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マン, 岸美光 / 光文社古典新訳文庫 (27件のレビュー)
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karatte
『ヴェニスに死す』の古称で有名。 というよりヴェネツィアを採用しているのはこの訳だけらしい。 『ノルウェイの森』は未読だが、笠井潔御大の『魔の山の殺人』刊行時に備えてサブテキストたる『魔の山』はいずれ…読まねばならず、手始めに選んだ初トーマス・マンがこれである。 マーラー「大地の歌」はかの現象学探偵も好んで口ずさむところであり、その意味ではもっと早く読んでおいても良かったか。 旅行先のヴェネツィアにて偶然目にした美少年が忘れられず、密かにコレラが蔓延する中、立ち去ることができない老作家の最期を描く中編小説。 追記:読書メーターの感想の中に「マンのショーペンハウアー/ニーチェからの影響がとても顕著で、これを読んでから『悲劇の誕生』を読めば中学生でも何言ってるか分かると思う」という記述を見つけ、ハッとなった。続きを読む
投稿日:2023.12.22
ニエラ
このレビューはネタバレを含みます
新訳シリーズということで読みやすさを期待して開いたが、翻訳文学を読み慣れた人でないと疲れるかも。映画を知っていれば楽しめると思う。映画の描写のように、何か常に劇的なことが起こる物語ではないので、夜、眠りにつく前に読むと、心地よい。 クリエイターや表現者、美を好む人の心に響く作品。美しい死にざまの一つだと思う。
投稿日:2023.12.05
oxford
平野啓一郎の「マチネの終わりに」に「≪ヴェニスに死す≫症候群」という言葉があり、それに触発されて(たぶん)再読。原文がドイツ語だからかもしれないが、観念的な耽美を湛えた表現の中であっけなく破滅(死)を…迎えるような印象。現実の破滅の方がはるかに恐ろしいぞ。一番驚いたのは、主人公が50歳にして晩年の老小説家と呼ばれていることかな。続きを読む
投稿日:2023.07.25
ぽるの
情景描写がとにかく綺麗。目に浮かぶ景色だけで癒される。好き。心情描写も綺麗で癒される。とにかく作品全体が癒し。
投稿日:2022.06.22
はる
「ベニスに死す」というタイトルの映画としても知られている作品。(原作) 初老の主人公・アッシェンバッハは、若いうちから才能を発揮した威厳ある作家であり、長年仕事一筋だった。 そんな彼は、旅先のヴェネツィアで美しい少年・タッジオに出会い、少しずつ変わっていく。 アッシェンバッハはタッジオを宿泊先のホテルで見かけるたびに、その美しさを褒めたたえていた。 それはだんだんエスカレートし、神を想うような言葉でタッジオを礼讃していく。 ただ目が合うだけの存在。 互いのことは知っているのに、わざとそうしているかのようにそっけなくし、言葉を交わさない。 そんな微妙な関係が続く中で、タッジオはアッシェンバッハに微笑んだ。 タッジオと話がしてみたい、でもできない、とヤキモキしていた中で放たれた微笑み。 それは、アッシェンバッハの心を焼くには充分すぎるほどの衝撃だった。 「タッジオを愛している」と自覚したアッシェンバッハは、立ち止まることができなかった。 常に自制を保ってきたアッシェンバッハにとって、少年に惹かれることは後ろめたいことであり、罪悪感のようなものを感じているようだった。 しかし抵抗してみても、彼はタッジオを愛することを止められず、しまいには後をつけ回すようになってしまう。 自分を見つめ、後を追ってくるアッシェンバッハに対して、タッジオは嫌がるそぶりを見せず、たまに思わせぶりに振り返ったり、視線を寄越したりする。 そんなタッジオの態度は、どのような意味を持っていたのだろうか。 世間から「正しい人間」だと思われているアッシェンバッハの内面が、荒れ狂い、酔いしれ溺れていく様は、とても苦しく切なかった。 自身の老いを悔やみ、肉体を若返らせたいとすら思い、着飾り化粧をするアッシェンバッハ。 そんな彼を、私は笑うことができない。 街に病気が蔓延し、命の危険すらある中で、アッシェンバッハはヴェネツィアを去ることができなかった。 タッジオのそばにいることを選び、彼を必死に追いかけ、それがきっかけでラストの場面に繋がっていくのは、あまりにも報われないと思った。 今思えば、彼らは言葉を交わしてすらいなかった。 たったの、ひと言も。 始めから最後まで、二人の距離は変わらなかった。 それがまた良いと思った。 膨らんでいく気持ちに体が追いつかず、想い人の前では臆病になってしまう。 そんなアッシェンバッハを表しているようだと思った。 アッシェンバッハの気持ちは、最初は花を綺麗だと愛でるような気持ちに似ていたように思う。 美しい花を、ずっと眺めていたいと思うような。 しかし「花」は「神」になり、美しく尊いものを崇めたてるような気持ちが生まれ、終いには「欲」が生まれたのだ。 たった一人の少年の美が、老いた作家の人生を変えてしまった。 これまで感じたことのないような興奮、ときめき、戸惑い、切なさが混ざり合っていたアッシェンバッハの心。 その心の動きを追っていくのは興味深く、とても好きな作品だった。
投稿日:2022.04.18
naomii
トーマス・マンの傑作。 20代の頃は、若者に恋する年寄りって、身の程知らずだし醜いよなぁと思っていたけど、30代になって、少し気持ちがわかる。 若い身体、美しさってそれだけですごく輝いていて(まじで光…輝いてる)、眩しくて、憧れてしまうし、自分の若い時代を振り返り、みすみす無駄にしたと悔やんでしまうものだ。 きっともっとしわくちゃになれば、更に思うのだろう。 最近、老いを受け入れる等の考えが急に増えているし、30代でも若いと言われ、公共交通機関を見渡すと、確かに40代以上ばかりで、さすが高齢化社会だと思うことも多いが、反面トルコに行って、若い人の多さに驚いた。 若い、というだけでエネルギーが溢れ出し、醜いものはそれなりに、それなりなものは美しく、美しいものはカリスマのように輝いてみえる。 何が言いたいか分からなくなってきたけど、恋焦がれて、最後にスペイン風邪かなんかで死んでしまう小説家は、幸せだったのかだけを判断したい。 最後に強烈な生を愛することができ、幸せだったと思いたい。続きを読む
投稿日:2021.12.12
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