【感想】カクテル・パーティー

大城立裕 / 岩波現代文庫
(13件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • にこ

    にこ

    このレビューはネタバレを含みます

    ⚫︎受け取ったメッセージ
    国家間の争いは、個人的な感情や生き方に計り知れない大きな影を落とす。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    米国統治下の沖縄で日本人、沖縄人、中国人、米国人の四人が繰り広げる親善パーティー。そのとき米兵による高校生レイプ事件が起こり、国際親善の欺瞞が暴露されていく――。沖縄初の芥川賞受賞の表題作のほか、「亀甲墓」「棒兵隊」「ニライカナイの街」そして日本語版初公表の「戯曲 カクテル・パーティー」をふくむ傑作短編全5編を収録。


    ⚫︎感想

    親善パーティーの最中、同じ時間に米兵にレイプ被害にあった娘。その親交の下に覆われた互いの悲哀と憎悪を一体、一個人としてどう向き合えばいいというのだろう。

    彼は、父親として、娘に苦しい思いをさせてもなお、戦わなければならないと、問題に蓋をせず、真っ向から向き合う選択と決意をした。一個人としてでなく、未来の沖縄を背負う責任ある生き方と覚悟を、「人間としての義務」を全うしようとする姿に心打たれた。

    後半の「おまえ」という強い語りは、自分に置き換えて考えなければいけないという感覚になるし、そうならなければならないと思った。現在、日本は、本土に住み、身近に基地もない場所に住んでいる人が多い。この著作が多くの日本人に読まれることを願う。

    本書をきっかけに、日米地位協定について改めて調べた。また、実際沖縄復帰後の沖縄県の高校生たちが議論を交わす番組もYouTubeで視聴した。未だ変わらない日米地位協定の内容。沖縄には今も米軍基地が日本全体の7割が存在している。知識として持っているだけではなく、実際の声を聴くことが大事だと改めて思った。

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    投稿日:2023.11.05

  • のぶ

    のぶ

    沖縄を舞台に、人々が戦争や米軍、本土とどう向き合ってきたかを描いた小説。短編の連なりで、相互に関係はしてないけど、様々なタイムシフトの中で米軍への向き合い方が変わってきたことを感じました。

    投稿日:2023.08.11

  • 真琴

    真琴

    このレビューはネタバレを含みます

    著者は中国で20歳の時に敗戦を迎え、表題作で沖縄県出身で最初の芥川賞を受賞した作家。(1967年)
    沖縄が本土へ復帰する直前に、沖縄人、日本人、中国人、米国人の4人の男性が親善という名の元欺瞞に満ちたパーティーを行う。そんな中、沖縄人の娘の米兵によるレイプ事件が起きる。 今年で沖縄が本土へ復帰して50年になるがいまだに同じような事件は後を経たない。しかし、そこでは被害者である日本人と加害者である米国人という関係性が成り立つが過去には同じようなことを日本人も中国で行っている。
    本文中の「どちらも被害者であると同時に加害者だということを自覚することでしか新しい世紀は始まらない」(p298)という言葉がとても重く感じた。個人個人の問題と国と国の政治の問題では土俵が違うようで、それは切り離すことはできないこともあるのかもしれない。

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    投稿日:2022.09.30

  • Tomoki

    Tomoki

    このレビューはネタバレを含みます

    占領期の沖縄が舞台。主人公はアメリカ人、中国人弁護士、日本人ジャーナリストと沖縄の文化などについて話ながらパーティーを楽しんでいた。アメリカ人の子どもが一時的に失踪した事件が起きている間に、主人公の娘が暴行を受けていた。日本人の告訴が不利な状況で、一時は告訴を諦めるものの、失踪した男の子の事件については告訴がなされることを聞き、再び告訴をする方向に心が動く。
    普段は仲のいい集まりで、国際親善という感じだった。が、いざ事件が起きてみるとアメリカ人も中国人も冷たい態度をとり、国際親善が形だけのものであることが浮き彫りになる様子も印象的だった。

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    投稿日:2022.08.30

  • touxia

    touxia

    本土復帰前のアメリカ統治下の沖縄が舞台。役所勤めの「私」は、アメリカ人のミラー、中国人の弁護士の孫、そして本土出身の新聞記者の4人で中国語の研究会をやっていた。設定が沖縄らしい。
    アメリカ人のミラーは、諜報部員で情報収集のために中国語研究会をやっていたのだった。ミラーの招待で、米軍基地の中の自宅のパーティに招かれた「私」は、米軍基地に招かれることが自分のステイタスがあがったように感じていた。アメリカ人の子供が行方不明となり、私と孫で基地内をその子供を探す。基地内のアメリカ人は、そのことに協力してくれた。子供が見つかった。ここまでは、「私」という主人公。
    ところが、「お前」に主人公が変わる。私からお前への転換が巧みな物語となる。客観性を持たせる。お前は、家に帰ったら、家の離れを米兵ハリスに貸していたのだが、その米兵が、お前の高校生の娘がレイプされたことを知る。しかし、娘はハリスを崖から落とし、傷害罪で捕まっていた。私は、憤りを隠せなかった。そして、娘が家に帰ってきた。
    「お前」は三日三晩悩み苦しんだ後、告訴することを決意し、娘にそのことを告げる。しかし、娘は強く反対する。
    お前は、そのことをミラーに頼むが、ミラーは拒絶する。中国人の弁護士の孫に依頼するが、孫はやんわりと断る。とにかく、ハリスから事情を聞くことは了承を得た。ハリスは合意の上だと主張する。お前は、告訴をしないことを決める。
    『友好と親善』というのが、うわべだけだったことを知った。そして、孫と話をしていると、孫も戦争中に、妻が日本人にレイプされたことを語る。その痛みが、つながるが、どうしようもない壁にぶつかる。果たして、お前はどうするのか?
    沖縄の少女レイプ事件を思い出させるが、日本の侵略の歴史も重ね合わせることに、独特の物語として成り立つ。怖くて、恐ろしい物語であるが、沖縄にアメリカ軍基地が有る限り、その事件は起きるという事実が想定できる。いい作品だ。
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    投稿日:2022.03.18

  • aokikenichi

    aokikenichi

    芥川賞受賞作を読み進めているが、出来事の羅列だけにしか思えなかった。本作のどこに人間が描かれているのか全くわからず。
    同じく米軍などが出てくる『アメリカンスクール』などとは雲泥の差

    投稿日:2021.03.13

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