【感想】クリエイティブ・クラスの世紀

リチャード・フロリダ, 井口典夫 / ダイヤモンド社
(17件のレビュー)

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  • あいちゅう

    あいちゅう

    都市経済学の、物議を醸しだした魅力的な一つの説として。
    ただし、実証はされていないのかな。
    また戻ってくるかも。

    投稿日:2020.04.03

  • nimaibachi

    nimaibachi

    クリエイティブ経済の台頭と、それをもたらすクリエイティブクラスについて論じている。

    クリエイティブ経済における経済成長をもたらす主要な資本はクリエイティブな人的資本そのものであり、グローバル社会においてはその移動は自由度を高めているため、いかに彼らをひきつけるかが重要となる。

    また、既存のクリエイティブな産業のみならず、それ以外の産業従事者の在り方にも課題がある。クリエイティブ産業が集積する都市においては、彼らの生活を支えるためサービス産業も集積するが、クリエイティブ層との賃金格差や彼ら自身の仕事が画一的で単純労働化しがちであることは問題もはらんでいる。
    それは、サービス産業従事者の低生産性は、社会全体でみた場合、人的資本の損失であり、機会の浪費であること。そして、彼らが経済成長の利益を享受できずに、格差が拡大していっている状況は、経済全体の失速をもたらすからである。

    効果的な処方箋は示されていないが、クリエイティブな人々は自らの個人的な動機でふるまっており、政治や社会が自らの動機に直結するインセンティブを提示できていないという現状が問題の一つである。

    新たな階級闘争となりかねない現在の格差の状況を解消し、社会全体が高い生産性を有するような新たなやりかたを求めていく必要がある。
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    投稿日:2016.09.25

  • katie1223

    katie1223

    クリエイティブクラスはアメリカから軸を写してきている。アイルランド、ベルギー、オーストラリア、オランダ、では全労働者の三分の一。ニュージーランド、エストニア、イギリス、カナダ、フィンランド。アイスランドでも四分の一。

    クリエイティブクラスは科学、エンジニア、建築、デザイン、芸術、音楽、エンターテインメント、法律、ビジネス、金融、ヘルスケアとその周辺領域にいる。クリエイティブ指数ではアメリカはスウェーデン、日本、フィンランドに次いで4位。k
    しかしクリエイティブな人たちが選んでいるのは国ではなく、都市。ケンブリッジか、シリコンバレーか、ストックホルムかバンクーバーか、シドニーかコペンハーゲンかを競っている。

    グローバルな才能の磁石:ロンドン、アムステルダム、トロント、バンクーバー、シドニー、メルボルン、世界最高の技術、起業、文化におけるクリエイティブな才能の獲得を積極的に競っている。
    グローバル・オースティン:バンガロール、テルアビブ、シンガポール、台北、北京、上海。外資の技術系企業を呼び寄せ、高等教育システムを強化し、研究開発に積極的に投資して、自身の文化、ライフスタイルの幅を広げている。

    すでにアメリカから優秀人材が流出し始めている。留学生を締め出し、ビザの取得を難しくしようとしている。すでに国際純粋物理学会はアメリカで学会開催することをやめた。アメリカは文化、科学、経済のクリエイティブな外国人の締め出しを始めた。そのような人々はヨーロッパ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドに移ろうとしている。安全面の懸念と科学技術の政治化という動向に注目すれば容易に理解できる。

    クリエイティブ経済を自家醸成出来ていない理由はアメリカの二極化。経済格差。

    人々は給与で転職するのではなく、「クリエイティビティ」を生かせる仕事をしたがる。給与がいいとか仕事が楽だからではなく、自分のアイデアが貢献できる場所を見つけたのだ。仕事をするのが楽しくなるような仕事。

    ハーバート・サイモン、流れ作業の工場とデスクワークは自動化され、その一方でマネジメント、イノベーション、デザインといった分野で新しい仕事が作り出されるだろう。

    クリエイティブワークー専門的思考、複雑なコミュニケーション。
    クリエイティブ資本:新しいアイデア、新しい技術、新しいビジネスモデル、新しい文化様式。学歴ではなく技能の測定。

    学校教育年数よりも識字率の方がよりクリエイティビティを正確に観測できる。つまり自立的なクリエイティビティを思考力が重要。(より本質的な価値基準、学校は何のためにあるのか、学ぶため、思考力を鍛えるため。自習の強みというものか。)

    教育システムの確立が国の繁栄に重要なのはもちろんのこと、子供たちや若者を机に向かわせた日数では将来その子がどのようになるかがわからないように、その集合体である社会の将来もわからない。本来は教室の内外での学習において、クリエイティブな問題解決の基礎と応用の両方を教えることが必要なのである。

    「人的資本の蓄積は先進国の長期的な経済繁栄に関わっている」
    すべての人がクリエイティブ。それは受け継いだり、社会カテゴリーに影響されるものではない。


    クリエイティブ経済は精神的につまらない仕事からの解放。経済発展のT。テクノロジー、タレント、トレランス。クリエイティブな時代にはとくにトレランス。集積の進んだ都市において生産性が高い。都市が人的資本を増加させる機能「ジェインジェイコブズ的な外部効果」(都市の役割を人的資本の集積と増大への貢献にあると考え、人的資本が多ければ多いほど都市の成長は速まり、その都市化がイノベーションと生産性を増加するカギになる、

    寛容性とは単に異質な人を受け入れることではない。開放的で包容力があり、最もクリエイティブな人が集まってくる場所は差異を受け入れて生産的に吸収していく。標準から外れたアイデアや情報に寛容であることは経済的に不可欠。移民、芸術家、ゲイ、人種間融和への寛容性と経済成長の相関。

    移民は概してアメリカ生まれの市民を補完するスキルを持っており、たとえ同じレベルでも問題解決の方法や発想、適応の仕方が異なるので互恵的な学習が起こりやすい。ハイテク産業とクリエイティブ産業によく起こっている。もう一つはアメリカ人には提供できない貴重なサービス。イタリア人スタイリスト、ロシア人バレエダンサー。それぞれが固有のスキルを持ち寄る。その結果時代が繁栄する。

    古典的なゼロサムゲームは協力に時間がかかり社会進歩が遅く、経済成長も進まない。原材料や所有は価値を失い相対的にアイデアが経済価値を生むようになる。知識には競争相手がなく、他人の使用を部分的にしか排除しない。(古典世界では知識にもまるで所有権があるかのように扱われてないか?)ポスト物質主義の社会資本に基づく経済では人々限界まで挑戦し、権威に従うのをよしとせず、自己表現や新しいアイデアに興味をもち、知識の公共財としての性質を利用する。

    ジェイコブズ:反映する都市と淀んで衰退する都市を分けるは「鎮静者」の存在。政治、企業、市民社会のリーダー、あえて邪魔したりする
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    投稿日:2016.08.02

  • たにちゅー

    たにちゅー

    Tue, 20 Oct 2009

    クリエイティブな人材の獲得競争が,国家間,都市間で起こっているという考え方.
    農林水産業->製造業->サービス業 と進んだ産業は次にクリエイティブ産業が台頭するという.
    リチャード・フロリダのいうクリエイティブ・クラスとは,そのようなクリエイティブ産業で活躍する人材のコトを指す.

    フロリダはクリエイティブ人材を引き寄せる都市の特性を
    技術(Technology) ・ 才能(Tallent) ・ 寛容さ (tolerance)
    の3つの T で表わす.

    寛容さについては,例えば文化的にゲイを受け入れるかとか,留学生を受け入れるか?といったあたりが 指標になっている.

    本書で彼らは国毎のクリエイティビティの指標
    グローバル・クリエイティビティ・インデックス(GCI)を開発し
    それにより各国を順位づけている.
    ちなみに首位は スウェーデン で 我らが日本は 2位である.

    ちなみにアメリカは4位.

    アメリカはこれまで大量の才能を外国から受け入れるコトで 成長してきたのは,確かだろう.
    あるいみで第二次大戦でヒトラーがユダヤ人を迫害したが故に,相当数の優秀なユダヤ人の天才学者がアメリカに流入したのは,有名な話だ.
    このいみでも寛容さは大切だ.

    アメリカの大学院は留学生でもっているという.
    その意味でも,アメリカは自国の教育機関としてよりもあるいみで「場」を提供しているようなきらいもある.

    ところで,Googleの創業者もAmazonの創業者も元をただせば,外国からの留学生,移民だ.
    そういういみで,その寛容さがアメリカの経済に大きなプラス効果を与えているのは間違い無い.

    しかし,9.11テロの後に政権が不寛容さに舵を切ったことに,警鐘をならす.
    世界は既にグローバルなクリエイティブクラスの争奪戦にはいっていると.


    さて,クリエイティブ,クリエイティブと,本書が叫ぶのだが,その要点はいくつかに分かれる.
    ひとつは,留学生や移民の受け入れだ.
    たしかに,英語圏ではこれは,やりやすいが,日本の場合,まっすぐ経済成長にプラスに持ち込めるのかは,わからない.
    つまり,契約社会と日本のような社会では,その受け入れ時に変わらなければならない文化・風習の変革コストがばかにならないからだ.
    文科省のグローバル30など,留学生うけいれの政策は目白押しだが,政策先行で実体とのギャップがラディカルにうまれると,司法改革やポスドク10000人計画のような,社会的なひずみをうむことにもなろう.

    もうひとつは,現場労働者のクリエイティビティの活動だ.
    ここでは,日本,トヨタなどの「カイゼン」がよいと指摘される.
    つまり,ひとりひとりのクリエイティビティを活かすことが,社会全体を押し上げ,さらに働く喜びもますのだ.

    もうひとつは,教育,人材育成だろう.
    外国から留学生や移民で獲得するばかりでは,結局将来的には沈没する.
    自国,自らの都市でより,人材を育てていくことが重要になる.
    この点については,日本国内のクリエイティブクラスの争奪戦で,ひとり勝ちを続ける東京 を思った.
    合計特殊出生率が非常に低い東京.
    人材を集めまくっているが,そのことが結局,日本全体を疲弊させるのではないかという危惧は常にされている.

    クリエイティビティという視点から社会・経済を見直す視点は,異論もあろうが,面白かったとおもう.

    元をただせば,元京都市副市長Y氏が京都を去るときに話していた内容に含まれていたので読んでみたのだが

    京都市はクリエイティブクラスを集めないいけない.みたいな.
    とくに,ジェーン・ジェイコブスをよく引き合いに出すY氏だっただけに,そこと「街の魅力」という点でつなげると,狙い,趣向は良く理解出来た.

    ただ,京都に「寛容さ」がどこまであるかは,微妙であるし,もっと気概のある人間の輪を広げていかねばなるまい.
    イナーシャルも大きい街ですから.
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    投稿日:2015.01.04

  • dadi

    dadi

    7年前の本だけれど、自信がクリエイティブクラスであると感じている人には少なくとも多いに刺激になるはず

    投稿日:2014.06.22

  • naonao

    naonao

    クリエイティビティと都市の魅力機能を分析している。都市には創造的人々をひきつける力があり、3T(技術、才能、寛容性)が重要であり、都市の存在そのものがクリエイティビティの源泉になっている。 
    この面いおいては、都市は繁栄し、多くの多様な人々を集めるべきなのだ。
    すこし難しめの内容だけれども、なぜか飽きずに読み進められる本。

    20世紀のアメリカ沿岸都市にはその3つがそろっていて世界経済けん引の先頭に立ってきた。 産業構造が変わりつつあり、9.11のテロをきっかけにアメリカはその寛容性を低下させていて、他国のクリエイティブな都市が台頭してきているのだという。

    東京もこの中ではまだその優位性を保っているともいえているが、寛容性/多様性の面ではかなり劣っているらしい。

    確かにそうと思う。 日本人の国民感情が手伝っている。寛容性/多様性は、島国日本にとって国民感情的に閉鎖的思考があると思うので、ここを改善すればまだ伸びる部分がおおいと思う。 しかしどうだろうか、移民がふえて東京やその周辺に上から下までの生活レベルをもつ移民の人々が増えてきたら、、自分は違和感を感じるだろう。
    すでにそこの間隔が日本の頭打ち思考なんだろうなと思う。

    時間がかかったけれど、飽きずに読めた。 経済的な発展をもたらすための都市構築論と感じた。 もはや1980年代の工業的な都市構築ではなく、クリエイティビティを集めて都市を構築してゆく時代。 1980代的な余韻や考え方の延長ではこれからの発展は望めない。 そのためには開放性をたかめ、多様性のある人々を呼び込んでゆく必要がある。 排除ではなく受け入れること。 日本の再生について政府の考え方が昭和の夢を引きずらないことを切に願う。 すでに1980からは30年以上が経過している。

    今、自分の故郷の街は駅前が閑散としてまるで廃墟のようだ。 1970, 80はたしかに栄えていた。 そこに戻そうと思ってもそれはノスタルジーに浸るだけで発展性はない。 過去を捨て去るような後ろめたさは感じるけれども、 過去を追い求めても自分に、地域に、都市に、経済に、国に未来はやってこないと思う。
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    投稿日:2013.05.25

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