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三浦哲郎 / 講談社文庫 (1件のレビュー)
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setsusan3
このレビューはネタバレを含みます
古本屋で持っていない三浦哲郎の本を見つけると、思わずアッと声を出しそうになる。誰もこちらのことなど気に留めていないはずなのに、辺りをきょろきょろとし、それからもう一度その本を見つめて一つ息をつく。じんわりと押し寄せる幸せな気持ちをよく噛みしめる。 この随筆集はいつも懇意にしている古本屋さんの、まだ紐に括られて整理されていない本の山のなかに見つけた。「Mさーん」今までそんなことは一度もしたことはなかったのだけれど、店主さんの名前を呼んでいた。それで恐る恐るこの本を買えるかどうか訊いてみるとMさんは大丈夫だよ、と言ってくれた。 すでに図書館で三浦哲郎の随筆集は何冊も読んでいたため、改めて読んだ本を手に入れるような、そんな気持ちだった。けれども読みはじめると触れたことのない文章ばかりでおや、と思った。この随筆集に収録されている『せんべの耳』も『春の夜航』は、ところどころ知っている随筆もあるけれど、そのほとんどが実ははじめてだったのだ。 僕は三浦が家族を描く随筆が好きだ。小説だけをみると家族にまつわる悲劇、絆の脆さをどうしてもつよく感じるのだけど、随筆ではささやかな思い出が語られていることで彼らがあたたかみのある家族であったのもすこし分かってくる。小説のエピソードと似た話がいくつも出てき、小説のときとはまたちがった気持ちで読める。 この随筆集はどこか随想の『笹舟日記』に近いような気がする。三浦の大切なテーマが点々と各随筆にこめられているようにみえた。これだけ彼の小説や歴史を追ってきたからこそ、今読んで心に沁み入る文章だった。
投稿日:2022.08.05
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