとかで調べてみたりもしたけど、本業で文学に携わられている方の本の方が情報量があるし、分かりやすくて理解が早かったように思う。

    以下、本作の内容+自分の解釈&補足も入れて分かりやすいようにまとめる。

    あとは、コレを軸にして各作品を実際に読みながら理解を深めて行こうかね…(´∀`)

    <まとめ、考察>
    ・奈良時代、712年、古事記、太安万侶、現存最古の歴史書、神話と伝説と歴史をごちゃ混ぜにして聖徳太子までを描く、女性っぽいと評される日本文学の中では骨太な本、筋・ストーリーがしっかりしている、自分たちの民族がどのようにして生まれて文化を築いてきたかという神話を持っていることは自信と余裕に繋がる

    ・平安時代、1008年、源氏物語、紫式部、世界的に見ても見事な構成と完成度、光源氏のモテモテ長編小説、この時代に昼ドラもビックリの骨太&ドラマチックなストーリー構成が魅力、自分の父の妻と密通し罪の子をなす、そして最終的には自分も同じ目に遭う、等々

    ・また、源氏物語では男女が短歌のやり取りをするのが特徴、短歌のやりとりは現代で言うメールのやり取り、日本人はメールが好きなのはここを起源にしているのではないか、確かに分かる気がする(笑)

    ・平安時代、1001年、枕草子、清少納言、日本第一号の随筆であり、今で言うエッセイ、思いつく端から美的センスの見本帳のような作品、以後の日本のエッセイもこの祖に強く影響される、筆者曰く随筆とはセンス自慢らしい(笑)

    ・鎌倉時代、1212年、方丈記、鴨長明、日本第二のエッセイ文学、主題を「人の世は無常であり、はかない」としそれを伝えるために全体の構成が組まれる、世の中は儚いので世捨て人の生活(今の自分の)が幸せなのでは?的な作品

    ・鎌倉時代、1310年、徒然草、吉田兼好、おっさんが思いつくままに世間をボヤくスタイルで書く、現代のエッセイの方向性を決めたのは本作、今で言う「喝」的なやり口(笑)

    ・鎌倉時代、1240年、平家物語、琵琶法師が語ったものをまとめたもの、日本の二代軍記文学の1つ、一度は反映した平家一門の滅びを描きながら、滅びの美と悲しみを主眼としてストーリーを展開する

    ・室町時代、1370年、太平記、作者不明、日本の二代軍記文学の1つ、エネルギッシュな勧善懲悪の大衆劇

    ・江戸時代前期、1702年、奥の細道、松尾芭蕉、日本の紀行文学の最高傑作、紀行文であると同時に、俳諧の神髄にまで読み手を導く芸術論の書でもある

    ・江戸時代前期、1682年、好色一代男、井原西鶴、「一般人が主人公」の恋物語を始めて書きコレが大衆文学の走りに、今までは上流階級のものだった文学が初めて町人という一般人にも親しまれるようになった時代、そういった意味で「大衆」が付く、「源氏物語」をパロディーしている

    ・江戸時代前期、1703年、曽根崎心中、近松門左衛門、歌舞伎と浄瑠璃で厳密に言うと小説では無い、井原西鶴と同じく一般人が主人公を描いたという点で大衆文学の走り、ちなみに浄瑠璃は人形劇

    ・江戸時代後期、1802年、東海道中膝栗毛、十返舎一九、滑稽本、旅行記だが言葉の悪ふざけを楽しむ、軽薄な江戸っ子の主人公二人が、まるでゲームのように洒落や皮肉や掛け詞で遊んでいる様子を笑って読む本、日本初の職業作家、著作料だけで生計を立てたプロ作家

    ・この時代、洒落本(遊里でモテるためだけのハウツー本)が流行ったらしい、いわゆる現代のホットドッグプレス(もはや死語)的な存在か、そんな本があったこと&時代が変わっても人間が考えることって変わらないんだなと思うとウケる(笑)

    ・明治時代、1887年、浮雲、二葉亭四迷、写実主義、言文一致(今まで異なるものであった文語と口語を一致させた文章で小説を書きましょう)の活動の走り、坪内逍遥も同様、小説家になると父に告げたときに「くたばってしめえ」と言われてことに由来にこの名前になったとのこと

    ・明治時代、1905年、吾輩は猫である、夏目漱石、反自然主義、この人物が現代の文章を完成させた、司馬遼太郎曰く「一つの文章で日米貿易摩擦についての社説を書くこともできれば、自分の感情を小説にすることもできる」とのこと、1905年の小説が現代語訳無しで今の中高生が笑って読めるという事実は驚異的なこと、「だ」、「である」体の確立、江戸は町人文化、今まで学がなかった人にまで文学が広がったことが大きい、明治は質へと移行した

    ・明治時代、1890年、舞姫、森鴎外、ロマン主義、もう一人の明治の大文豪、軍医としても活躍、和文調と漢文調をミックスした雅文体と呼ばれる知的で美しい文章、筆者曰く「真面目すぎる」作家らしい、後半の作品は難解過ぎてなかなか売れなかったらしい(笑) 

    ・明治時代、理想主義+ロマン主義、理想主義は樋口一葉・幸田露伴等、ロマン主義は森鴎外、登場人物みんな善が理想主義、みんな善では無いけどロマンがあるのがロマン主義

    ・明治時代、蒲団等、国木田独歩、田山花袋、島崎藤村、自然主義・私小説、漱石&森鴎外の逆を行く自然主義・私小説の台頭、偉いエリート作家が逆に本音を晒して告白するという形が「これが人間の真実だ、文学とはこういうものなんだ」というカタチで一部にウケる

    ・明治時代、1910年、雑誌「白樺」の白樺派が台頭、武者小路実篤、志賀直哉等、学習院卒のおぼっちゃま文学、生きるってなんだろう?を問うた文学、筆者曰く、文章は美しいが思想が無い、世間とかけ離れている、根底に優越感を持っている男の苦悩には説得力がない、とのこと(笑)

    ・明治、大正時代、1915年、羅生門、芥川龍之介、新思潮派、「新思潮」は東大のインテリ集団の作家志望の学生による雑誌、今昔物語集のように、本歌取りの形式で小説にすることが多い、時が流れても古びることのない、ある種の永遠性を持った作家

    ・明治、大正時代、1925年、痴人の愛、谷崎潤一郎、耽美派でエロい、変態だけど圧倒的な筆力、そして文章の美しさを持った偉大な文豪、根本は母恋しの自信家で女性崇拝を一生描き続けた、筆者は無類の谷崎潤一郎ファンらしい(笑)

    ・明治、大正時代、1926年、伊豆の踊り子、川端康成、新感覚派、日本初のノーベル文学賞作家、と同時に超変態、伊豆踊り子はロリコン文学、東大の教養課程に通う主人公が14歳の旅の芸人一座の踊子にハマるという話、筆者曰く「谷崎は自分の嗜好を絢爛たる物語にして読者をそこに引きずり込んだ、川端はなんとなく美しい物語になっているのだが、何をよしとしているかどうもよくわからん」とのこと(笑)

    ・特に明治時代は「〜派」が色々と登場してくるけど、ざっくり分けると「理想を描く派」と「現実を描く派」があるという理解で良いような気がする

    ・昭和時代、1929年、蟹工船、小林多喜二、プロレタリア文学の台頭、筆者曰く「労働者のための運動の一環としての文学、政治パンフレットは文学ではない」とのこと(笑)

    ・昭和時代、1948年、人間失格、太宰治、無頼派、私小説を新たな地平にまで高めた人、女性的な文体、文章の名人であり、どんなことでも物語にしてみせる才能、ただ繊細すぎる神経のせいで書けることが限られており、生涯にわたって巨大なきまりの悪さを抱いて生きた人

    ・昭和時代、1956年、金閣寺、三島由紀夫、戦後最大の文豪、天才の文学、技巧と修飾性に満ち満ちている、金閣寺は作品としても圧倒的

    ・筆者曰く、日本文学は私小説のルートに入ってしまっただけに、世界とは少し路線の異なるルートをたどって気しまったのではないか、とのこと

    ・昭和時代、戦後、1955年、太陽の季節、石原慎太郎、芥川賞を受賞して社会現象に、有産階級の青年のニヒリズムと性を描く、不良の文学だと非難する保守派もいたが、圧倒的に新しいという価値もあった、兄の石原裕次郎がその小説を映画化した作品でデビューしたことでも有名、太陽族もここから

    ・昭和時代、戦後、1958年、飼育、大江健三郎、こちらも芥川賞、大いに寓話的であり、奇妙なビジョンに満ち満ちている、きらびやかなフィクションに見えるが、元は私小説、世界に通用する形で語られた日本独自の世界に通用する私小説

    ・昭和時代、戦後、井上ひさし、直木賞でスタートした作家、日本文学史に大きな足跡を残した人物、小説も有名だが人形劇「ひょっこりひょうたん島」の脚本家としても有名

    ・昭和時代、戦後、 1979年、風の歌を聴け、村上春樹、翻訳小説のような文体で、サブカルチャーのように身軽に、心地よい夢のような小説をつむぎ出せる、ノルウェイの森の売れ方は昭和末期の事件のようですらあった、売れ方が文学的現象というよりも大きな社会現象レベル

    ・丸谷才一曰く、日本文学は伝統的に3パターンがやって来ている、今の作家に当て嵌めると、実験的に新しい文学を模索しているのが村上春樹であり、私小説をやっているのが大江健三郎であり、プロレタリア文学をやっているのが井上ひさし、とのこと

    ・主に純文学の系譜であったが、大衆文学も価値があるものであり、その中でも時代小説(歴史物)、推理小説、SFについて言及する

    ・歴史物には2パターン、時代小説と歴史小説、時代小説は「侍のいなくなった明治時代以降に、侍のいた時代を舞台にして書かれた小説」、歴史小説は「歴史上の実在の人物を主人公にして、その業績や運命を描くもの」

    ・司馬遼太郎、歴史小説を確立した国民的作家、竜馬がゆく、坂の上の雲等、だんだんに日本のあり方を考える文化人のような感じになっていった人

    ・推理小説、ジャンルを確立したのはアメリカの作家、エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」、日本だと江戸川乱歩が確立、推理小説の定義は江戸川乱歩曰く「主として犯罪に関する難解な秘密が、論理的に、徐々に解かれて行く経路の面白さを主眼とする文学」、明智小五郎を誕生させたのもこの人、本格物と俗物者両方を書けた人、推理小説が今もこの2パターンあるのはこの人の功績なのかもとのこと、ちなみに戦前は「探偵小説」だったが、常用漢字の中に「偵」の字が無かったので変更された、超能力系は「論理的に」に反するのかと

    ・推理小説、松本清張、「社会派推理小説」を確立して推理小説を広く大人の読み目にした、単なる謎解きだけの推理小説ではなく犯罪の背後にある社会のゆがみや人間の欲望をさらけ出す手法

    ・SF、サイエンス・フィクションの略、空想科学小説と訳される、柴野拓実が日本SFの母

    ・筆者曰く、世界文学集に入れると5人選ぶとしたら、紫式部、夏目漱石、井原西鶴、谷崎潤一郎、大江健三郎、とのこと

    ・古典を読むのは良いが、いわゆる「現代語訳」ってのは当然文章が変わってしまっているわけなので、ちょっと意味合いが変わっているのかな?という気もした、文の美しさとかは分かりにくいのかなと

    ・当たり前だが、この本も作者の好み・思惑が入っているので、コレ以外にも情報を仕入れながら+自分の感覚で確かめて行った方が、全体をフラットに理解できる気がした

    ・筆者の好み(というか今まで読んできた作品に)により、女性の文学はほとんど入っていないとのこと(笑)

    ・読みたくなった作品は、源氏物語、枕草子、徒然草、奥の細道、好色一代男、吾輩は猫である、痴人の愛、伊豆の踊り子、金閣寺、飼育、あたりかなぁ…

    <内容(「BOOK」データベースより)>
    「祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅双樹の……」「つれづれなるままに、日くらし、硯にむかひて……」など、授業で暗記させられた人も多い名作の数々。
    これら日本文学を一冊で語るなど、到底不可能な話なのだが、本書はそれを思い切ってやってしまおうというもの。
    『古事記』は日本人の原型の文学、敬語表現で書かれている『源氏物語』の不思議、『徒然草』はジジイの自慢話!? 紀行文学は悪口文学、漱石は現代の文章を創った、川端康成は変態作家? など、『古事記』から村上春樹まで日本文学史をザックリ大づかみ。
    その作品を読んだことのある人にとっては、あそこは面白かった、と合点してもらえる、読んでいない人にとっては、そんなにいいのなら読んでみようかな、という気がしてくる、日本文学の入門の入門書。
    清水流、絶対眠くならないエンターテイメント日本文学史12講義。
    『身もフタもない日本文学史』を再編集。
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    投稿日:2021.09.14

  • hs19501112

    hs19501112

    読み終えてからレビューまでに間が空いてしまったため、少々感想が薄れてしまったが…(苦笑)。

    古事記の昔からの文学の流れが分かりやすく解説されていて、楽しく読めた。

    源氏物語や方丈記などの現代語訳、機会があれば読んでみたくなった。

    ★3つ、7ポイント。
    2018.11.30.古。
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    投稿日:2018.12.10

  • oyumy

    oyumy

    清水義範さんの、別の本(名前がいっぱいというやつ)が欲しくて本屋に行ったけど、どこに行ってもなくって、仕方なくというと変だけどこれを買いました。

    特に驚くようなことはなかったけれど、エッセイは 「負け惜しみの自慢」という解釈がすごく納得がいきました。続きを読む

    投稿日:2014.05.27

  • wasabi

    wasabi

    『古事記』にはじまり『源氏物語』『枕草子』『方丈記』『徒然草』『平家物語』『太平記』それぞれの持つ意義、魅力について著者独自の視点で伝えてくれる。

    投稿日:2014.02.28

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