【感想】新装版 ムーミン谷の十一月

トーベ・ヤンソン, 鈴木徹郎 / 講談社文庫
(36件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
9
12
8
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ブクログレビュー

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  • 慎也

    慎也

    子供にぜひ読ませたいとか大人こそ読むべきとか、そんなことを言う必要もなく、いつ読んでも楽しめる。

    お節介を焼いて回っても感謝されず、空回りしている自覚がありつつもやめられない。
    みんなに好かれるヘムレンになってみようと思ったり、みんなに嫌われる可哀想なヘムレンになってみようと苦心しても、自分はやっぱりいつもと同じヘムレンでしかないことが憂鬱で自己嫌悪。
    “なんだか自分は、朝から晩まであれこれ、ものの置き場所を変えたり、人にそれはどこに置く方がいいなんて言ってばかりいるように思えてきました。”
    そんなダメで迷惑なはずのヘムレンさんにどっぷり感情移入してしまうのは、ちょっと自分も疲れていたかな。

    ラストになって変わり映えしない自分自身と和解するヘムレンさんが、意外と好きになれる。
    やっぱりいつ読んでも心がほっとするよいお話。
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    投稿日:2024.03.06

  • だまし売りNo

    だまし売りNo

    トーベ・ヤンソン著、鈴木徹郎訳『ムーミン谷の十一月』(講談社、1980年)はムーミンシリーズの小説最終巻である。ムーミン一家は旅に出ており、他のキャラクター中心の物語である。

    ヘムレンはムーミン一家の家に行き、「警察のものだぞ。玄関をあけろ」と大声で怒鳴った(49頁)。からかうことを目的とするが、冗談にならない悪質な所業である。幸いなことにムーミン一家は不在であり、ヘムレンが雨に濡れただけでヘムレンの間抜けぶりが露呈したエピソードになる。

    ムーミントロール達は過去に冤罪で逮捕され、牢屋に勾留された。ろうや番は「おまえらは、じぶんのおかした罪を白状するまでは、ここにはいっておらねばならん」と言う(トーベ・ヤンソン著、下村隆一訳『ムーミン谷の夏まつり』講談社文庫、1979年、164頁)。冤罪被害者のムーミントロールにとって悪質な嫌がらせになる。

    ムーミンの世界では個人の名前と種族名が混在しており、ややこしい。例えばミムラは個人名としても使われるし、種族名としても使われる。ヘムレンも個人名と種族名がごっちゃになっている。警察官や牢屋番もヘムレンである。『ムーミン谷の十一月』のヘムレンが、そのヘムレンならば警察の権限悪用である。警察の権限を悪用した警察不祥事は現実世界でも起きている。

    その後、スナフキンとヘムレンが出合う。スナフキンは心の中で「こんなヘムレンさんなんかと、ムーミンたちの話はしたくないや」と心の中で思う(105頁)。権威を利用して悪質嫌がらせをした人物への正しい意識になる。
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    投稿日:2024.01.22

  • ピンクのお米

    ピンクのお米

    星の王子様とか、宮沢賢治の童話っぽくて、謎に怖くて、謎に暗く、森ににしかないような静けさや美しさの中で、孤独感や、人生観を表現する情景は、不気味でシュールでありながら、瞑想でもしているような不思議な感覚になり、何故か読後は落ち着く感じがした。どうにもならない闇という感覚は誰しもあって、なんとか消化しながら、周囲と揉み合いしながら自分自身で解決してくというような、それを強制するでもなく、問いかけるでもなく、気付かせようとするでもない、淡々と日常が描写され不思議な世界へ引き込まれる。続きを読む

    投稿日:2023.11.22

  • さよ

    さよ

    ムーミンバレー◯ークで書籍コーナーがあり、購入して再読。装丁がおしゃれな色で揃えたくなる。

    クセの強いキャラクター達が気まずい思いをしながらも少しずつわかり合い、自分を見つめ直していく様子、夏が過ぎて陰鬱ながらも美しい谷の自然の描写が緻密でとても良い。抜き書きしたくなるような台詞や言い回しも多い。
    本当によくできたシリーズだと改めて思った。

    某パーク、8月週末なのにがらがらだったけど、キャラクター達も本の紹介もグッズもとても良かったので、ぜひ行って欲しい。
    本家のコミックやヤンソンさんのムーミン以外の小説の存在を今回知ったので、そちらも読んでみたい。
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    投稿日:2023.08.30

  • enuna

    enuna

    コロナで寝込み、外出できなかった時に読みました。個人的に実家家族とのいさかいで心が疲れていたこともあり、この物語に心身ともに癒されました。ムーミンに出てくる登場人物って一癖も二癖もあるけどどこか憎めないし、自分と重なるところも沢山あって考えさせられる。フィリフィヨンカはまるで自分を見ているみたいで、ムーミンの世界でも私生きていけそう、なんて思ってみたり(笑)
    スクルッタおじさんはとっても気になる存在。全然似てないけど自分の父親のことを思って涙ぐみながら読んでしまったり…。
    ああ、これは大人のための物語だなと読んでいて思いました。
    ヤンソンさんの挿絵もすごく素敵。イラストはそんなに多くないけど、想像力が刺激されて頭の中に勝手にムーミン谷の情景が浮かんできます。
    まだ全部読んだわけじゃないのですが、ムーミン童話の中では一番好きな物語。
    読後はちょっぴり寂しさを感じつつ、なぜか心に小さな希望も灯っている、そんなお話でした。
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    投稿日:2023.04.08

  • 海と青硝子

    海と青硝子

    ムーミン一家が島で悪戦苦闘していたと同時に、ムーミン屋敷を訪れたキャラたち。最後に残ったトフトの目に、船の灯りが見えたラストが忘れられません。帰還した一家との感動の対面が、書かれてなくても目に浮かぶようです。続きを読む

    投稿日:2023.03.04

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