【感想】肉体の悪魔

ラディゲ, 中条省平 / 光文社古典新訳文庫
(48件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
8
19
12
2
0

ブクログレビュー

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  • オモテ

    オモテ

    初めてフランスの恋愛小説を読み、ヨーロッパの小説に触れることができた感触があるが、小説の理解を深めるためには自分にもある程度の経験が必要だと思った。

    投稿日:2024.01.10

  • たんぽぽまる

    たんぽぽまる

    このレビューはネタバレを含みます

    10代で書かれたものとは思えなかった。
    傍からみるとどうかしていると思うくらい強烈な感情を抱いている主人公の様子が淡々と綴られている。コントロールできない強い感情が愛情とは矛盾した行動をとらせるが、それが「僕」の未熟さや利己的な執着心を感じさせた。
    最後、ジャックと子どもの行く末に希望を見つけたように思うが、寂しさが漂っていて印象的な終わりだった。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2023.09.02

  • mtsrs

    mtsrs

    ストーリーは非道徳的であることは間違い無い。愛情に狂わされていると言うより10代の自分の感情に自分自身が驚きながらも冷静に女性を弄ぶ主人公(作者の実体験でもあるところがエグい)に嫌悪感を抱く人もいるだろう。そんな小説がなぜ古典として読み継がれるのか。文章の切れ味。感情の描写の巧みさ。戦時下という特別な時間の普通ではない時だからこそ起きたことかもしれない出来事とその悪魔的な引力。全てが奇跡的に組み合わさって書かれた小説。続きを読む

    投稿日:2023.09.01

  • えつお

    えつお

    ラディゲはこの小説を18歳で書き、20歳で亡くなった。腸チフスだった。
    これは14歳で年上の女性と恋愛関係になり、不登校で放校処分となったラディゲ自身の経験を基に書かれたと言われている。


    15歳の少年が、19歳の婚約中(のちに結婚する)のマルトという可憐な女性に出会い、恋に落ちる話だ。
    一人称で語られるこの物語は、恋する男の喜びや夫に対する嫉妬、少年ならではの身勝手さや呆れるほどの無責任さなど、目まぐるしく変わる心の中を繊細に且つ鮮やかに描いている。それはとても正直な言葉で語られているので、とんでもない奴だと思いつつ、何故かわたしはすんなり受け入れてしまう。

    わたしは読んでいる間ずっと考えていた。
    『僕』の愛は本物なのだろうか。
    そしてまたマルトの愛も。
    マルトが戦地に赴いている夫を嫌いになったのは、近くに『僕』がいるからで、そして『僕』は夫のような大人ではなく後先を考えない子どもだから、一緒にいると楽しいと感じただけなのではないか。

    15歳なんてまだ子どもだ。これから経験することや学ぶことが沢山あるだろう。だから『僕』はマルトとのことは、いずれ終わってしまうものだとなんとなく思っているが、マルトが妊娠したことで状況は一変する。
    残酷なオチは秀逸だ。
    なるほどねと可笑しくなり、その後ろからすぐに怒りと哀しみが訪れた。


    わたしはこの本を図書館で借りて読んだんだけど、
    『不幸はなかなかそれと認めることができない。幸福だけが当然のことに思えるのだ。』
    という部分に鉛筆で鉤括弧が書かれていた。
    わたしの前にこの本を読んだ人は、この文章に何かを感じたんだろうと思った。だからわたしも、
    『よく似ていると思うものほど、本物とは異なっている。』というくだりに鉤括弧を書こうしたけれど、でも公共のものにそういうことをするのは正しくないことなので止めた。

    訳が読みやすくて、それもよかったと思う。
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    投稿日:2023.05.22

  • 禍腐渦狂紳士タッキー(商業BL感想係)

    禍腐渦狂紳士タッキー(商業BL感想係)

    人妻に恋をした少年の倒錯的かつ不安定になるほどの情熱に身を焦がしていく心理が見事で、愛しさだったり憎らしかったり、人間味溢れた情動に加えて不倫という禁忌的な関係にスリルさ・破滅しか待っていないであろう未来への不安・2人だけの特別で確かに幸せを感じられた時間など心にダイレクトアタックしてくるのがたまらない。

    また、エロくないようでエロさを感じさせる表現も素晴らしく、思春期の少年が経験するには早熟過ぎる肉欲やマルトが妊娠してしまってからの後戻りできない片道切符、夫の愛に背いた果ての結末に魂奪われました。
    続きを読む

    投稿日:2023.04.05

  • 深川夏眠

    深川夏眠

    三年半ほど前、
    高校生のときに古書店で古い文庫を買って積んだまま
    読まずに〈引っ越し処分〉していたことを思い出し、
    反省しつつ光文社古典新訳文庫を購入。
    早熟・夭折の天才と言われる
    レーモン・ラディゲの(短めの)長編小説。

    作者の分身と思しい語り手〈僕〉の思い出。
    分けても15歳からの激動の日々について。

    第一次世界大戦下のフランス。
    〈僕〉は四つ年上の画学生マルト・グランジエと出会い、
    興味を募らせていったが、
    彼女には婚約者ジャック・ラコンブがいた。
    しかし、彼女が予定通り結婚した後も
    互いに秋波を送り続け、
    ジャックが戦線に送られた不在のうちに、
    当然のように一線を超えてしまった――。

    20世紀不倫小説の古典、但し、
    当事者が十代なので相当に青臭い。
    結末は2パターンのいずれかであろうと
    予想しつつ読み進めた。

     1.ジャックが戦死し、
       マルトは晴れて〈僕〉と再婚。
     2.マルトと〈僕〉は
       白い目で見られる不倫に倦んで関係を清算。

    が、どちらでもなく、
    しかも、1・2よりもっとひどいエンディングだった。

    そもそも〈僕〉は周囲を見下す鼻持ちならないヤツで、
    マルトが彼のどこに惹かれたのか、よくわからない。
    ジャックに問題があったとすれば、
    マルトが絵を嗜むのを快く思っていないらしい点ぐらいだし。
    彼女も若かったので、スリルを求めていたということか。
    もう一つ考えられるのは、下品な穿鑿で恐縮だが、
    マルトにとって性的な相性が
    ジャックより〈僕〉の方がよかったから、かも……とかね。
    とはいえ、独白の中でしばしば愛を口にする〈僕〉は
    女を嫌いではないし、
    その気になればセックスも充分に出来ます、というだけで、
    本当に女性を――マルトを――愛しているとは受け取れず、
    これはホモソーシャル小説の変形ではないのか?
    と疑ってしまった。
    女性との性的接触を汚らわしいが避けて通れない道と考える
    高慢な男子が、一人の女の人生を踏み躙ってしまう、
    といった筋書きの。

    タイトル"Le Diable au corps"(カラダの悪魔) とは
    《胎児》ではないのかな。
    それが宿ったがためにマルトと〈僕〉は破局を迎えた、
    という。
    いや、不倫なんだから避妊しなさいよって話で。
    続きを読む

    投稿日:2022.12.15

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